
カラフルなパーツの3Dプリントや、鮮やかなマルチカラー作品の製作をご検討中ですか?近年、カラーで3Dプリント可能な新しい手法が数多く登場し、3Dプリンタ自体もより手頃な価格になったことで、デザイナー、模型製作者、ホビーユーザーなど、多彩な色合いのオブジェクトを誰でも製作できるようになりました。
このガイドでは、3Dプリントをカラーで行うためのテクニックや、カラー3Dプリントの技術とその活用方法について詳しくご紹介します。
カラー3Dプリントの選択肢
カラフルなパーツを3Dプリントする方法は、カラーミキシングからカラーマッチング、フルカラー3Dプリント、3Dプリント品の塗装、ハイドログラフィックスなど様々です。
ダイレクトカラー3Dプリントとカラーミキシング3Dプリント
ダイレクトカラーはマルチカラー3Dプリントとも呼ばれ、複数の色でパーツを3Dプリントする最も基本的な方法です。この方法では、色のついた原材料をプリンタに投入します。最も一般的なのは、FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンタでカラーフィラメントを使用し、フィラメントを溶かしてプリントベッドに積層するものです。

FDM方式によるカラー3Dプリント(出典:3Dnatives)。
FDM方式の3Dプリンタでは、カラーフィラメントを使った単色プリント、デュアル押出機を使った2色プリント、さらにプリンタに同時に流れるフィラメントの数に応じて、カラーミキシングを用いた多色・グラデーションプリントが可能です。
マルチカラー3Dプリントの主なメリットは、使いやすく、コストが低いことです。ただし、特定の色合いを再現できないことや、完成品に積層痕が残ってしまうことがデメリットとして挙げられます。また、FDMプリンタに搭載される押出機が多いほど、プリントエラーの可能性も高まります。
カラーマッチング3Dプリント
ダイレクトカラープリントでは既製のカラーオプションしか利用できませんが、カラーマッチングでは、ほぼすべてのカスタムカラーで3Dプリントパーツを作成できます。

SLA光造形方式で3Dプリントしたさまざまな色のパーツ。
SLA光造形3Dプリント用の初の統合カラーミキシングソリューションであるFormlabs Color Kitは、カラー顔料をベースレジンに混ぜ合わせ、カートリッジ1本分のカスタムカラーのレジンを作ることができます。その後、SLA光造形方式の3Dプリント工程で通常通りレーザーを用いてカラーレジンを硬化させ、鮮やかな色合いで積層痕のほとんど見えない滑らかな表面のパーツを3Dプリントします。

SLA光造形方式3Dプリント用の初の統合カラーミキシングソリューション、Color Kit。

フルカラー3Dプリント
フルカラー3Dプリントは最も汎用性の高い3Dプリント方式です。複数の色を同時に使用してオブジェクトを作成するため、どんな色調にもマッチするリアルなパーツを作ることができます。
カラーフィラメントやレジンとは異なり、フルカラープリントに使用される材料はあらかじめ着色されているわけではありません。カラー2Dプリンタと同様に、プリント中にベース材料に色が追加されます。

バインダージェットでフルカラー3Dプリントしたパーツ(出典:Hubs)。
フルカラー3Dプリントを実現するのは、バインダージェットやマテリアルジェッティングなどの技術です。しかし、これらのプロセスは導入コストが高く、多くのユーザーには手が届きません。これより手頃な価格帯のフルカラーFDM方式3Dプリンタを提供しているメーカーはあまり多くありません。
3Dプリントしたパーツの塗装
場合によっては、カラー3Dプリントではアーティストやデザイナーが求めるディテールや鮮やかな色合いを実現できないことがあります。単色の3Dプリントパーツをアクリル塗料、油絵具、スプレーペイントなどで塗装すると、時間はかかるものの、費用を抑えながら完全なカスタムカラーの作品を手に入れることができます。

