SLA光造形でピクセルサイズが精度・細部表現・表面品質に及ぼす影響

Form 4光造形3Dプリンタの解像度

3Dプリントの解像度は常に議論されていながら、誤解されがちな概念です。昨今の3Dプリント方式の多様化とメーカーの増加により、問題はさらに複雑化しています。さらに、LCDスクリーンを使って選択的に光をマスクし、光にさらされた特定の箇所だけを硬化させるMSLA(マスク式光造形)方式3Dプリンタが登場したことで、解像度論争に新たな要素が加わりました。MSLA光造形プリンタは、高品質パーツを短時間で造形できる点が好感され、急速に人気が高まっています。

LCDスクリーンの解像度は通常、長辺方向のピクセル数(画素数)で測定されます。これは、スマートフォンやテレビ、タブレットの普及で一般になじみのある指標です。この時、ピクセル数の重要性とピクセルサイズ(個々のピクセルの大きさ)の重要性を組み合わせ、ピクセルが小さいほど解像度が高いという言説が一般的になっています。

ピクセル数や個々のピクセルサイズに重点が置かれる一方で、3Dプリントユーザーにとって最も重要なのは、表面品質や寸法精度、表現可能な最小サイズなど、3Dプリントの具体的な成果です。ピクセルサイズはその一要素にすぎず、材料特性や光学設定、機械的一貫性など多数の要因が結果を左右します。

ここでは、Form 4(デスクトップMSLA光造形、ピクセルサイズ50µm、10インチ4Kスクリーン)、Form 3+(レーザー式SLA光造形、焦点サイズ85µm)、プリンタC(デスクトップMSLA光造形、ピクセルサイズ28µm、9インチ8Kスクリーン)、プリンタD(デスクトップMSLA光造形、ピクセルサイズ19 × 24µm、9インチ12Kスクリーン)で複数のパーツを造形・分析し、一般的な解像度指標が造形品の仕上がりに直接的な影響を及ぼさないことを示します。

Form 4のピクセルサイズは競合機より大きいものの、試験結果からは表面品質、寸法精度、表現可能な最小サイズのいずれも、よりピクセルサイズの小さいMSLA光造形3Dプリンタと同等またはそれ以上であることが示されました。さらにFormlabsでは最適なバランスを追求することで、高速造形、高い信頼性、コンポーネント寿命の大幅な向上など、ユーザーが重視するその他の指標をForm 4で最適化しました。

プリントの成果:3Dプリント部品で本当に重要なこと

ピクセルサイズも要素の一つに含まれるプリンタ自体の設計は、造形品の主要な3つの特性に影響を与えます。これらの特性(表面品質、表現可能な最小サイズ、寸法精度)は測定・標準化が可能ですが、多くの工程やコンポーネントが複雑に絡み合う要素のため、断定的に表すことが難しいのです。ピクセルサイズの大きさそのものよりも、そのピクセルが遮断・透過できる光の質や一貫性、均一性の方がはるかに重要です。

こういった特性は全て、プリンタ全体のシステム、光学部品、材料、プリント工程、造形設定など、ほぼすべての要素から多大な影響を受けます。単一の入力パラメータを単一の結果と直接結びつけることは、限界値として捉える場合を除いてほぼ不可能です。

例えば、ピクセルサイズや最小焦点サイズによって、水平面でのポジティブ形状の下限が決まります。つまり、ピクセルサイズや最小焦点サイズよりも小さなポジティブ形状は作れません。しかし実際には剥離力など複数の要因が絡み合うため、表現可能な最小サイズはこの加減を大きく上回り、100µmよりも遥かに大きくなることがほとんどです。

説明測定方法主要パラメータ
表面品質見た目上、または実際の表面の滑らかさ目視/定性評価、表面粗さ測定(Ra)積層ピッチ
レジンの光学特性
層間プロセスの一貫性
表現可能な最小サイズ表現可能な最小フィーチャーサイズ。 フィーチャーの種別に大きく左右されるキャリパ
CMM
3Dスキャナ
レジンの機械的特性
光学PSF(点拡がり関数)
寸法精度目標形状をどれだけ正確に再現できるかキャリパ
CMM
3Dスキャナ
ゲージピン
その他フィットテスト
温度
機械的再現性
光学的一貫性

解像度に関わる要素

光造形プリンタは、レーザー(レーザー式SLA光造形の場合)、デジタル・ライト・プロジェクタ(DLP)、ライトプロセッシングユニット(LCDスクリーンが主流)で、LEDなどの光源を選択的にマスキングします。

レーザー式SLA光造形プリンタは、XY平面でレーザーを精密制御可能で焦点サイズも小さく、一般的に解像度が非常に高くなります。とはいえこれらの特性は要素の一部にすぎず、実際に表現可能な最小サイズは他にも多くの要素の影響を受けるため、レーザーを使わない業務用MSLA光造形プリンタと同等の結果になります。さらに、レーザー式のSLA光造形はレイヤー全体をレーザーで走査する必要があるため、造形時間が長くなりがちです。

