Clear3Dプリント品の透明度を向上するTIPS

Clear and transparent 3D printing sample

ガラスやアクリルに代表される透明材料は、消費者向け製品から工業製品、ヘルスケアなど、様々な用途で活用されています。しかし、透明部品の試作や少量生産は、従来の方法ではコストが高く、効率的とは言い難い面もあります。そこで「透明部品を3Dプリントで作れないか?」という疑問が湧きますが、適切な技術と材料があれば、答えはもちろん「イエス」です。

SLA光造形方式の3Dプリント透明部品の製作に向いた造形方式で、いくつかの仕上げ作業によって非常に高い光学的透明度を得ることができます。Formlabsの最新SLA 3Dプリンタ、Form 3+と大容量タイプのForm 3Lは、その精度と表面品質に定評のあるSLA方式を更に向上させる独自の特許技術、LFS(Low Force Stereolithography™)テクノロジーにより、成形品レベルの滑らかさを持つ透明部品が製作いただけます。Form 3+によるClearレジンの3Dプリント品は、高い透明度が求められる試作品や部品の製作に数多く採用されており、更に後加工によって一段上のレベルの透明度を実現することも可能です。

半透明または透明の3Dプリント品を作るための材料は複数あります。

  • Clearレジン:、完全な透明に近い状態まで研磨できる硬質材料で、流体工学、金型製作、光学、照明、内部機能を可視化する筐体試作、および半透明な外観が必要なあらゆる部品に活用いただけます。
  • BioMed Clearレジン:長期間の皮膚や粘膜との接触を必要とする生体適合性用途のための硬質透明材料です。
  • Elastic 50Aレジン:柔らかく伸縮性のある半透明の材料です。通常シリコーンで製造される部品の試作に適しています。
  • Flexible 80Aレジン:より硬い軟質材で、こちらも半透明です。ゴムやTPUの柔軟性をシミュレートした試作品製作に適しています。

 

以下にご紹介するような仕上げにより、光学製品から半導体、ミリスケールの流体装置など、幅広い用途で活用できる透明な3Dプリント品が製作いただけます。求められる透明度を手早く得られる方法から、実製品用の透明部品を製作する専門的な技術まで、その方法は多岐にわたります。

クリアで透明な3Dプリント品は、透明部品の試作、内部の挙動や動作を確認できる筐体、住宅用のLED照明器具、あるいはウィンドウ部の製作に用いられます。FormlabsとFormlabs製品ユーザーはこれまで、Clearレジンで3Dプリント製カメラ用の完全な透明度を持つレンズ、ニューヨークのタイムズスクエアに設置されているフレネルレンズ設置用のタイル半導体プリズムミリスケールの流体装置等を製作しています。

Formlabs applications engineer Amos Dudley designed and 3D printed a lens for a fully 3D printed camera.

Formlabsのアプリケーションエンジニア、Amos Dudleyは3Dプリント製カメラに実装するレンズをデザイン・プリントした。

Form 3L Sample Part
Sample Part

Clearレジンの無料サンプルお申込

SLA光造形3Dプリントによる透明部品を貴社にお届けいたします。サンプルは研磨やコーティングを行っていない3Dプリントのみでの造形品です。本記事にてご紹介する表面処理を貴社にてお試しいただき、その仕上がりをご確認いただけます。

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FAQ:アクリルの部品を3Dプリントできる?

