炭素繊維強化樹脂のような複合材料は非常に汎用性と効率性が高く、航空宇宙からヘルスケアまで幅広い市場にイノベーションをもたらしています。スチール、アルミニウム、木材、樹脂等の従来の材料よりも性能が優れ、高機能な軽量商品の製造が可能です。
このガイドでは、様々な炭素繊維レイアップ、ラミネート加工、および金型を用いた方法等、炭素繊維製パーツの製造方法の基礎について、また3Dプリントを用いてコストと時間を削減しながら炭素繊維金型を製作する方法について説明します。
3Dプリント製の成形型で炭素繊維製パーツを製作する
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複合材料 101
複合材料は2つ以上の成分の組み合わせたもので、個々の構成物質の特性とは異なる特性を有しています。強度、効率性、耐久性の向上等、主に技術的特性の向上が見られます。複合材料は強化 繊維または粒子でできており、母材 (プラスチック、金属、セラミック) によって結合しています。
繊維強化プラスチック (FRP) が市場を独占しており、様々な業界において新たな活用方法の発展に貢献しています。中でも、炭素繊維は広く使われている複合材で、アルミニウムよりも強度と剛性が3倍高いながらも軽量であることから、特に飛行機、レーシングカー、自転車の製造に用いられています。エポキシレジンと結合した強化炭素繊維により形成されます。
繊維は単一方向に織り計画的に並べることで、1方向への強度を作り出すことができます。クロス織り繊維は複数方向への強度を出すために使うことができる他、複合材料で成形したパーツに特徴的なキルティング模様を生み出します。両方を組み合わせたパーツの生産もよく見られます。入手可能な繊維の種類:
繊維ガラス | 炭素繊維 | アラミド繊維 (ケブラー) |
---|---|---|
最もよく使われている繊維 軽量、程良い伸張性と圧縮強度 低価格で使用が簡単 | 業界最高の強度と剛性 (重量比) (究極の伸張性、圧縮強度、曲げ強さ) 他の繊維と比較して高額 | 炭素繊維よりも高い耐衝撃性と耐摩耗性 低い圧縮強度 切断や加工に不向き |
レジンによってこれらの繊維が結合し、硬質な複合材料が作られます。数あるレジンの種類の中で、最も広く使われているレジン:
レジン | 利点 | 欠点 | 硬化 |
---|---|---|---|
エポキシ | 最高強度 最軽量 最長の保存期間 | 最も高価格 混合率と温度の変化に敏感 | 特定の硬化剤の使用が必要 (2パーツシステム) エポキシの種類により要加熱 |
ポリエステル | 使用が簡単 (高い人気) 紫外線抵抗性 低価格 | 低い強度と低い耐腐食性 | 触媒 (MEKP)で硬化 |
ビニールエステル | エポキシの性能とポリエステルの価格の組み合わせ 最も高い耐腐食、耐温度、伸び率 | エポキシよりも低強度、ポリエステルよりも高コスト 短い保存期間 | Cures with a catalyst (MEKP) |
炭素繊維製パーツの2つの製造法
炭素繊維製パーツ等、繊維強化プラスチックの製造は一度限りまたはバッチ生産に使用され、熟練の腕と多くの人手を要します。サイクル時間は1時間から150時間で、パーツのサイズと複雑さによって決まります。通常、FRP造形は切れ目のないまっすぐな繊維が母材に加わり独自の堆積を造り、一層ずつ重なって最終パーツとなります。
複合材の特性は積層過程のみでなく材料によっても誘発されます。繊維を取り込む方法がパーツの性能に大きく影響します。熱硬化性レジンは、工具や金型の補強材と共に造形され、硬化によって丈夫な造形品となります。積層法には様々な技術があり、大きく3種類に分けることができます:
1. 湿式成形
湿式レイアップでは、繊維がを切って金型に予め入れて、その後レジンをブラシ、ローラー、スプレーガンで含浸します。この方法で高品質パーツを製造するには多くのスキルを要しますが、DIY炭素繊維製パーツ造りを始めるための条件は少なく、ワークフローも低コストです。炭素繊維部品の製造が初めてで、設備を整えていないならば、ハンドレイアップ積層法をおすすめします。
湿式炭素繊維レイアップ法の過程を動画で見ることができます。
2.プリプレグ積層
プリプレグ積層では、レジンがあらかじめ繊維に含侵されています。予め含侵されたシートは、硬化を抑制するために低温保存します。堆積はその後、熱や加圧滅菌器での圧力を用いて硬化し、金型になります。レジンの量は調整できる一方で、通常高性能な用途に使われる非常に高額な技術であり、非常に正確かつ繰り返し可能なプロセスです。
3. レジントランスファーモールド (RTM)
RTMモールドでは、乾燥繊維を2パーツ用の金型に入れます。 金型を閉じて固定した後、高圧にてレジンを空洞部に浸透させます。通常自動化され大量製造に使われます。
Low-Volume Rapid Thermoforming With 3D Printed Molds
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3Dプリント製金型で炭素繊維製パーツを製作する
