ヘルスケアや航空宇宙、エンジニアリング、製造、エンターテインメントまで、ほとんどすべての業界の関連部門が3Dプリントへの投資を増やし続けている昨今、この3Dプリントテクノロジーが日々の生活に占める部分は、これまでにないほどに大きくなってきています。3Dプリントの重要性を認識している教育現場の多くが、アディティブマニュファクチャリングを授業に取り入れていますが、3Dプリントを十分に活用するためには、3Dプリントが教育にもたらす数多くのメリットをよく理解しておく必要があります。
このガイドでは、生徒の積極性や生徒間の協力度合いの向上、就職に有利な人材の育成、担当領域を越えた広い視野での思考パターンの獲得、創造性の強化など、教育における3Dプリントのメリットを紹介し、さらに現在販売されている3Dプリンタとその選定方法についても解説します。
教育現場に3Dプリントを導入するメリット
体験・実習型の学習で、生徒の意欲を向上
幼稚園から高校、さらに大学の専門課程にいたるまで、3Dプリントは、教育者が学生の学習プロセスへの積極的な参加を促すための手段となっています。さまざまな学習スタイルや多様な教授方法、それらの効果について調査した海外の研究によると、今も多くの教育機関が教科書を丸暗記させる方法で授業を進めているとされています。3Dプリントで製作した、生徒にも扱いやすい教材に実際に手で触れさせたり、生徒自身にツールを設計させることは、生徒らの学習意欲を高めるというポジティブな効果をもたらします。
3Dプリントを使用した実習型の授業の効果については、特に高校生以下の生徒の間で授業への意欲や参加度合いの改善が報告されています。Formlabsはマサチューセッツ州ドーチェスターの公立工業高校であるTech Boston Academyと共同で、この理論を実践してみることにしました。13週間にわたり、Formlabsの社員がプロジェクト形式で授業を実施。最後に生徒自身が成形型を設計、モデリング、3Dプリントまでを自ら行う「ハッカソン」でこの試みを締めくくりました。この間、生徒たちが自ら問題を解決し、CADのスキルを活用してソリューションを策定し、Formlabsの光造形3Dプリンタを活用して自らのアイデアを形にすることができました。生徒の1人は、一番面白かったのは「自分が頭の中で考えたことを、形にして、実物を手にできたこと」だと感想を話してくれました。
このように対面で実習型の授業を行うことは、若者の能力開発にとって大きな価値があります。しかし今日の教育環境では、対面指導が可能ではない場合もあります。3Dプリントを活用することで、一人ひとりの生徒が実習用の教材に直接触れられるようになり、教える側から見ても、必要に応じて成形型を交換したり予備をプリントしたりと、便利に利用することが可能です。「私の授業は、ほとんどが実習型です。加工機、工具、レーザー切断機などを使う必要があります。今回のパンデミックで、実際に物理的にモデリングを行ったり実物に触れたりできなくなるなど、様々な犠牲を払いました」と、ケンタッキー大学で建築を教えるMichael Silver教授は語っています。Silver教授は、以前に大学研究室でFormlabsの工業品質3Dプリンタを使用した経験から、自宅にForm 2を設置。学生に課題としてSTLファイル形式で提出してもらったものを自宅でプリントし、その造形品を元に生徒とディスカッションをし、この授業の最終的な評価を行うという方法を採ったと言います。「この方法で、コロナの隔離期間中も学生は実物に触れながら造形実習を継続できました。 3Dプリントのおかげで、たとえば療養しながらでも、Zoomを経由したリモート授業の形でやりとりをし、全員が同じように試作品の製作を進めることができました」とSilver教授は言います。
どこの国でも、歯学部の授業料は高額です。学生が学ばなければならない歯科専用の機器が高額であることが、歯学部が高コストである理由の一つです。トルコのCanakkale Onsekiz Mart大学歯学部のドクター、Gülşah Uslu氏は、コスト低減のため、また、学生間で授業用の機器を共有するのではなく学生一人ひとりに配布する手段として、3Dプリンタの使用を開始しました。
