高速試作用のDraftレジンで最大4倍速の造形スピードを

Draftレジンでプリントしたドロップアウトドリル治具

Draftレジンでプリントしたドロップアウトドリル治具

2019年、Formlabsは高い造形精度を維持しながら高速造形を行い、試作品製作と検証、設計調整からの再試作という一連の反復検証をより高速化することを目的として、Draftレジンを発表しました。このDraftレジンの発売以来、多くのユーザーが製品開発や設計分野に本材料を採用し、従来比数倍のスピードで3Dプリントを行うことで試作品製作を大きく効率化しています。

Draftレジンによる造形では、単に造形自体を高速化するだけでなく、プリントが開始されるまでのスピードからサポート材の除去、洗浄、二次硬化時間の短縮までを含めて作業工程全体を効率化し、最大限に生産性を向上することができます。

Draftレジンの代表的な用途は以下のようなものです。

  • コンセプトモデルや初期段階での試作品
  • 当日中に検証を行うデザインイテレーション
  • 3Dプリントのライブデモ
  • 消耗が激しい部品の高速造形
  • 大型部品のプリント時間短縮

2020年10月、更なる高速プリントと表面品質を実現した新バージョン(v2)のDraftレジンが発売されました。本記事では、第1世代(v1)DraftレジンからのユーザーであるAlbatross Bikesの創業者Will Hilgenberg氏に、新たなDraftレジンの感想と、同社がどのようにエンジニアリングサンプルの製作をDraftレジンで高速化しているかをご紹介します。

Albatross BikesによるDraftレジンV2のテスト

第2世代のDraftレジンでは、サポート材もより除去しやすく進化した。

2019年に発売された第1世代のDraftレジンで大きなメリットを感じていたAlbatross Bikesは、Draftレジンに更にもう一歩のアップグレードを求めていました。

同社からいただいたリクエストは以下のようなものです。

  • 300ミクロン以外の積層ピッチに対応して欲しい。
  • サポート材をより簡単に取り外せるよう工夫して欲しい。
  • Draftレジン独特の臭いをなくして欲しい。
  • 試作品にもっと相応しい色味にして欲しい。 

上記にあるように、300ミクロンの積層ピッチにしか対応していなかったDraftレジン V1に対しV2では200ミクロンと100ミクロンにも対応し、レジンの色味も多くの試作品にマッチするグレーに変更されました。積層ピッチを細かくすることで、アール面やエッジの造形品質が更に向上し、高精細で外観もより美しい試作品が製作できるようになっています。またDraftレジン V2は、Draft Resin V1の300ミクロン設定と同等のスピードで200ミクロンピッチの印刷が可能で、200ミクロンの積層ピッチに対応するSLA 3Dプリント用レジンの中で最も高速なプリントが行えるレジンとなっています。 

「V1のDraftレジンでは経験上、壁厚1mmがコンスタントに高品質でプリントできる限界でしたが、V2ではサポート材を使って0.6mmまではコンスタントにプリントできます。これは素晴らしい進歩です。」

Will Hilgenberg氏

Draft Resin V1はレイヤーラインが厚く、造形品をサポート材から取り外すのに苦労するケースがありました。そのため、ビルドプラットフォームのどこに配置するかをよく考え、PreForm上で向きを調整し、更に後処理作業でサポート痕をよく研磨する必要がありました。これが改善されたことで、Albatross Bikesはデザインファイルや造形設定の微調整に費やす時間を大きく減らし、後処理を気にすることなくプリントに専念できるようになりました。Will氏はV1からV2の進歩の一例として、「スケールを小さくしたプリントを行う場合でも、プリントの都合を考慮して壁厚を変更したりする必要もなく、そのままプリントできるようになっています。」という点を挙げてくれました。

Draftレジン特有の不満として、液体のレジンから発せられる臭いが気になるという声も寄せられていました。Albatross Bikesでは、Draft Resin V1でプリントする際には3Dプリンタをオフィス内の別の場所に移してプリントを行っていたと言います。Draft Resin V2では、その臭いの問題も完全になくなりました。 

Draft V1(左)とDraft V2(右)ではレジンの色も大きく変わった。

Draft V1(左)とDraft V2(右)ではレジンの色も大きく変わった。

Draftレジン V2による試作品と金属製の最終部品 

Draftレジンを上手く活用するコツとは

「Draftレジンは、我々も導入していますが、ちょうどFDMとSLAの間のギャップになっていたニーズに対応してくれるように感じています。」

Will Hilgenberg氏

今日、エンジニアやデザイナーは、コンセプトモデルや初期段階の試作品にはFDM(またはFFFとも)方式の3Dプリンタを使用し、後流の精細さと精度が必要となる試作や忠実なモデルのために光造形方式を使うことが多くなっています。Draftレジンでは初期段階の試作品を高速で造形し、詳細な機能モデルにはスタンダードレジンやエンジニアリングレジンに切り替えることができ、すべて1つのプリンタで行うことができます。Draftレジンを使用した場合、FDMで同サイズのプリントを行うよりも10倍ほど速く、試作品の3Dプリントという点では最速の方法です。

Draftレジンでプリントした大型スピーカーの試作品。FDMプリンタの10倍速程度のスピードで造形できる。

「Draftレジンは、従来のFDMによるプリントとSLA光造形によるプリントの橋渡しをする素晴らしい材料です。」

Will Hilgenberg氏

例えば新しく治具の試作を行う場合、そのサイズと形状により造形スピードは違ってきます。標準的なサイズの治具であれば、Form 3やForm 2でプリントすると5時間ほどかかることがありますが、Draftレジンでは1時間20分で仕上げることができ、73%もの時間短縮が実現しました。造形時間がこれほど短縮できれば、詳細部分も妥協することなくデザインイテレーションを繰り返し、より良い製品を作る時間的余裕が生まれます。

Draftレジン V2を試してみる

Draftレジン V2による試作品と金属製の最終部品

Draftレジン V2による試作品と金属製の最終部品

Draftレジン V2の改良点は以下の通りです。

  • 表面品質の向上:従来の300ミクロンから200ミクロン、100ミクロンの積層ピッチで同等のスピードでプリント可能。
  • レジンカラーの変更:よりプロフェッショナルな外観となるようレジンの色をグレーに変更。
  • 作業効率化:Formlabsの特許技術、LFSテクノロジーを活用。サポート材と造形品との接点を最小化し、洗浄と二次硬化時間を最小化。

これらのアップグレードにより、Formlabs SLA 3Dプリンタでのラピッドプロトタイピングは、これまで以上に簡単かつ優れたものとなっています。

Draftレジンのエキサイティングな使用例があれば、@Formlabsをタグ付けしてソーシャルメディアでお知らせください。