新たなESD対策材料がメーカー各社の3Dプリント導入を後押し

Electronics 3D Printing with ESD Safe Material

Formlabsは、 電子部品製造ラインにおける静電気リスクを低減し、歩留まり向上を実現できるよう開発された新材料、ESD Resinをリリースいたしました。ESD Resinは生産現場での使用向けに開発された静電気散逸性パーツ製作に適した、費用対効果の高いレジンです。 

ESD Resinとはどういった材料なのか、そして空調機メーカーHAVENが、いかにしてESD Resinを用いて生産規模を拡大し、ESDセーフな治具および固定具によってレーザーの不良発生を防止しているか、詳細を是非ご確認ください。

ESD-safe resin
Webinar

How 3D Printing with ESD Resin Streamlines Electronics Manufacturing

Hear from HAVEN Indoor Air Quality lead engineer Phil Tsao of how they used ESD Resin to reduce the cost and lead time of ESD-safe production fixtures by up to 90%.

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静電気放電とは?

静電気放電(ESD)は、2つの帯電した物体間で急激に電気が流れることにより生じます。複数の絶縁性コンポーネント間に摩擦が発生した時に静電気が蓄積され、そのコンポーネントが導体と接触すると、その導体に静電気が流れ込みます。これは、エレクトロニクスの業界においては特に危険なもので、回路基板等のESDに敏感な部品は、予期せぬ静電気放電によって損傷を受ける恐れがあります。筐体に触れている治具によって発生するほんの小さな摩擦であっても電子は蓄積され、結果として静電気放電を引き起こして電子部品をショートさせ、製品に深刻なダメージを与えてしまいます。そのためESD対策を要する部品に関わるプロセス全般にわたって細心の注意が必要となり、さもなくば生産歩留まり全体を低下させてしまいます。

ESD対策材料とは?

ESD対策材料は静電気を散逸させることで、電子部品のような静電気放電に敏感なコンポーネントを保護するために用いられます。ESD対策材料は、本当の意味での「導体」ではありませんが、電子はその表面を伝って流れることができ、静電気放電が生じた際にはそれを散逸させることができます。

接地したESD対策材料は電子の逃げ場を作り出し、電子がその表面を伝って接地点に流れ込むことで部品への損傷を防ぐことが可能です。更なるメリットとしては、接地したESD対策材料は帯電を防止するため、ほこりや粉末、発泡スチロール等の微粒子が付着することも防いでくれる点が挙げられます。多くの電子部品製造現場では、こうした粒子は蓄積し続け、最終的には電気システムや機械を故障させてしまいます。治工具および組立用ツールに用いられるESD対策材料は、静電気放電による過負荷と帯電の双方で故障リスクを最小化します。従来、メーカー各社は、金属を機械加工することでこうしたESD対策を行ってきましたが、これは今や、3Dプリントによって解決することができるのです。

電子部品製造における3Dプリントツール用の新材料、ESD Resin

多くのケースにおいて、3Dプリントは機械加工よりも安価で早い手段ではあるものの、3Dプリント用の高品質なESD対策材料となると、選択肢は非常に限られていました。しかもそれは、多くの中小メーカーにとっては現実的でない高価な部品であったり、肝心の3Dプリンタの造形品質が不足していたりと、実際の生産現場で導入できるほどの信頼性はありませんでした。 

ESD Resinを用いたFormlabs SLAプリンタは、幅広い業界で様々な用途やワークフローに不可欠なソリューションを新たに提供することができます。今日の機械製品のほぼ全てには電子部品が組み込まれており、その取扱いにはESD対策材料が必要です。

ESD Safe 3D Printing Resin

製造する部品を試作する場合、その試験と検証には、全コンポーネントが連動して機能することを確認する必要があり、当然、電子部品もスムースに動作する必要があります。これを外注して機械加工した場合、コストが高額で製作期間も長くなってしまいます。そのためメーカーは製品の試作段階から次のステップへ進むまでに多大な苦労を強いられてしまいます。FormlabsのESD Resinは、他のあらゆる3Dプリント用ESD対策材料よりも靭性が高いため、エンジニアの皆さまは機械的・電気的な故障リスクを負うことなく試作を進めることが可能です。

ESD Safe 3D Printing Material

A prototype powder-handling tube within the Fuse Sift, printed in ESD Resin. Its anti-static nature allows powder to flow freely instead of clinging inside the tube.

電気部品に関わる生産ラインでは、全ての接触点にESD対策材料が必要であるため、治具や固定具は一般的に機械加工された金属によって作られますが、これらはそもそも性質的には導体です。しかし今や、メーカーの皆さまはESD Resinで治具や固定具を製作することで、静電気を安全に散逸させ、電気部品を簡単に保護できるようになりました。ESD Resinの高い弾性と靭性は強度と耐久性が求められる実際の現場環境でも、ESD Resinを理想的なものとしています。

ESD Resin Formlabs

The ESD Resin sample part is a fixture to support a multimeter probe during use, reducing the likelihood of static charge buildup while allowing engineers to take readings hands-free.