SLA光造形方式で3Dプリントした恐竜のミニチュア。塗装前と塗装後の比較。
完璧に滑らかな表面仕上げや非常に繊細なフィーチャーを必要とするモデルには、塗装前にサンディング、下塗り、溶剤の使用などの後処理が必要となる場合があります。
サンディングは表面の不備を減らし、プライマーは小さな亀裂や穴を埋めます。3Dプリントしたパーツによってはアンダーコートでプライマーの中間色を薄めてから塗装する必要があります。
3Dプリントしたパーツのハイドログラフィックス
ハイドログラフィックスは、ハイドロプリンティング、ウォータープリンティング、または水圧転写とも呼ばれ、3次元の表面にデザインをプリントする一般的な手法です。この方法では、インクジェットプリンタを使ってポリビニルアルコールフィルムに絵柄をプリントします。このフィルムを水に浸し、活性化剤を吹き付け、浮いたフィルムに物体を沈めるとカラーフィルムが伸びてパーツに付着します。
このプロセスにご興味がおありの場合は、こちらからコンピュータハイドログラフィックスを用いたフルカラーの3Dプリントに関するガイドをお読みください。
カラー3Dプリントに使われる造形方式
カラー3Dプリントで最も使われている技術はFDM、SLA光造形、SLS/MJF、バインダージェット、マテリアルジェッティングです。ここでは各方式の長所と短所をご紹介します。
FDM
FDM、または熱溶解積層方式は、特に消費者向けの3Dプリントで広く普及しており、最も低コストの技術です。FDM方式の3Dプリンタは、熱可塑性材料を溶かしてプリンタのノズルから造形エリアに押し出し、積層することで造形します。

FDMプリント用のさまざまな色のフィラメント(出典:All3DP.com)。
FDMは主に、押出機を1機のみ搭載したプリンタでのダイレクトカラープリントや、押出機を2機以上搭載したプリンタでのカラーミキシング3Dプリントに使われています。
また、現在では、da Vinci Color 3Dプリンタの登場により、FDMをフルカラー3Dプリントに利用できるようになりました。このプリンタは、無色のフィラメントを押し出す直前にCMYKインクジェットカートリッジで染めることでカラー2Dプリントと似た方法でカラーパーツを作ります。
SLA光造形
SLA光造形3Dプリントは、レーザーで液体レジンを硬化させ、光重合と呼ばれるプロセスで硬いプラスチックにします。SLA光造形方式でプリントした造形品は、レジンを使う3Dプリント技術の中で精細度や精度、ディテールの再現性、表面品質の滑らかさが最も高い仕上がりになります。
SLA光造形では、3Dプリント用の初のカラーミキシングソリューションであるFormlabs Color Kitなどを用いて、ほぼすべてのカスタムカラーに合わせたカラーレジンを作ることが可能です。その滑らかな表面品質により、SLA光造形でプリントしたパーツは後処理、塗装、ハイドログラフィックスも簡単に行えます。

デスクトップサイズSLA光造形方式3Dプリンタの概要
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SLS方式の
SLS(粉末焼結積層造形)方式は、高強度な機能部品が製作できることから、さまざまな業界のエンジニアやメーカーから信頼され、工業用途で最も普及しているアディティブマニュファクチャリング技術です。

SLS方式で3Dプリントしたパーツを染色したもの(出典:Hubs)。
SLS方式3Dプリンタは白、グレー、または黒のナイロンパウダーを原材料として使用します。パーツを直接カラープリントすることはできませんが、後処理段階でパーツを染めたり塗装したりできます。

SLS(粉末焼結積層造形)方式3Dプリンタの概要
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バインダージェット
バインダージェット3DプリントはSLSプリントやMJFプリントと似ていますが、熱ではなく色つきの結合材を使用してパウダー状の砂岩材料を結合します。
バインダージェットで製作したパーツは、表面に穴が多く非常にもろいため、フルカラーフィギュアやコンセプトモデルの作成など静的な用途に限った使用が推奨されます。

バインダージェットでプリントしたフィギュア(出典:Shapeways)。
マテリアルジェッティング
マテリアルジェッティング3Dプリンタは、従来のインクジェットプリントと光硬化性レジンを組み合わせ、2Dプリンタと同様に造形トレー上に材料を滴下し、紫外線で硬化させます。
このプロセスでは無数の色の組み合わせが可能で、鮮やかな色のリアルなパーツを作成できます。しかし、作られるパーツは機械的特性に乏しく熱に弱いうえ、この技術の導入価格はカラー3Dプリントの選択肢の中で最も高価です。