DLP方式3DプリントにおけるXY軸解像度は、プロジェクターが1層内で表現可能な最小フィーチャーであるピクセルサイズによって決まります。これは、プロジェクターの解像度(最も一般的なものはフルHDと呼ばれる1080p)と光学窓からの距離によって変わります。そのため、デスクトップサイズのDLP方式3Dプリンタのほとんどが、XY軸解像度が35~100ミクロン程度で固定されています。

DLP方式の3Dプリンタの解像度は、造形サイズが大きくなるにつれて低下します。これは、ピクセル数を大幅に増やしたプロジェクターが存在しないためです。そのため、大容量の造形をする場合はピクセル数は変えずに光源との距離を遠ざけねばならず、解像度と造形品質が低下します。

ピクセルサイズと点拡がり関数(PSF)

表面品質、フィーチャーサイズ、精度は、3Dプリンタ自体の設計と造形工程のすべての要素による影響を受けます。ピクセルサイズのような単一の要素は、現実的な状況では確認のできない理論的な下限値を定めます。例えば、ピクセルサイズやレーザー焦点サイズが80ミクロンとした場合、理論的にはこれが単一のポジティブ形状(シリンダー状のピンの直径など)の硬化時の下限値になります。しかし、造形中は剥離力によって造形品が引っ張られ失敗する可能性があるため、このピンの最小直径を設定する際は500ミクロン程度になることがほとんどです。

LCDで光をマスキングするMSLA光造形プリンタでは、液体レジンに投影される実際の画像は通常、元のピクセルよりもかなり大きく拡散した状態になります。この効果はPSF(点拡がり関数または点像分布関数)と呼ばれ、投影プロセスによって元の画像または理想化された画像がぼやけることを指します。そのためMSLA光造形プリンタでは、ピクセルサイズは液体レジンに照射される光パワーの分布や形状ほど重要にはなりません。

点拡がり関数

Form 4のPSF(50µmのピクセルで構成されたLCDに光が投影された状態)とForm 3+(焦点サイズ80µmのレーザー光)のPSFを比較すると、Form 4の光はピクセルの中央に最も高いエネルギーが集中し、凝縮された光が直接照射されていることがわかります。

Form 4とForm 3の点拡がり関数

Form 4のPSFとForm 3シリーズのPSFを比較すると、両機ともピクセルやレーザー焦点の中心に光が集中していることがわかる。これは直接的に高解像度につながる。

テスト結果と結論

表面品質

表面品質は重要です。部品の外観や手触りだけでなく、既存のアセンブリへの適合性や成形型としての機能にも影響します。表面品質は、見た目の滑らかさを目視で確認することも、表面粗さ測定(Ra)を使った測定も可能です。ピクセルやレーザー焦点サイズの他に表面品質に影響を与える要素としては、Z軸の積層ピッチ、レジンの光学的特性、層間(剥離、圧縮)プロセスの一貫性があります。

これらが表面品質に及ぼす影響は、肉眼ではほとんど見分けがつきません。曲面は滑らかでエッジはシャープ、デボス/エンボス加工のどちらも輪郭がはっきりしていることがわかります。エンボス加工の文字は細かな再現で読みやすく、表面に対して均一に盛り上がっています。

Form 4の解像度

プリンタA:Form 4(MSLA)

  • ピクセルサイズ50µm
Form 3の解像度

プリンタB:Form 3+

  • 焦点サイズ85μm
プリンタC解像度

プリンタC:MSLA

  • ピクセルサイズ28µm
  • 9インチ8Kスクリーン
プリンタD解像度

プリンタD:MSLA

  • ピクセルサイズ19 x 24µm
  • 9インチ12Kスクリーン

寸法精度

造形品がどの程度元のファイルの寸法と一致するかを示す寸法精度は、再現性と造形の成否を左右する重要な指標です。プリンタが想定どおりの形状を造形できなければ、部品は想定された使用環境で正しく機能しません。歯科模型や矯正モデルのように、スキャンデータ(患者様の解剖学的構造)の完全な再現が処置の成否を左右する用途では、寸法精度が特に重要になります。

精度はキャリパ、三次元測定機(CMM)、3Dスキャナ、ゲージピン、その他のフィットテストで測定します。寸法精度に影響する要素には、ピクセルやレーザー焦点サイズのほか、造形温度、機械的再現性、光学的一貫性などがあります。

スキャン結果が示すとおり、ピクセルや焦点サイズが小さいからといって必ずしも寸法精度が向上するわけではありません。光の照射サイズが「大きい」プリンタでも寸法精度がほぼ完璧な歯科モデルを作ることは可能で、Form 4はピクセルサイズがより小さなプリンタCよりも高精度であることがわかっています。

プリンタA:Form 4(MSLA)