可能です。ただし注意事項も存在します。ポリメチルメタクリレート(PMMA)、通称アクリルは透明な熱可塑性樹脂で、より耐久性の高いガラスの代替品として広く採用されています。アクリルの3DプリントはFDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンタにて可能ですが、材料自体に毒性があり、造形時に反りも発生しやすく、またFDMプリンタの造形方式に由来する精度により、FDMでの3Dプリント品は高い透明度を発揮することができず、あまり使い勝手が良いとは言えません。

アクリルのようにほぼ完全な透明度を持つパーツを3Dプリントで製作するには、FormlabsのようなSLA光造形方式の3DプリンタでClearレジンを用いてプリントし、本記事で紹介するような方法で3Dプリント品に表面処理を施すことで透明度を向上することをおすすめします。アクリルスプレーを塗布するのも、透明度を向上する方法の一つです。

 

仕上げ処理で透明度を向上させる

Formlabsでは、多くのご要望をいただいていたClearレジンでの3Dプリント品の仕上げ方法をご紹介すべく、いくつかの技術の社内検証を行いました。本記事では、手作業でのサンドペーパーがけ、クリア塗装、そしてレジンコーティングについてご紹介します。各作業に要する時間や労力は、各ユーザーが求める透明度や表面仕上げのレベルにより異なりますのでご了承の上、ご確認ください。

また、高い透明度が必要な造形品の場合は、25μmの積層ピッチで、尚且つ最も美しく仕上げたい面にサポート材を付けずに済む向きでプリントする(ビルドプラットフォーム上で直接造形できる形状であればサポート材なしでプリントするのが理想的)ことをおすすめします。

手作業でのサンドがけと艶出し

アプリケーション

手作業によるサンドペーパーがけと艶出しは、シンプルな形状の造形品には効果的ですが、細かく入り組んだ形状を持つモデルの仕上げにはあまり向いていません。この方法で完全な透明度を得るのは非常に難しいと言えるでしょう。

透明な部品を手作業で仕上げるには、非常に細かい番手のサンドペーパー等で磨く必要がありますが、工夫次第では虫眼鏡のように透明度の高い部品に仕上げることができます。ただし手仕上げですべての積層目を完全に消すことは非常に難しく、光に対して浅い角度で見ると微細なラインが入ることがあります。

インストラクション:

サンドペーパーの番手を少しずつ細かくしながら磨いた後、アクリル系クリーナーとマイクロファイバークロスを用いて表面の艶出しを行います。

SLA 3DプリントによるClear造形品は、およそ3000グリッドのサンドがけで光沢が得られ、非常に滑らかな感触となります。12000グリッド程度で造形品は光を反射するようになります。サンドペーパーとマイクロメッシュパッドを用意し、サンドペーパーのグリッドを400から12000まで、200グリッド間隔で上げながらゆっくりと丁寧に磨いていきます。グリッドを上げる度に造形品をきれいに拭き上げ、前の番手で磨いた時の微細な傷を取り除きます。

Formlabsのサポートサイトでは手作業によるサンドペーパーがけのガイドが画像付きで紹介されています。(アクリルスプレーを使用した非常に高い透明度を得る仕上げ方法も含まれます。)

ちなみに:

透明度が半透明程度で十分な場合は、鉱物油(ミネラルオイル、パラフィン、ワセリン等)で造形品の表面を仕上げて光の乱反射面を隠すときれいに仕上がります。

Formlabsでは、手作業によるサンドがけやスプレーコーティング、レジンディッピングまで、3Dプリント品の透明度を向上する仕上げ方法を社内検証しています。

Formlabsでは、手作業によるサンドがけやスプレーコーティング、レジンディッピングまで、3Dプリント品の透明度を向上する仕上げ方法を社内検証しています。

スプレーコーティング

アプリケーション:

スプレーでのクリアコーティングは、手早く簡単に、ディテールを損なうことなく造形品の透明度を向上できる仕上げ方法で、尚且つUVカットのものを使用することで光造形品の耐光性の問題にも対処することが可能です。また、スプレーでのクリアコートは多大な労力を要する磨き作業を一切行わずに透明度が向上でき、更にクリアコートを2層、3層と重ねることで手軽に透明度を向上することができます。複雑な形状でもコーティングできるため、幅広いモデルで活用できます。