金型の品質が最終製品用パーツの品質に直接影響するため、FRP製造にとって成形型の製造は非常に重要な側面です。ほとんどの金型はワックス、フォーム、木材、プラスチック、金属を用いてCNC加工または手作りされています。手作業による技術は非常に多くの人手が必要で、CNC機械加工は、特に込み入った形状の場合、複雑で時間のかかるワークフローが採用され、外部委託を利用すると長いリード時間と高コストがかかります。どちらの方法にも熟練した腕を持つ人材が必要で、反復造形によるデザイン調整や金型の調整への柔軟性もあまりありません。
アディティブマニュファクチャリングは、金型やパターンを低コストで迅速に製造し、炭素繊維製パーツを成形するためのソリューションとなります。製造工程における樹脂金型の使用は増え続けています。金属製金型を内製でプリントした樹脂製パーツに置き換えることはパワフルで、コスト効率の良さは生産時間を短縮しデザインの柔軟性を高めます。エンジニアたちは既に治具や固定具の 製造にポリマーレジンで3Dプリントしたパーツを採用しておりフィラメントワインディングや自動化された繊維配置等の方法をサポートしています。同様に、ショートラン用にプリントした型は射出成形、熱成形、またシートメタル成形での、少量バッチ生産に使われています。
内製でのデスクトップ型3Dプリントに必要な器具は少なく、ワークフローの複雑さも期限されます。Form 3+ のようなプロ仕様のデスクトップ型プリンタは、手頃な価格で、導入しやすく、スピーディーに需要に対応するための製造が可能になります。Form 3Lのような大型3Dプリンタを使うと、大型の金型製造も可能になります。
SLA方式3Dプリント技術によって、非常に滑らかな表面に仕上げることが可能です。複雑な形状を高精度に造形することもできます。加えて、Formlabsのレジンライブラリは、型やパターンの製造に適した機械特性と熱特性を有するエンジニアリング材料を幅広く取り揃えています。
炭素繊維製パーツの製造用に3Dプリントした金型を使うことで、コストとリード時間を削減できます。
小規模生産には、エンジニアたちは低コストで、また数時間内に、金型を直にプリントでき、手動による彫刻、CNC加工用器具、CAMソフトウェア、機械の設定、工作物保持、ツーリング、チップの排出の必要がありません。金型製造に必要な人員とリード時間が大幅に削減でき、素早いデザイン調整やパーツのカスタマイゼーションが可能になります。また、従来の方法では製造が難しかった細かいディテールのある複雑な金型形状を再現できます。
TU Berlin (FaSTTUBe) のFormula Studentチームはレーシングカー用に数多くの炭素繊維製パーツを製造しました。チームのエンジニアたちは、Formlabs Tough 1500レジンで直接プリントした金型に手動でラミネート加工しました。このレジンの引張弾性率は1.5 GPa、破断伸びは51%です。レイアップ成形を行う上で十分な強度と支持力を備えているだけでなく、炭素繊維の硬化後に型から部品を簡単に取り外せるだけの十分な柔軟性もあります。
この技術は徹底した硬化条件とは関連がありませんが、他のラミネート加工には高い圧力と温度が関わっていることが多々あります。DeltaWing Manufacturingという企業ではHigh Tempレジンを使って、プリプレグ工程によってエアフロー用部品を形成しています。High Tempレジンは、荷重たわみ温度 (HDT)が238°C @ 0.45 MPaで、加圧滅菌器の熱と圧力に耐えることができます。DeltaWing Manufacturingは直に金型をプリントし、10種類のカスタマイズした一連の部品を製造しています。
直接3Dプリントした樹脂製金型は、ショートラン生産を最適化するのに優れたツールです。しかし、それらの金型の耐用期間は従来の金型よりも短いため、大量の生産には適していません。
DeltaWing Manufacturingは生産量を増やすために、High Tempレジンを使って金型パターンをプリントし、それらをレジンで鋳造しました。3Dプリントした金型には不向きな集中的硬化条件を有するラミネートプロセスのパワフルな代用法として、パターンのプリントもあります。製造業者は、要望に応じてカスタムパターンをプリントでき、彼らの金型製造技術であるパターン製造からワンステップ取り除くことができます。
ラピッドツーリングガイド
本ホワイトペーパーでは、射出成形や熱成形、鋳造等の従来型の製造方法をラピッドツーリングと組み合わせる方法について解説します。
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炭素繊維製造を開始する
繊維強化プラスチック製造は、楽しいものですが、複雑で多くの人手を要するプロセスです。3Dプリントした金型やパターンを使って 炭素繊維製パーツを造ることで、ビジネスのワークフローの複雑性を軽減し、柔軟性とデザインの可能性を広げ、コストとリードタイムを削減します。
本ホワイトペーパーは、TU BerlinとDeltaWing Manufacturingのケーススタディを取り上げ、金型やパターンを素早くプリントし、複合材料を用いた製造に3Dプリントを活用するための3つのワークフローをご紹介します。