一般的に歯学部の学生は、歯科クリニックで実際に指導を受けながら患者の治療にあたる前に、対面での研修プログラムを受講します。この研修は、歯科用の実習模型か抜歯された歯を使用しますが、いずれも高価であり気軽に購入することはできません。Uslu氏は3Dプリントに着目し、デジタル教材ではなく実物を使って、すべての学生が滞りなく個人用の模型を使って実習を進められるよう、解剖学的に正確な13,000個を超える人工歯の実習用模型を製作しました。ドクターが高水準の授業を継続できたことで、学生も各自の実習用模型を使用した研修に集中し、高水準の知識習得や授業への積極的参加が叶いました。
未来の仕事に対応できる専門技術者を育成
モリソン工科大学のプログラムは体験・実習型の授業を理念とし、地元の業界を代表する企業と連携した実践的で体験を重視したカリキュラムを提供しています。モリソン工科大学の学長、Chris Scott氏は、3Dプリントは標準的な生産工程の時間を短縮する手段であり、3Dプリントの手順を教室で学ぶ学生と、学生の将来の就職先となる企業の、両方にメリットをもたらすものであると考えています。「[3Dプリントのおかげで、]実物をもっとよく観察し、どこに問題が潜んでいるのかを特定したり、これは製品としてうまく機能するか、消費者に気に入ってもらえるか、といったことを考えられるようになります。製品の発売までの時間を短縮し積極的に販売を進める手段を研究することがもう一つの目標ですが、ここでアディティブマニュファクチャリングが生きてきます。設計サイクルを短縮できるのが3Dプリントの特徴です」とScott氏は語っています。
Scott氏が指摘するように、画面に表示される情報を見るだけでなく、3Dプリントで製作した実物を用いた授業を受けることで、学生は、目の前の対象の中にある問題を特定する能力を、より短時間で身につけることが可能となります。モリソン工科大学が3Dプリントを授業に取り入れてから数年が経過していますが、この3Dプリントの採用は、習得時間の短縮が実現した学生側のみに限らず、彼ら学生を製造業界での就業に導いてきたWahl Clippers, John Deere、Caterpillarといった地元の大手企業の側にも、即戦力が得られるというメリットを提供しています。
モリソン工科大学と地元大手企業との連携関係では、学生は企業から指導を受け、また大学からインターンとして派遣されます。このようないわゆる「タウン&ガウン」による大学と一般企業との交流関係は、就職のための推薦を得たい学生や、職場経験や現実的な問題解決スキルを積みたい学生にとって、きわめて大きな価値のある体験を得る場となります。メーカーが3Dプリンタによる生産を拡大し関連スキルを持つ人材が求められている今、3Dプリントは、実体験という文脈においてこれまでにないほどに重要な役割を果たすようになってきています。
3Dプリントには、経験が浅くとも直接操作に関わることが可能なため、インターンや新入社員の立場でも職場に貢献している実感が得やすいという側面があります。従来の生産方式は、高価な設備と体系的なワークフローを基にした仕組みで、学生らは決まったワークフローに従うか雑用でしのぐしかありませんでした。3Dプリントがあれば、学生は自身のCADスキルを使って、自分の仕事として、製品アイデアを設計にしたりパーツを修理したりといった、既存の社員では間に合わない作業や知識不足で対応できない作業を担うことが可能です。学生は価値ある経験とスキルが得られ、企業の側はコストの負担なしで新たな視点や実用的なソリューションを得られます。
このプリンタからメリットを得られるのは大手企業だけではありません。ペンシルバニア州立大学のInnovation Hubでは、地元のスタートアップ企業や中小メーカーと提携して、3Dプリントによる実製品用部品の小量生産を行っています。あるプロジェクトでは、自社では小量生産用装置の購入が難しい地元の企業経営者向けに、学生が小型ウィジェットを造形しています。このプロジェクトで学生は、実際の予算の問題を考慮に入れながら、射出成形の代わりに直接3Dプリントしたパーツを使うというソリューションを提案することができました。Innovation Hubのディレクター、Ryan Mandell氏は、「地元企業の経営者から20個のレジンパーツを依頼され、Formlabsの多くの材料の中から最も適した材料を選び出し、レジン製のウィジェット20個を大容量のSLA光造形プリンタ Form 3Lの1回のビルドで製作可能と判断しました。射出成形の受託会社には、20個は少なすぎるということで依頼を断られていましたから、今回のプロジェクトは良いユースケースになったと思います」と語っています。Innovation Hubの学生は、地元企業相手に、本物のコンサルティングとマニュファクチャリングサービスを提供することで、地元への貢献と履歴書に書ける実務経験という2つの収穫が得られたのです。