マテリアルジェッティングによるカラー3Dプリント(出典:Hubs)。
各種カラー3Dプリントの比較
FDM | SLA光造形 | SLS方式の | バインダージェット | マテリアルジェッティング | |
---|---|---|---|---|---|
精細度 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
精度 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
表面品質 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
使いやすさ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
複雑な形状 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
詳細 | プリントヘッドが熱可塑性フィラメントを溶解させて押し出す | レーザーが液体レジンを硬化させる | レーザーまたは光源がナイロンパウダーを焼結させる | 結合材が砂岩パウダーを結合させる | インクジェット風プリントヘッドがレジンの滴を硬化させる |
材料 | 熱可塑性フィラメント | さまざまな液体レジン | さまざまなポリマーパウダー | 砂岩 | さまざまな液体レジン |
カラー3Dプリントオプション | ダイレクトカラー、カラーミキシング、またはフルカラー | カラーマッチング | なし | フルカラー | フルカラー |
色を使った後処理 | 塗装(多くの後処理が必要) ハイドログラフィックプリント | 塗装 ハイドログラフィックプリント | 染色 塗装 ハイドログラフィックプリント | 塗装 ハイドログラフィックプリント | 塗装 ハイドログラフィックプリント |
代表的な用途 | 基本的なモデル製作 | ラピッドプロトタイピング、ミニチュア、モデル、医学模型 | ラピッドプロトタイピング、エンドユースパーツ | ミニチュア、モデル | ラピッドプロトタイピング、ミニチュア、モデル、医学模型 |
価格 | ローエンドのプリンタや3Dプリンタキットの場合、$200程度から購入可能。工業用のデスクトップサイズFDMプリンタは$2,000~$8,000、産業用機の場合は$15,000から。 | 格安光造形3Dプリンタの場合は$200〜$1000。工業品質SLA光造形3Dプリンタの場合は$2,500〜$10,000の範囲、大型の光造形3Dプリンタは$5,000〜$25,000。 | ベンチトップサイズの工業用SLS 3Dプリンタは、本体価格が$30,000弱から、パウダー処理装置や粉末除去装置を含むエコシステム一式の場合は$60,000から。従来の産業用SLSプリンタは$200,000から。 | フルカラー3Dプリンタは約60,000ドルから。 | フルカラー3Dプリンタは約50,000ドル、大型のマシンは100,000ドルから。 |

最適な3Dプリント方式の選定方法
ニーズに適した3Dプリント方式選びでお困りですか?本動画ガイドでは、FDM、SLA光造形、SLSの3方式の比較を行います。購入前の検討材料として、是非お役立てください。
カラー3Dプリントの応用例
カラー3Dプリントは、エンジニアやデザイナーが本物そっくりのプロトタイプでコストと時間を節約したり、映画製作者がデジタルモデルを小道具に変えたり、モデル製作者が鮮やかなミニチュアを製作したり、医療専門家が正確な解剖学的モデルを作ったりするなど、さまざまな場面で活躍します。
プロトタイピング
ラピッドプロトタイピングは、企業がアイデアを現実的なコンセプトモデルに昇華し、実製品同様の外観と機能を備えた精密な試作品を製作し、さまざまな検証プロセスを経て製品化・量産を開始するまでの一連の製品開発プロセスを高速化するものです。

