大容量3Dプリンタは、3Dプリント市場でも著しく成長している分野です。大容量3Dプリンタは予算的に手が届かないと考えている人もいるかもしれません。数年前まで、大容量3Dプリンタは1,200万円以上の投資が必要でしたが、現在はもっと手頃な価格になっています。
現在手に入るベンチトップサイズと呼ばれる大容量の3Dプリンタには、約70万~300万円程度の導入しやすい価格帯で3つの造形方式のものがあります。大型品のプリントや試作を外注する際に必要なコストを考えれば、こうした大容量3Dプリンタへの投資は数ヶ月で回収できるでしょう。
そういった背景から、大容量3Dプリンタは常に機種が増え続けています。では、どうすればその中から自分の用途に合った正しい3Dプリンタを選定することができるでしょうか?
本選定ガイドでは、あらゆる価格帯や用途に適した大容量3Dプリンタの選び方を解説します。
大容量3Dプリンタとは
大容量3Dプリントとは、デスクトップ3Dプリンタで一般的な造形サイズである、1辺あたり150〜200mmを超える、大きなサイズのプリントができる3Dプリンタを指します。
大容量3Dプリンタが得意とするのは、寸法のいずれか1辺が300mm程度、残り2辺が150〜300mm程度のプリントです。こうしたデスクトップサイズより若干大きな、ベンチトップと呼ばれるサイズの大容量3Dプリンタでは、消費者向けやヘルスケア製品、製造業など様々な分野で実寸大の試作品や治工具などを製作することができます。
それ以上の500〜1,000mm程度の、かなりの大型品に対応する3Dプリンタも販売されていますが、そういった機種は産業用3Dプリンタに限られ、価格も一気に高額となり、複雑さや設備要件も上がってしまいます。
大容量3Dプリンタの種類
低コストで導入可能な大容量3Dプリントの造形方式には、FDM(熱溶融積層)方式、SLA(光造形)方式、そしてSLS(粉末焼結積層造形)方式の3種があります。各方式を詳しく見てみましょう。
FDM(熱溶融積層)方式
FDM(熱溶解積層/Fused Deposition Modeling)またはFFF(熱溶解フィラメント/Fused Filament Fabrication)ともこの方式は、フィラメントと呼ばれる熱可塑性樹脂材料を加熱して溶かし、プリンタのノズルから造形エリアに押し出して積層することでプリントを行います。FDM方式は、模型製作を趣味とするユーザーに向けた3Dプリンタの需要の高まりと共に、一般消費者の間で最も広く活用されるようになった3Dプリント方式です。
中大容量FDMプリンタの最低価格は約60万円程度で、一般的な造形サイズは最大で300 x 250 x 300mmほどになります。さらに大型のプリンタになると価格は最低でも80万円以上で、高さ600mm程度の造形品を作れるようになります。
FDMを使用するメリット
FDMは、ABSやPLAといった標準的な熱可塑性樹脂材料とそれぞれのブレンド材料に対応しています。この技術は基本的なコンセプト実証(PoC)モデルや、通常であれば機械加工されるようなシンプルなパーツのプロトタイピングを素早く低コストで行いたい場合に適しています。
FDMのデメリット
FDM方式は平面解像度や精度がSLAやSLSに比べて最も低く、複雑な形状や微細なデザインのプリントには向いていません。FDM方式で造形したサイズの大きなパーツをより上質に仕上げようとすると、多大な労力と時間を費やして研磨作業や化学的な処理が必要になります。産業用のFDM 3Dプリンタでは、こうした課題を軽減するために水溶性のサポート材や様々な熱可塑性のエンジニアリングプラスチックが利用可能ですが、価格が大幅に上昇します。大型品をFDM方式でプリントする場合、SLAやSLSに比べてスピードが落ちる傾向もあります。
大容量3Dプリンタが有用になるケースとは
本資料では、Form 3LやForm 3BLプリンタ製品の詳細、そしてその他の大容量プリント方式との違いについてご説明します。
この無料レポートでは、Form 3Lを使った大容量3Dプリントの内製化と、外注やFDMプリンタによる生産を中心とした他の方法とを比較し、どのような違いがあるかを見ていきます。
SLA(光造形)方式
SLA方式3Dプリンタは、UVレーザーによる光重合という化学反応で液体レジンを硬化させることで造形します。SLAは、解像度、精度、利用可能な素材の汎用性がいずれも高いため、3Dプリントの専門業者の間で最も広く活用されている方式の一つです。