ヤバパイ・カレッジ、航空宇宙科学学科、3Dプリント&マニュファクチャリングディレクターのMatthew Mintzmyer氏は、すべての学生に、各業界での職務経験を積ませます。近年の卒業生の就職先は、歯科医療、TV番組『マンダロリアン』の美術担当、建築、その他多岐にわたります。「膨大な数の用途があります。3Dプリントビジネスについて学んでいなければ、後れをとってしまいます。3Dプリントの授業ではクリティカルシンキング、数学、創造性。その他多くのことを学びます。プリンタ自体も安価で何十万ドルもかかるものではありません」とMintzmyer氏は語っています。
ヤバパイ・カレッジが進める3Dプリンタの授業は、学生にとって有利な経験となるだけでなく業界におけるビジネス機会を拡張するものでもあります。コンクリート材の3Dプリントを行っている建築会社、COBODの新人の研修先は、ヤバパイ・カレッジです。新入社員はこのカレッジで、大型の産業用コンクリート向け3Dプリンタの保守、操作、保全の手順を学びます。ヤバパイ・カレッジがここまでビジネスを展開してこられたのは、Mintzmyer氏の初期投資と3Dプリントテクノロジーのおかげでしょう。Mintzmyer氏はFormlabsのSLA光造形およびSLS方式の3Dプリンタをカレッジに設置し、試作品、治具、および実製品用部品と、その他さまざまな修理部品の製作を行っています。ヤバパイの学生は、新興業界でより良いキャリアを築くために必要な事柄を肌で実感しながら、COBODのエンジニアと一緒に研修プログラムに参加します。
組織横断的な協働
最近、組織や部門横断的な横の連携の強化が、これまでになく進んでいます。デジタル化の進行により、従来は分散していたアイデア出しや生産といった製品ライフサイクルの各要素間で重なり合う部分が広がってきています。3Dプリントも一つの大きな要因です。3Dプリントは製品ライフサイクルの各段階に要する時間を短縮し、各段階の間の垣根を曖昧にしながら、製品ライフサイクル全体の進化を促す役割を果たしています。このような一企業内の部門間の協働は、教育施設に設けられたメーカースペースと呼ばれる創作工房のような場やファブラボと呼ばれるデジタル工房にも顕著に見られます。
ドレクセル大学のメディアアーツ&デザイン学部では、アニメやファッションからバーチャルリアティの分野の専門性を高めたい学生向けのプログラムを提供していますが、その中心となるHybrid Making Labは、さまざまなタイプのプロジェクトに対応しています。Hybrid Making Labのディレクター、Erik Sundquist氏の話によると、「学生は、建築モデル、ファッションデザイン、アクセサリー、衣類用の小物の製作まで、どのような用途でもこのラボを使うことが可能で、完全3Dプリントで関節が自在に動く衣類の造形に関心を持っている学生もいます」とのことです。
ドレクセル大学、Hybrid Making Labの4年生の卒業制作(左)と、彫刻の授業で製作された3Dスキャンとプリントによる魚の骨(右)(写真提供:ドレクセル大学Hybrid Making Lab)
Sundquist氏は学生のために実習用スペースを用意し、学生自らにこの場所の運営を任せ、異なるプロジェクトに関わっている学生同士で互いに教え合うことを彼らに促しています。「この方が民主的ですし、互いの専門分野の垣根を越えて学び合うことが可能になります」とSundquist氏は語ります。ファッション専攻の学生がエンジニアリング専攻の学生にヘルプを求める様子や、プロダクトデザイン専攻の学生が自在関節について尋ねたりする様子が見られるということです。学科の中心に置かれたこのラボは、学生にとって協働やアイデアの共有、専門知識の交換ができる理想的な場所となっており、3Dプリントがその瞬間瞬間のブレインストーミングを促してくれています。ファッション専攻の学生が金属メッシュ素材のワンピースをデザインした場合、それぞれのメッシュのつなぎ目の幾何公差や、支持材を使わない構造にはどの造形方法を選ぶべきか、といったことを知るにはエンジニアリング専攻の学生の手助けが必要になります。
