
SLS(粉末焼結積層造形)方式の3Dプリント品は、その優れた機械特性とコスト効率の高い生産性から、航空宇宙や眼鏡デザインなど多岐にわたる業界で活用が拡大しています。SLS プリント品の外観や機械的特性をさらに向上させるため、3Dプリンタユーザーの多くは染色、コーティング、めっき、塗装などの後処理を行っています。
Fuse 1シリーズSLS 3Dプリンタを使ってNylon 12 Whiteパウダーで造形した部品を染色することで、魅力的なプロトタイプや幅広いカラー展開の本番生産用部品を容易に実現できます。
このガイドでは、SLS 3Dプリント品の染色プロセスを概説するとともに、その多彩なメリットについてご紹介します。染色工程の全体的なワークフローについては、技術資料をダウンロードしてご覧ください。

SLS 3Dプリント品の染色: 利点と作業手順
この技術資料では、SLS部品を染色する際の考慮事項、長所と短所、そして利用可能な手法について解説します。また、準備方法や染色後の仕上げオプションを含めたステップごとの手順もご紹介します。
SLS 3Dプリント品に染色が必要な理由
SLS 3Dプリント部品は、デザインから製造まであらゆる工程での普及が進んでいます。表面がわずかにざらついた独特の質感になることから、スムージングやコーティング、染色などの後処理技術もますます注目を集めています。
染色は低コストでSLSプリント品に色をつけられる手軽な方法で、機械的特性を損なわずに外観を向上させることが可能です。カラーパーツを少量だけ作りたい場合でも、パントンカラーコードにマッチした製品を大量に製作したい場合でも、あらゆるワークフローに対応する染色方法があります。
当社チームでは代表的な4種類の染色手法をテストし、その結果をレポートにまとめました。本ガイドで紹介するのは概要のみですが、テスト結果の詳細全文もぜひ技術資料をダウンロードしてご確認ください。

染色は、ブランドの美観に合わせたカスタムカラーが必要な機能試作や実製品用部品に最適。

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Formlabsの品質を直接手に取ってご確認ください。Fuse 1+ 30WにてNylon 12 Whiteパウダーで造形したサンプルパーツを無償でお届けいたします。
染色時の考慮事項
造形品を染色する前に、まずこれらの主要な点をご確認ください。
- 価格帯/予算
- 造形品のサイズ
- 形状
- 数量
- 色
- 使用環境
各染色方法にはそれぞれ長所と短所があるため、ニーズに合う最適な方法を選ぶことが大切です。代表的な4つの方法として、ポット式染色、超音波染色、高圧染色、そしてDyeMansion DM60のような装置を使った自動染色があります。以下の表を参考に、作業フローや予算に合った方法をお選びください。
評価方法 | サイズ | 数量 | 色 | 耐UV性 | コスト |
---|---|---|---|---|---|
ポット式染色 | ★★ | ★★ | ★★ | なし | $50以下 |
超音波染色 | ★★★ | ★★★ | ★★★ | なし | $100〜$1000 |
高圧染色 | ★★ | ★★ | ★★★★ | なし | $100〜$500 |
DyeMansion DM60 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | あり | $50,000〜 |
SLS 3Dプリント品の染色方法
ポット染色は高温対応の鍋と染料液だけで始められるため最も手軽ですが、ほかの方法より仕上がりの一貫性に欠け、作業にも手間がかかります。また、熱や攪拌で部品が破損するリスクもあります。
超音波染色は、染色の均一性や部品の品質保持という点でポット染色より優れた結果を得られます。この方法では、超音波洗浄機に適切な温度を設定し造形品を入れてタイマーをセットするだけなので、ポット染色より作業負担が軽減できます。超音波振動で染色液を攪拌するため、染色中の部品破損リスクが低減され、仕上がりも安定します。
高圧染色は、インスタントポットのような調理用圧力鍋を使って行う方法です。この手法はポット染色や超音波染色よりも高温になり、造形品を圧力鍋内の染色液に入れて密封すると、温度は最大で120℃まで上昇します。熱と圧力によって造形品にしっかりと色を浸透させられますが、高温による損傷リスクもあります。たとえば120℃という温度は、Formlabs TPU 90Aパウダーのビカット軟化点を超えています。
DyeMansion DM60のような産業用システムは、大量のパーツを扱う場合や、非常に安定した仕上がりが必要な場合にはコストパフォーマンスに優れています。これらの大型機は染色工程における手作業を大幅に削減し、さまざまな部品・色に対応できる設定も事前にプログラムされています。DM60のように「セットして放っておく」タイプのシステムなら、SLS 3Dプリントのユーザーは部品設計やプリントの最適化など、より重要な作業に時間を回せます。

SLS 3Dプリント品の染色
Fuse 1+ 30WなどのSLS 3Dプリンタユーザーは、コーティングや電解めっき、サンディングなどで造形品に後処理を施しています。このウェビナーでは、SLSナイロン部品の後処理工程の一つである染色について詳しく解説します。
色と材料の組み合わせ
ホワイトパーツの染色
最も幅広いカラーバリエーションを実現するには、Nylon 12 Whiteパウダーで作った造形品を染色するというのが最良のオプションです。パステルや鮮やかな色など、明るい色で染色を行う場合はNylon 12 Whiteパウダーの使用が推奨されます。

超音波染色を施したNylon 12 Whiteパウダー製3Dプリント部品。
グレーパーツを染色する
技術資料で解説したプロセスは、Nylon 12パウダーを使った造形品の染色にも成功しています。ただし、Nylon 12パウダーの造形品は色合いがダークグレーのため、染色可能なのは染料がパウダーより濃い色である場合のみに限られ、鮮やかさはやや抑えられます。

Nylon 12パウダーの造形品(ダークグレー)をより濃い色に染色。
造形品を黒色で染色
最終色を黒にしたい場合は、FormlabsのNylon 12パウダーとRit ProLine Blackの組み合わせを推奨します。この材料は下地が濃色なため、より一貫性のある黒色へ染色できます。
一方、Nylon 12 Whiteパウダーの造形品を黒色で染めることは可能ですが、推奨はしていません。下地が明るいと、最初から暗い色合いのNylon 12パウダーに比べて濃色の表現が難しくなります。
SLS 3Dプリント品の染色を始める

超音波染色などの手頃な方法があることから、SLSプリント品の外観を高めるうえで染色は容易で取り入れやすいアプローチ。
入手しやすいハードウェアと染料を用いてNylon 12 WhiteパウダーおよびNylon 12パウダーの造形品を染色することで、どんな色合いでも、コストパフォーマンスや効率性に優れた方法で最終的な部品に色をつけることができます。このプロセスは、従来のコーティングに代わる有力な選択肢であり、複雑な形状でも最小限の手間で効果的に着色できます。
カラーのSLSナイロン部品の活用をご検討中の場合は、Formlabsまでお気軽にお問い合わせください。Fuse製品やナイロン部品の染色について詳細をお知らせいたします。
SLS 3DプリントやSLS部品の染色についてさらに詳しくお知りになりたい方は、当社チームまでお問い合わせください。また、テスト結果の詳細やステップバイステップの手順については、技術資料をダウンロードしてご確認いただけます。