SLAはもともと、小型のデスクトッププリンタ、もしくは価格が3,000万円以上もする大型の産業用プリンタでしか利用できませんでした。しかし、Formlabs Form 3Lプリンタが登場したことで、産業品質のSLAが約160万円で実現できるようになりました。サイズも大容量の300 x 335 x 200mmです。
SLAを使用するメリット
SLA方式でプリントした造形物は、あらゆる3Dプリント方式の中で最も高精細かつ高精度となり、シャープなディテールと滑らかな表面仕上げが実現できますが、SLA方式の最大の利点はその汎用性にあります。標準・工学・産業用の熱可塑性樹脂に匹敵する様々な光学的・機械的・熱的な特性を備えた革新的なSLA用レジンが開発されています。
SLAは、金型、パターン、医療用模型や機能パーツなど、公差要件が厳しく、滑らかな表面が求められるディテールの凝った試作品の制作に適しています。また、荷重たわみ温度が238℃と最も高く、エンジニアリングや製造用途に最適な材料、並びに歯科・医療用途に最適な生体適合性材料も幅広く取り揃えています。Draftレジンを使用する場合、Form 3Lは業界最速水準であるFDMの最大10倍の速度で大型パーツを3Dプリントすることができます。
SLAのデメリット
SLAは使い道が非常に多様ですが、その分若干価格帯が高くなります。また、SLAレジンで造形する場合は、洗浄や二次硬化など、プリント後の後処理が必要になります。
Form 3Lで3Dプリントした大型パーツの例をご紹介します。
SLA方式の大容量3Dプリントの設計、造形、後処理の方法
このウェビナーでは 、Formlabsの3Dモデルマネージャー、Evan FisherがCADとPreFormを使って大型パーツの設計手順を説明し、後処理に最適なソリューションであるFormWash LとForm Cure Lをご紹介します。
SLS(粉末焼結積層造形)方式
SLS方式3Dプリンタは、高出力のレーザーで粉末状のポリマー粒子を焼結することで1層ごとに造形を行います。造形中は、レーザーの当たっていない未融合粉末が造形物を支えるため、サポート材を使う必要がありません。この点が、複雑な機械部品などの造形にSLSが向いている理由です。
機械的機能に優れた部品を、数十~100以上の単位で量産できるため、SLSは産業用途で最も広く活用されているアディティブマニュファクチャリング技術です。
SLAと同様、SLSも以前は3,000万円以上もする産業用プリンタでしか利用できませんでした。しかし、SLS方式プリンタであるFormlabs Fuse 1の登場により、産業品質のSLSを900万円以下で実現できるようになりました。造形サイズも大型の300 x 165 x 165 mmです。
SLSを使用するメリット
SLSは専用のサポート材が必要なく、内部構造、アンダーカット、薄壁や凹面など、複雑な形状を造形するのに適しています。SLS方式で3Dプリントしたパーツは、射出成形したパーツに匹敵するほどの高い強度などを持つなど、優れた機械的特性を有します。
SLSに最もよく使われる材料は、優れた機械的特性を有し人気の高い工学用熱可塑性材料ナイロン材です。ナイロンは軽量、高強度、高弾力性を特徴とし、衝撃、化学物質、熱、紫外線、水、土に対する耐性があります。
SLSは、パーツごとのコストの低さ、高い生産性、定評のある材料により、機能試作の製造法としてエンジニアから支持されています。また、限定生産や量産前のテスト生産を行う際に、射出生成に代わるコスト効率の高い方法になります。
SLSのデメリット
SLSは、3 つの方式の中でも最も導入コストが高い方式です。ナイロンは汎用性の高い材料ですが、SLSで使用可能な材料はFDMやSLAに比べて限定されてしまいます。また、プリントされた造形物の表面もやや粗く、なめらかに仕上げるにはブラスト処理が必要になります。
大容量FDM、SLA、SLSプリント方式の比較
大容量3Dプリントの各方式には互換性がありません。それぞれの方式で得意・不得意とするものがあり、用途によって向き不向きが変わります。
FDM(熱溶解積層)方式 | SLA(光造形)方式 | SLS(粉末焼結積層造形)方式 | |
---|---|---|---|
細部の表現 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
精度 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
表面品質 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