創造性を強化
3Dプリントは、新しいクラブや団体への挑戦や授業で学んだスキルの新たなアプリケーションへの活用など、学生たちが自主的に選択し活動する自由を与えてくれます。ベルリン工科大学の学生は、3Dプリントの力を活用して、自動車レースの学生フォーミュラに出場するハイパフォーマンスなレーシングカーを開発。フォーミュラカーは、耐久性と耐熱性、耐衝撃性が求められることに加えて、超軽量でなければなりません。ベルリン工科大学チームのメンバー数は平均して90名にも上りますが、彼らはカーボンファイバーパーツの成形型や実製品用部品の製作にFormlabsのSLA光造形プリンタを使用しています。
ステアリングのカーボンファイバー製エンクロージャ(左の写真、右手側)成形に使用する成形型(左の写真、左手側)と、トポロジー最適化した複雑形状のマウント試作品(右の写真)。いずれもForm 3 SLA光造形3Dプリンタを使用して造形したもの。
正確で高信頼性、および使いやすい3Dプリンタが、ベルリン工科大学チームの優れたレーシングマシン開発を支えています。チームは毎年3台のマシンを設計・製作し、レースに出場しています。世界の大舞台で毎年活躍するハイパフォーマンスなレーシングカーを、レースに情熱を傾ける若い学生たちが、1年に1台にとどまらず3台まで製作することを、この3Dプリントテクノロジーは可能にしています。レーシングカー製作作業の大部分を学外の業者に委託せざるを得なかったり、より高価なマシンを使うよう指示されたりすれば、スキルを伸ばしたり当事者意識や自身を実感することはできなかったでしょう。手頃な価格でアクセスしやすいFormlabsの3Dプリンタが、学生の創造性と生産性を支える力となったのです。
教育現場に適した3Dプリンタの種類
学校関係者は多くの日常業務に追われており、そのなかで授業内容に応じた教材を判断することは骨の折れる仕事です。このセクションでは、授業や指導目標に適したさまざまな3Dプリンタについて、わかりやすく紹介します。
FDM(熱溶解積層)方式3Dプリンタ
おそらくこれまでに学校現場で最もよく導入されているタイプが、このFDM方式3Dプリンタでしょう。 この方式のプリンタは、繊維状の熱可塑性材料を溶かしたものをノズルから吐出して、造形エリアに積層していく方法でパーツを製作します。この方式のメリットは、拡張性と、低価格であること、さらに造形がシンプルな原理にもとづいている点です。CADで設計を学び始めたばかりの生徒でも造形の概念を理解しやすいのがこの方式です。
各メーカーから出ているFDM方式のプリンタの価格は、高いものでは$50,000ほどですが、学校現場で選ばれる同方式のプリンタの価格はだいたい$1,000〜$4,000ドルほどです。FDM方式のプリンタは造形スピードが早く、操作手順も目で見て確認しやすいため、はじめての3Dプリンタとして学年が下の生徒にもなじみやすいと考えられます。生徒が機能部品を自ら設計して複数のパーツを組み立てられる段階になると、このプリンタで造形するパーツの表面の粗さや精度の低さが問題になってきます。FDM方式のプリンタで造形したパーツは品質が低く、プリントに使用可能な材料種が少ないため、研究や高等教育環境での使用を考えた場合には、用途は限定されてきます。3Dプリントの一つの方式であるFDM方式の3Dプリンタは、初めてのプリンタとしては適していますが、もっと高性能な3Dプリンタと併せて授業で活用されることをお勧めします。
SKA光造形方式3Dプリンタ
従来型のSLA光造形方式の3Dプリンタは高価で、これまで一般的な学校の予算では購入が難しいプリンタでした。デスクトップ型のSLA光造形3DプリンタであるForm 2やForm 3の発売により、この方式のプリンタを入手しやすくなったことで、これらプリンタの信頼性や業務にも耐える品質が認知されるようになり、多くの教育現場で導入されるようになってきています。
SLA光造形プリンタは、表面の仕上がりが良く、対応している材料種が多く、細部の造形精度が高いため、広範な用途に活用することが可能です。SLA光造形方式の造形品には、ほかの方式にはない等方性があり、防水性能を備えたパーツの製作にはこの方式が多く用いられています。