クリア塗装では、それ単体でレイヤーラインを隠したり、黄ばみや意図しない硬化・劣化の原因となる紫外線から造形品を保護することも可能です。ガラスのような滑らかな仕上げを意図される場合は、塗装前に上述のサンドペーパーがけや艶出しを行った上でスプレーで仕上げてください。サンドがけや艶出しを事前に行うことで、パッケージやボトル、マイクロ流体装置など、ほぼ完全な透明度を持つ試作品を作ることができます。

イントロダクション:

クリア塗装には、低コストなスプレータイプから専用の作業場とツールを要する製品まで、様々な種類があります。

  • 汎用のクリアコーティングスプレー塗料:高品質で安価なスプレーが豊富にあります。2Kのクリアコートをおすすめします。
  • 自動車用スプレー:ハイソリッドアクリルウレタン系のクリア塗料は、非常に高い光沢があり、空気乾燥や焼付にも対応していますが、下塗りとスプレーガン、そしてスプレー作業の専用スペースが必要です。

スプレー塗装の場合は、イソプロピルアルコール(IPA)で造形品をきれいに洗浄した後に十分に乾燥させる必要があります。二次硬化はスプレー前に行うと、黄ばみの原因となるため避けてください。造形品は洗浄後、空気中で自然乾燥させます。完全に乾いたら、ほこりの付きにくい環境で2~3回、スプレー塗装を行います。

ちなみに:

自動車整備工場では、有料でLesonal Universal Clearのようなスプレーで塗装を行うことができます。ほとんどの場合、こうしたショップでは塗装前にナプサのような軽溶剤で造形品の表面を洗浄します。

3Dプリントによる現代アート作品「Window to the Heart」をタイムズスクエアに設置する際、FormlabsとAranda/Laschは自動車の整備工場に依頼し、Lesonal Universal Clearでタイル一枚一枚にスプレー塗装を施しています。

3Dプリントによる現代アート作品「Window to the Heart」をタイムズスクエアに設置する際、FormlabsとAranda/Laschは自動車の整備工場に依頼し、Lesonal Universal Clearでタイル一枚一枚にスプレー塗装を施しています。

レジンコーティング

アプリケーション:

レジンコーティングは、非常に高い透明度が必要な場合に適した仕上げ方法で、レンズや部品内部に設ける窓のように、平らな面にのみ有効です。レジンに造形品を浸けることで、非常に滑らかでクリアに光を反射するシャープな部品に仕上がります。

また、レジンコーティングはClearレジン以外のSLA材料でのプリント品にも使用でき、表面をより一層滑らかに仕上げることができる反面、精細で複雑なモデルの場合はディテールを損なう恐れがあります。

インストラクション:

スポイトのようなものを使用してClearレジンを造形品に垂らす、またはレジンを入れた容器にディップします。レジンの粘性が層間のレイヤーラインや微細な傷を埋め、完全に平滑な表面に仕上がります。

レイヤーラインを消すためのレジンは、できる限り薄い膜厚に留めます。気泡が入った場合は注射器等で泡を抜き取ると美しく仕上がります。適切な設定で二次硬化を行い、裏側にも同じ作業で繰り返します。

3Dプリント製のレンズにレジンコーティングを行う際の各ステップ。左が最終のレンズ。

3Dプリント製のレンズにレジンコーティングを行う際の各ステップ。左が最終のレンズ。

3Dプリントの詳細情報

SLA光造形3Dプリンタ Form 3+では透明な3Dプリント品を低コストかつ最小限の後処理で製作することができる。

SLA光造形3Dプリンタ Form 3+では透明な3Dプリント品を低コストかつ最小限の後処理で製作することができる。

FormlabsのSLA光造形3Dプリント製品の詳細や3Dプリントの作業手順については、こちらのホワイトペーパーをダウンロードいただき、ご確認ください。

また、FormlabsのプリンタでClearレジンを使って実際にプリントしたサンプル品をご希望の方は、以下より無償サンプルをお申込ください。サンプルはプリント後に二次硬化した標準品ですが、本記事でご紹介の仕上げ方法を貴社にてお試しいただくことも可能です。