作業効率 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
複雑形状の造形 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
使いやすさ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
最大造形サイズ | 300 x 250 x 300 mm以上 | 300 x 335 x 200 mm | 300 x 165 x 165 mm |
価格帯 | Starting from $4,000 | Starting from $11,000 | Starting from $18,500 |
材料 | ABSやPLAなどの標準的な熱可塑性樹脂とそのブレンド材 | 幅広いレジン(光硬化性樹脂)スタンダード系、エンジニアリング系(ABS、PP、シリコンなどの相当材。高い強度、耐熱、剛性、伸び、弾力など様々な特性)、鋳造用、歯科・医療用(生体適合性) | 熱可塑性樹脂(ナイロン材などの高機能工業用材料) |
代表的な用途 | 基本的なPoC用モデルやラフな造形を行う初期段階での試作品製作に。 | 厳格な寸法公差や表面品質に対応した高精度高精細な試作品。金型、治工具、ロストワックスマスター、医療用モデルや機能部品に。 | 小ロットの量産、複雑形状や内部流路などをもつ機能部品の製造に。 |
デメリット | 精密さと精度の低さ。複雑なデザインや繊細な機能を備えたプリントには不向き。大容量3Dプリント方式の中で最も低速。 | プリント後の後処理が必要。 | 材料が限定的。表面品質向上にはブラスト処理や表面処理が必要。 |
3Dプリント方式の選定方法
ニーズに適した3Dプリント方式選びでお困りですか?このビデオガイドでは、FDM、SLA、SLS方式を比較しています。購入前の検討材料としてご参照ください。
大容量3Dプリント方式:外注 vs 内製
大容量3Dプリンタを導入する際、それなりの初期投資は必要となりますが、小型プリンタより早く初期投資を回収できることが多いです。
3Dプリントを必要とする案件がごく稀にしか発生しない場合は、サービスプロバイダに製造を外注することをお勧めします。サービスプロバイダの場合は通常、SLA、SLS、FDM、金属3Dプリンタなど、様々な3Dプリント方式が社内に備わっています。また、材料に関する様々なアドバイスや、デザインや高度な仕上げ処理についての付加価値の高いサービスも提供してくれます。
一方で、外注での3Dプリントの主な短所は、そのコストと製作期間です。3Dプリントの最大のメリットの一つは、従来の製造法と比べて遥かに早いスピードで製造できることです。それに対して、外注の場合はパーツが納品されるまでに一週間から数週間かかることもあります。
また、パーツの大容量3Dプリントを外注すると高額になる傾向があります。パーツの数とプリント容積にもよりますが、大容量3Dプリンタへの初期投資はわずか数か月で回収できる場合があります。
例えば、登山やスキー用具を製造するメーカーBlack Diamond社は、大容量SLAプリンタのForm 3Lを導入し、実寸大のプロトタイプを内製できるようになりました。
「それまで$425程度で外注していた実寸大プロトタイプの造形単価を$70程度に抑えられるようになりました。造形コストが大幅に削減できたことで、Form 3Lの購入費用はわずか 3 か月ほどで回収できました。」R&Dエンジニア Matt Tetzl氏
外注 | 内製 | |
---|---|---|
所要時間 | 7日 | 3日 |
コスト | 最大$425 | 70 |
削減可能なコストと時間を算出
Formlabsの3Dプリンタで造形した場合、コストと時間がどれだけ削減できるのか、インタラクティブなROIツールでご確認ください。
大容量3Dプリントのメリットを最大限に活かす
最新の大容量3Dプリンタは、大型のプロトタイプやパーツの製造をより早く手頃に実現できるものへと変えました。それにより、どんな企業でも3Dプリントを活用して製品開発や製造工程を改善できるようになったのです。
SLAおよびSLS方式の大容量3Dプリンタとして初めて手頃な価格帯を実現したForm 3LやFuse 1とともに、Formlabsは今後もプロ仕様の3Dプリントに変革を起こしていきます。事業への3Dプリント導入をご検討中の場合は、用途に適したFormlabs 3Dプリンタを今すぐご確認ください。