リサーチラボであれば、多種類の高性能材料に対応している3Dプリンタを何かのプロジェクト用に1台導入しておけば、その後は新たなプロジェクトが発生するたびに、高温流体用、透明な生体適合性の組織の足場材料、耐衝撃性の治具やケーシングといった用途に応じて、新たに最適な材料に交換するだけで、何度でも繰り返しこの1台のプリンタを使用していくことが可能です。ファブラボやメーカースペースと呼ばれるデジタル工房のような場所では、一度に大量に製作可能かつ多様な材料に対応したForm 3Lが最もお勧めです。クラスで複数の課題に取り組んでいる場合でも、同じ材料を扱う生徒の作品ごとにまとめて一度に造形し、また別の材料グループの作品を何名分かまとめて造形する、といった効率的な使い方が可能です。Form 3Lはレジンの取扱いが容易で、カートリッジもメンテナンスや操作をしやすい構造になっています。
デスクトップサイズSLA光造形方式3Dプリンタの概要
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SLS(粉末焼結積層造形)方式3Dプリンタ
プラスチックを使った3Dプリント方式の中でこれまで最も高価であった、Formlabs FuseシリーズなどのSLS方式3Dプリンタは、機能確認用試作や、高性能な機会的特性を備えた高耐久性の実製品用部品の造形が可能なプリンタです。この3Dプリント方式では高出力レーザーを使用し、細かな粉末状の材料の上で設計情報に基づいてレーザーを断面状に一層ずつ照射していきます。照射による焼結をしない残りの粉末がパウダーベッドとなって積層部分を周りからサポートします。
Fuseシリーズ以前、SLS方式の3Dプリンタの価格は最低でも$200,000かそれ以上であったため、ほとんどの大学の予算では購入することができませんでした。エンジニアリングやマニュファクチャリング関連のプログラムによっては、助成金を確保できる場合もありましたが、このSLS方式には広い設置場所が必要で、ワークフローが複雑、また、運用に必要なインフラストラクチャに高額な費用を要するため、実際にSLS方式3Dプリンタを使える学生の人数は非常に限られていました。
2020年にFuse 1が発売されて以降は、産業用品質のSLS方式3Dプリンタを広くさまざまな教育現場で導入することが可能になり、パウダーベッド方式の3Dプリントを体験し実際の産業用アプリケーション向けの実製品用部品を製作する機会を、生徒に提供できるようになりました。アメリカ海軍MakerSpace USNAのBaker大佐は、SLS方式のFuse 1プリンタで実習を行った後に、ミスを起こしやすくコストも高くつく金属材料による3Dプリントテクノロジーの指導を行っているということです。アメリカ商務省のNOAA AOML(大西洋海洋気象研究所)では、マイアミ大学内の研究施設であるCooperative Institute for Marine and Atmospheric Studies (CIMAS) と合同で、SLS方式のFuse 1プリンタを使用し、サンゴのサンプリング用に海水中の環境に耐える堅牢なエンクロージャを製作しています。
野生サンゴ種に関するデータ収集のための自動サンプル採取装置を海中に設置する、NOAA AOMLラボのメンバー(左)。NOAA AOMLラボ内に設置されている、サンゴ用水槽の監視装置を入れたケースは、SLS方式のFuse 1で造形(右)。
SLS(粉末焼結積層造形)方式3Dプリントについて
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作業に適したプリンタを選ぶ
ひとことで教育現場のニーズといっても、中学生向けの「3Dデザイン入門編」のレベルから修士課程の研究者まで、教える側のレベルも千差万別です。同様に、あらゆる教育現場のニーズに対応する3Dというものも存在しません。生徒の意欲や授業への参加、達成感、そして卒業後のキャリアにつなげていくには、さまざまな3Dプリントソリューションを用途や環境に応じて使い分けるのがベストです。使い分けは、次のように考えるとよいでしょう。
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FDM方式のプリンタ:シンプルな操作と低価格帯で、高校生以下の教育に最適。