  • ピクセルサイズ50µm

主要寸法測定理想からの絶対誤差(mm):長さ(0.72)、幅(0.22)、起伏箇所の幅(0.12)、起伏箇所の最小長さ(0.06)

Form 4の精度(インプラント)

理想値±50µm以内の表面割合:95.5%

プリンタB:Form 3+

  • レーザー焦点サイズ80µm

主要寸法測定理想からの絶対誤差(mm):長さ(0.44)、幅(0.42)、起伏箇所の幅(0.16)、起伏箇所の最小長さ(0.09)

Form 3の精度(インプラント)

理想値±50µm以内の表面割合:82.1%

プリンタC:MSLA

  • ピクセルサイズ28µm

  • 9インチ8Kスクリーン

プリンタCの精度(エンクロージャ)

主要寸法測定理想からの絶対誤差(mm):長さ(0.38)、幅(0.30)、起伏箇所の幅(0.07)、起伏箇所の最小長さ(-0.05)

プリンタCの精度(インプラント)

理想値±50µm以内の表面割合:53.9%

プリンタD:MSLA

  • ピクセルサイズ19 x 24µm

  • 9インチ12Kスクリーン

プリンタDの精度(エンクロージャ)

主要寸法測定理想からの絶対誤差(mm):長さ(+0.77)、幅(-0.37)、起伏箇所の幅(-0.371)、起伏箇所の最小長さ(-0.052)

プリンタDの精度(インプラント)

理想値±50µm以内の表面割合:87.2%

フィーチャーサイズ

性能指標としてのフィーチャーサイズは、表現可能な最小サイズ、つまり3Dプリンタが造形できる最小フィーチャーを意味します。このサイズは、フィーチャーがデボス、エンボス、ポジティブワイヤー、ネガティブホール/チャネルのいずれであるかによって変わります。これらのフィーチャーは合否テストやキャリパ、CMM、3Dスキャナーで測定できます。

前述のとおりピクセルサイズやレーザー焦点サイズは単一のポジティブ形状を簡単に測定できる指標に見えますが、実際には20µm、30µm、50µm、80µmといった単一ピクセル大のポジティブ形状を造形できるプリンタは存在しません。その反面、温度や機械的再現性、光学的一貫性などの要素が表現可能な最小サイズに影響します。
写真からわかるように、Form 4は最小サイズの点で優れた結果を示しています。ネガティブチャンネル5種を完全に造形できたプリンタはありませんでしたが、Form 4とプリンタDは5本中4本を鮮明に造形でき、Form 3+とプリンタCは5本中3本にとどまりました。

サポート材のない壁はどのプリンタでも難易度が高く、壁の直立度には差が出ました。最も厚い壁は各プリンタとも完璧に造形できましたが、Form 4はその後の4枚も比較的真っ直ぐに造形することができました。プリンタCとプリンタDでは壁が薄くなるにつれ完全に倒れてしまうものもありました。それぞれのプリンタで不得意とするところが異なりますが、ピクセル/焦点サイズの大きさとの相関性は見られませんでした。このことからも、表現可能な最小サイズは、プリント工程のメカニズムやレジン特性といった複数の要素が絡み合っていると考えることができます。

Form 4の解像度

プリンタA:Form 4(MSLA)

  • ピクセルサイズ50µm
Form 3の解像度

プリンタB:Form 3+

  • 焦点サイズ85μm
プリンタC解像度

プリンタC:MSLA

  • ピクセルサイズ28µm
  • 9インチ8Kスクリーン
プリンタD解像度

プリンタD:MSLA

  • ピクセルサイズ19 x 24µm
  • 9インチ12Kスクリーン

SLA光造形の解像度論争を整理する

メーカーはピクセルサイズだけを解像度の決定要因として喧伝しがちですが、実際には(そして現実世界での影響も)もっと複雑です。

解像度は、LCDを透過する時、またはレーザーやプロジェクタから放射される時の光のサイズや形状だけで決まるものではありません。その光のPSF、プリント工程、機械的一貫性、レジンの光学的特性などからも影響を受けます。解像度はそれだけが何かの指標になるのではなく、表面品質や表現可能な最小サイズ、寸法精度といった造形結果を考慮するときの一つの要素として捉えられるべき事項です。この情報と視点があれば、ユーザーは各ニーズに最適なプリンタを選定することができるでしょう。

FormlabsはForm 4のLPUを開発する際、ピクセルサイズ、造形速度、信頼性、コンポーネントの寿命など、様々なトレードオフを綿密に検討しました。LCDのピクセルサイズは造形の精細度を決める三大要素には直接影響しないため、ピクセルサイズが大きいことは品質の低下にはつながりません。その代わりに、パワーと造形速度に投資することにしたのです。

 

次世代のSLA光造形プリンタをご検討中の場合は、Form 4の詳細をご確認ください。Form 4のLFDテクノロジーが実現する表面品質、表現可能な最小サイズ、寸法精度を直接お手に取ってご確認いただくことも可能です。ご希望の場合には無料サンプルパーツをお申し込みください。