birdkidsの開発チームはSLA光造形でカラーのプロトタイプを製作。
カラーコンセプトモデルは、プロダクトデザイナーが考案したアイデアを形にしてステークホルダーに提示し、その内容について議論するなど、リスクを抑えながらコンセプトを探求しアイデアの妥当性を検証できます。
さらに後の段階では、リアルな見た目のカラープロトタイプによって、実製品の外観やエンドユーザーの操作方法をより詳細に検討できます。本物そっくりのプロトタイプを3Dプリントすることで、人間工学に基づいたデザインやユーザーインターフェース、全般的なユーザーエクスペリエンスについて検証し、実製品に盛り込む機能を決定するための設計やエンジニアリングに時間を割くことができます。
カラーマッチング3Dプリントまたはフルカラー3Dプリントを用いることで、製品開発チームはさまざまなカラーバリエーションを検討し、顧客との共同研究を経て生産に移行できます。
エンターテインメント
エンターテインメント業界では、3Dプリントした小道具やモデルが、物理的モデルとデジタル効果の境界を埋めつつあります。アーティストは3Dモデリングソフトウェアを使用してリアルでディテールの凝ったモデルを作り、続いて3Dプリントを活用してほんの数時間でモデルに命を吹き込みます。SLA光造形などの高精細な3Dプリントプロセスでは、肌の質感などデザインの最も複雑な要素まで再現できます。
視覚効果(VFX)とデザインを行うスタジオ、Aaron Sims Creativeが『ストレンジャー・シングズ』のデモゴルゴンをデザインする舞台裏を紹介。
マーベル映画のプロップマスターであるラッセル・ボビット氏や、『レイズド・バイ・ウルヴス/神なき惑星』のジャコ・スナイマン氏、さらには『ストレンジャー・シングス』の視覚効果(VFX)とデザインを手がけるAaron Sims Creativeが、小道具製作の時間を大幅に短縮し、デザイン過程の創造性を高めるにこの技術を採用しています。これにより、製作過程がより柔軟で流動的になり、効率的に小道具やモデルを製作できるようになりました。
ミニチュアやモデル
模型製作、テーブルトップゲーム、コレクターアイテム、その他のホビー分野で、3Dプリントはカスタムミニチュアやフィギュアの製作に革命をもたらしました。
フルカラー3Dプリンタは多くの場合、ホビーユーザーの予算に合わず、そのため、カラフルなモデルを作るには3Dプリント後に塗装する方法が最も普及しています。
たとえば、Modern Life Workshopのアーティストは、3DモデルデザインをSLA光造形3Dプリントと組み合わせることで、有名人の超リアルな胸像を作成しています。まず、デジタル彫刻ソフト「ZBrush」を使ってコンピューター上で詳細なモデルを作成し、その設計をSLA光造形3Dプリンタでプリントし、手作業で塗装します。

Modern Life Workshopのアーティストは、ZBrushと3Dプリントを用いて超リアルな彫刻を製作。
ゲームシーンでは、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」などのテーブルトップゲームのオンラインコミュニティが生まれ、ゲーマーが3Dプリンタを使用して独創的な3Dプリントミニチュア、フィギュア、地形、風景など、ボードゲーム用アクセサリーを製作しています。
DM-Toysなどのプロの模型製作会社も、3Dプリントを利用してプロトタイピングやカスタムモデルの生産サイクルを加速させています。
世界的なプレイ&エンターテインメント企業であるHasbroも、この技術を用いてHasbro Selfie Seriesのフィギュアを製作しています。3Dプリントを活用し、自分だけのアクションフィギュアを製作するという画期的な試みです。これにより初めて、ファンがスマートデバイスで自分の顔をスキャンし、自分そっくりのカスタムフィギュアを手に入れられる仕組みが実現しました。
医療用モデル
ヘルスケア業界では、放射線技師、外科医、生物医学の専門家による3Dプリントの活用がますます広がっています。3Dプリントで解剖学的特徴を正確に再現したモデルを製作し、術前計画の策定や手術中の視覚化、教育用の参照ツールとして活用するためです。
3Dプリントを活用することで、他の方法では不可能だった繊細なディテールを備えた複雑なモデルも製作が可能になります。

SLA光造形3Dプリンタで造形し、アクリル塗料で塗装したフルカラーの膵臓模型。
精細なディテールを持つカラーモデルは、研修医の教育プログラムに最適です。各血管や臓器を直接3Dプリントしたり、さまざまな色で塗装したりすることで、教室でより視覚的な授業を行うことができます。
さらに、患者のスキャンデータに基づいて作る患者専用の手術モデルは、現代のオーダーメイド型の精密医療を実践するうえでますます有用なツールとなっています。
SLA光造形3Dプリントでカラーモデルを製作する
カラーマッチングで自由にカスタムカラーの3Dプリントパーツを作る場合でも、塗装可能な高精細パーツをプリントして超リアルなモデルを製作する場合でも、SLA光造形3Dプリントなら手頃な価格で驚くべきディテールとシームレスな造形体験が実現できます。
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