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SLA方式のプリンタ:最も用途が広い。材料の種類が豊富、価格帯が広い、大きさもさまざま。高精度で仕上がり面が滑らかであり、さまざまなタイプのプロジェクトに推奨。
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SLS方式のプリンタ:工業品質のプリンタ。実製品に適したナイロン等の機能性材料を使用した造形に定評。Formlabs Fuse 1+ 30Wなどのモデルであれば、コストもそれほどかからず、生徒のパウダーベッド方式の3Dプリントの学習用に適し、補助金に頼らずとも購入が可能。
適切な3Dプリント環境の選び方
3Dプリンタを使用した指導に関する方針や指導者の技能は、学校によって異なるでしょう。大部分の大学において、3Dプリンタの導入に関する判断を担うのは当該施設の責任者であると想像します。また、学部外の誰でも利用可能な3Dプリント施設を設置すれば、相当の補助金を期待できる大学もあるかもしれません。
小規模な研究施設の特定のプロジェクトで使用する場合でも、大規模なメーカースペースやファブラボ、Innovation Hub、起業家向けのインキュベーションセンターに設置する場合でも、どのような状況であっても3Dプリンタの設置は学習体験を向上します。
研究室で3Dプリントを活用:ニッチで多様な用途に最適な万能ツール
研究室とひとことで言っても、そのサイズや研究テーマはさまざまですが、科学の理解を進める専用の場所であるという点は共通しており、3Dプリントのような先端テクノロジーも何年も前から利用されています。ハワイ大学のナノテクノロジーラボには、学部や修士過程の学生や博士過程を目指す学生の研究用資材の製作用に、SLA光造形方式のプリンタであるForm 3およびForm 3Lプリンタが設置され、プリンタの運用や維持を学部生が担当しています。この研究室で最も多い使用事例は、高性能セラミックを使用したナノ素材に使用する犠牲圧縮用の成形型の製作です。
学生は、「試作品と、構造的な整合性を備えかつ表面が滑らかに仕上がる成形型を、短時間で製作可能なソリューションが必要でした。最も充実した材料カタログが揃っているForm 3が、研究室にあってよかったと思っています。大型のセラミック用の型が必要だったので、Form 3Lが役立ちました」と語っています。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部では、人体の各部の可視化ツールとして3Dプリンタを活用しています。たとえば消化管の模型は、食物 (そして医薬品) の消化と体内循環を理解するために使用します。これは、患者に安全に医薬品を処方する方法の理解に役立ちます。精細な造形を得意とするFormlabs製3Dプリンタは、研究者向けの極めて複雑な人体の各器官の模型も本物そっくりにプリントすることが可能です。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのヒルトン・ラボに所属する大学院生、Zaid Muwaffak Hassanさんは、「呼吸療法プロジェクトで使用する医療機器用の型の造形に、Formlabsの3Dプリンタを使用しました。とても使いやすくて正確で、非常に精細な模型ができました」と話しています。
ライフサイエンス分野の学生にとって、確度と精度は、非常に大きな意味を持ちます。彼らが扱うのは、まさに人命を救う医療機器や治療法です。人体を正しく再現、あるいは皮膚や粘膜と接触する生体適合性を備えたツールは、彼ら自身がきちんと仕事をするためにも、患者さんの健康のためにも必要不可欠です。
メーカースペース向けの3Dプリント: 多人数のユーザー、予測できない使用法
メーカースペースやファブラボは基本的に、大人数のさまざまな学生向けに開かれた場所で、中には地域や教授、さらには地元の中高生にまで開かれている施設もあります。どのような用途で使用されるか予測がつかないため、メーカースペースの管理者は事前の計画や予算立てに頭を悩ませます。仮に使用者を大学の学生に限定した場合でも、最も使用回数が多くなる時期は課題の提出期限である学期末に限られるでしょう。このような事情もあって、これまでのメーカースペース向けの3Dプリンタについては、質よりも数が優先されてきました。 つまり、メーカースペースの責任者は、全学生がメーカースペースになだれ込んで来る時期にも、監督者や予定のやりくり、トレーニングの負担を最小限に抑えながら、全員に3Dプリンタを使わせることが可能な方式を選んできたのです。