電気部品は組立作業完了後にも様々な工程で、あるいは生産現場を離れるまで、安全に封入・保管される必要があります。保管用トレイはサイズが大きく、多くの場合カスタム化された形状をもち、機械加工するには多額のコストを要してしまいます。ESD Resinによる3Dプリントであれば、製品の仕様に合わせてカスタマイズした保管用トレイや筐体を手早く製作でき、空間や作業者が触れることによる静電気放電で電子部品を損傷することも防ぐことができます。

Electrostatic Discharge Safe Material 3D Printed Part

This component tray made from ESD Resin holds integrated circuit boards for safe storage and transportation in a manufacturing facility.

ESD Safe 3D Printing Resin Sample Part
Sample

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電子部品メーカーHAVENが、ESD対策部品のコストと製作期間を最大90%削減

Formlabsの新たなESD Resinは、あらゆるメーカー様がその規模に関わらず、高い費用対効果をもってESDセーフな治工具を製作でき、電子製品製造ラインの運用効率と生産性を向上するソリューションとなります。 

バンクーバーに本拠を置く屋内空調機器企業であるHAVENは、既に試作や設計で導入済みのSLAプリンタにて、同様の品質でESD対策材料が手ごろな価格で製作できるようになったことのメリットに即座に注目しました。

「製品設計とラピッドプロトタイピングにおける3Dプリントの有用性は、誰もが認識しています。当社は、製品の製造ライン構築においてもその価値を認識し始めています」

と語るのはHAVENのCTO、Vlad Lavrovsky氏です。

HAVENは屋内空調機器製品の生産ラインを構築する企業です。HAVENが手掛ける生産ラインは、空調モニタと屋内空調の完全なクローズドループ式ソリューションを提供する空調機から構成されています。Form 3とForm 3Lプリンタを使用して、HAVENの技術者たちは、何年もHAVEN製品の試作を行ってきていましたが、ESD治工具コンポーネント用の金属機械加工は外注に頼らざるを得ませんでした。

ESD compliant tooling components

「ESDの要件を満たすため、私たちは従来、まず3Dプリンタを使って試作を行い、次にCNCで機械加工を行っていました。ESDの制約がなければ、そのまま3Dプリントを行い、2週間ではなく2日で部品を製作出来ていたことでしょう」とHAVENのリードエンジニア、Phi Tsaoは語ります。 

ESD対策は、HAVENの生産ラインにとって特に重要です。僅かな静電気放電ですら、同社の不可欠なレーザーコンポーネントをダメにしてしまいます。HAVENは、数年前にかなりの数の初期生産装置に潜在的な故障が発生したことで、この重要性を痛感しました。この時、同社は最終的に故障の原因をはんだ付けステーションであることを突き止めています。数ボルトの静電気放電がレーザーを損傷していたのです。それ以来、ESD対策の実施要領は、同社における作業の中核となってきました。

「それは全員で作業から離れ、根本原因を探るというものでした。結果として、私たちはかつてないほど高いESD対策基準を構築せざるを得なかったのです。ESDに関連する問題となると、息つく暇もないほどの警戒を余儀なくされました」とLavrovsky氏は話します。 

ESD Resinを使用することで、ESD対策を高水準に保ったまま、HAVENは社内で3Dプリントのスピードを活用できるようになっています。ESD Resinのベータテストの依頼を受けた時、HAVENはそれまで外注していた金属機械加工のワークフローを内製での3Dプリントに切り替えた時にどうなるのかを目にすることになりました。

Prototyping with ESD safe materials

「過去にはESD対策のソリューションもあるにはあったのですが、とても高価で製作期間も長いものでした。当社の小さなアルミニウム製部品は約500ドルほどかかります。ESD Resinでそれを造形すると、翌日には10分の1以下のコストで手に入るのです」とTsaoは説明します。

プロセスコストリードタイム
アルミニウム金属加工500$2週間
ESD Resin40–50$1日

1本のワークフローの中で、単一の材料で試作、試験、製造までが可能になったことで、HAVENのプロセスはより迅速化されました。そしてこれは、ハードウェアのスタートアップ企業としては非常に重要なことであり、そのスピードは、事業規模拡大のチャンスでもあるのです。Lavrovsky氏は、従来のアルミニウム製固定具を使った生産ラインに加え、ESD Resinで3Dプリントした固定具を使用した新ラインの増設によって、現在生産規模の拡大を計画しています。 

「当社の目的は、製造ワークフローを完璧なものにすることです。それには不確実性を最小化する必要があります。考え得る全ての対策を講じたいと思います。ESD Resinは、更なるリスク低減のチャンスを与えてくれました」とLavrovsky氏は語ります。

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