そのような理由で、メーカースペース向けでは長年、FDM方式プリンタがメイン(あるいはこの方式が唯一)の選択肢であり続けてきました。しかし、この5年ほどは、Form 3+、Form 3B+、Form 3L、Fuseシリーズなどの3Dプリンタの人気が出てきています。それにはいくつかの理由があります。
まず、Formlabsの3Dプリンタ製品は、操作がしやすく購入しやすい価格のエントリーレベルのモデルであっても、高価な3Dプリンタと同等の産業用レベルの造形能力と精度を備えています。さらに、造形可能な材料の種類が豊富なため、1台のプリンタを、エンジニアリングから製品設計、ジュエリー、ファッション、材料科学、マニュファクチャリングと、幅広い専攻分野の学生が利用することが可能です。また、直感的な操作が可能なため、学生は必要な操作手順をすぐに覚られますし、SLA光造形およびSLS方式プリントエンジンに必要なメンテナンスや監視は最小限で済みます。
アメリカ合衆国海軍兵学校のMakerSpaceUSNAでは、すべての学生が、専攻の別にかかわらず、FDM、SLA、およびSLS方式を学びます。MakerSpaceのディレクターを務めるBrad Baker大佐は、Formlabsの3Dプリンタの設置台数を、数年かけて少しずつ増やしています。大佐は、プリンタの増設のために投資を継続する主な理由として、弊社プリンタの信頼性と安定性を勧めています。「光造形プリンタは失敗率が抜群に低いです。[学生達には]『SLSに行くまでガマンしろ!』と言っています。SLS方式の[Fuseシリーズでの]失敗率は、ほぼゼロです。実質的に失敗ゼロで材料特性も優れていて、精度も非常に高いです」とBaker氏は言います。
起業家の養成施設:SLA光造形方式、SLS方式を活用し、短期間で3Dプリントを学習
ビジネススクールでは、ファイナンスやマネジメント科目に関連して起業に関する授業を設定している学校も多いですが、履修科目のほかにハードウェアの製品設計や開発サポートの授業を行っている学校は少数です。最近では、他校との差別化を目指すビジネススクールの中には、小規模事業者、特にハードウェアや製品設計分野の起業家に、高額の支援金を提供する学校もあります。
カナダ、バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学のHATCH Venture Builderは、アドバイザリーチームやオフィススペース、ウェットラボ、最新のメーカースペースを提供する形で、学生や卒業生のチームを支援しています。HATCHベンチャービルダーは、Form 3などの3Dプリンタと多種類の材料のほか、製品設計や販売戦略に関する指導も提供しています。起業家の卵たちはFormlabsの工業品質の3Dプリンタを使って、高品質の機能試作や実製品用部品を製作し、想定した投資家やメーカー向けのプレゼンテーション実習を行います。ペンシルバニア州立大学、Innovation HubのMandell氏は、「受講生や学生がしっかりとした概念実証を進め、自分のアイデアで投資を生むために、可能な最高のツール」を提供することに相当な力を入れています。
教育現場に3Dプリントを導入する
教育とは、将来に向けた準備をすることです。将来には、生徒たちの将来のキャリアだけではなく、間違いなく彼らが作っていくことになる、私たちの社会の将来も含まれています。生徒たちに高品質のツールとリソースを提供するという形での将来への投資は、わたしたち皆の将来を輝かし続けるための最良の手段です。
今後、3Dプリントは間違いなく大きな役割を担うことになります。すでに、3Dプリント製の家、補綴物、手術器具、ドローン、補聴器、電気自動車部品など、3Dプリントはさまざまな利益をもたらしています。あらゆる教育現場が、この、世界を変えるテクノロジーを深く学ぶ機会を提供するための3Dプリントの導入を必要としています。 教育現場での3Dプリント活用について詳しくは、以下からFormlabs Educationチームにお問い合わせください。