3Dスキャンは、3D製作ワークフローの最初と最後に重要な位置を占めています。エンジニア、プロダクトデザイナー、研究者は、 リバースエンジニアリングによって既存のデザインを取り入れたり、 手で彫った粘土のデザインをデジタル化したり、 人体の形状を正確に参照するなど、デジタルモデルの構築をより速く、より効率的に開始する方法として3Dスキャナーを使用しています。
製作後、3Dスキャンは品質管理をサポートし、3Dプリントされた部品の精度を確認するのに役立ちます。また、部品が使用された後、スキャナーはその性能を明らかにすることができます。変形した部品をスキャンすれば、次回の修正で設計を強化する箇所が分かるようになります。
手持ち3Dスキャナーからデスクトップ型スキャナーまで、これだけ幅広い製品オプションがあると、用途や予算に合った3Dスキャンシステムを選ぶのは大変になるかもしれません。この記事では、3Dスキャナーを購入する際に考慮すべき最も重要な要素をいくつか探ります。
リバースエンジニアリング、修復や計測用の3Dスキャン
3Dスキャンと3Dプリントのワークフローは、複製や修復、リバースエンジニアリング、計測などに応用できます。 ホワイトペーパーをダウンロード し、 ウェビナーでこれらの用途での3Dスキャンと3Dプリントのワークフローをご覧 になり、ご自身のデザインワークフローをより洗練されたものにするために、この技術 をどのように使い始めるかをご確認ください。
※本ホワイトペーパーとウェビナーは現在翻訳中です。近日のアップデートをお待ちください。内容の詳細は[email protected]までお問合せください。
ホワイトペーパーのダウンロード(英語)3Dスキャナーを選ぶ際の注意点
3Dスキャナーの精度 vs. 価格
3Dスキャンの精度は技術によってかなり差があり、向上させるとコストが高くなります。最終部品の要求公差は、3Dスキャナーの精度要件を決定するための有用なガイドとなり得ます。
2018年に発売された3Dスキャナー20機種のメーカー発表の精度と価格の比較
0.1mm以上の精度を持つレーザー方式のスキャナーやストラクチャード・ライト方式のスキャナーは、高解像度3Dプリンターとの相性も抜群です。 Formlabs Form 3光造形(SLA)方式3Dプリンタ は、多くのデスクトップ型レーザー式3Dスキャナのスキャン量と同等の精度と造形可能領域で部品を造形します。
定義: ストラクチャード・ライト方式とレーザー方式の3Dスキャナーは、投影光とオフセットカメラを用いてスキャン対象物の点を三角測量します。レーザー方式の3Dスキャナーはレーザーラインを対象物に投影します。それに対して、ストラクチャード・ライトはデジタルプロジェクターから焦点の合ったグリッドを投影します。レーザー方式のスキャンは、レーザースペックルパターンに起因するノイズが発生するため、ストラクチャード・ライト方式の3Dスキャナーの方が、より高い精度を達成することができます。
3Dスキャンのシステムによって は、測定点と実際の位置の精度のほか、解像度(スキャン距離で捉えた点間の距離)の点でも違いがあります。それはつまり、スキャナーの解像度よりも小さいスキャン対象物の細部は捕捉されないということです。
一般的に、 ストラクチャード・ライト方式のスキャナーは最高の解像度と精度を提供し、そのレベルは通常、レーザースキャニング技術よりかすかに高いです。芸術的な用途に3Dスキャンを活用する時は、詳細な情報が必要な場合もありますが、全体的な精度はそれほど重要ではありません。特に、アセンブリ内の他の部品と正確にはめ合う必要がない場合はそうです。そのような場合、このホワイトペーパーの中で詳しく後述する写真測量が、検討に値する優れたローコスト・オプションとなります。
レーザー方式のスキャナーもストラクチャード・ライト方式のスキャナーも精度は高いですが、リバースエンジニアリングでは小さな面を捉えるために十分な解像度も要求されます。写真測量は解像度が高いですが、精度は通常劣ります。
精度は、メーカーや3Dスキャン技術によって微妙に異なることがあります。例えば、ハンディタイプの3Dスキャナーの精度は、被写体までの距離やスキャン再構成の品質に依存しますが、デスクトップ型の3Dスキャナーは、制約されたスキャン量の限度内で安定した精度を実現します。精密測定のために3Dスキャナーの購入を検討される場合は、必ず同種の他の製品と比較検討するようにしてください。
3Dスキャナーのボリュームとカバレッジ
3Dスキャナーで走査できる範囲は、機種によって大きく異なります。一般的に、スキャナー費用はスキャン量に比例して増加するため、経費をあまり多くかけずに済む、必要なサイズと解像度の要件に合ったスキャナーを見つけることをお勧めします。
ハンディタイプの3Dスキャナーは、対象物の周りを手動で移動させることができ、デスクトップ型に比べてサイズの制約が少ないのが特徴です。安価なハンディスキャナーの多くは、バスケットボール程度の小さなのものから部屋全体に広い空間まで写すことができます。ハイエンドのハンディスキャンソリューションは、さらに幅広い範囲をカバーし、精密な測定を必要としながらもデスクトップ型スキャナーに収まらないあらゆる物体を対象範囲に含めることができます。
また、ハンディタイプの3Dスキャナーは、ほぼ瞬時に対象物を捉えることができるため、人間工学や医療分野での人体計測(完全に静止していない状態での計測)に適しています。
スキャナーは、隠蔽面も漏れなく捉えるために、被写体を回転させながら撮影することがあります。赤色の領域はオクルードで、スキャン時に欠落します深いレリーフがある部分は隠れているため、単軸のターンテーブルでは完全に捉えることが困難です。
スキャナ-で見えない部分があると、モデルに隙間ができてしまいます。しかし今では、ほとんどのスキャンソフトウェアに、小さな欠落部分を自動的に修復し、3Dプリント可能なモデルを作成できるようにする機能が備わっています。但し、穴を修復しても、表面が正確に元通りになることは滅多にありません。
多くの3Dスキャナーでは、ターンテーブルを使って可視範囲を広げるようにしています。スキャナーのターンテーブルの性能は、対象物をどれだけ容易に、そして完全に撮影できるかどうかによって決まります。一部のスキャナーでは、対象物を複数の軸の周りに移動させ、より多くの角度から対象物を撮影する機能を備えています。この機能は、一つの角度から捉えることが不可能な深い凹みやリブを持つプラスチック部品のリバースエンジニアリングを行う時に特に重要になります。
低コストの3Dスキャン
レーザーやストラクチャード・ライト方式の3Dスキャンシステムは、導入コストが非常に高いというデメリットがありますが、今では低価格のシステムも数多く出てきています。低価格のスキャンシステムは果たして、現実世界の用途に十分対応できる性能を持ち合わせているのか?答えはイエスです:すべてのユースケースが高精度を必要とするわけではありません。低価格のスキャナーでも、スピードやスキャンサイズなど、それぞれ特色を持たせており、特定の用途には十分利用可能な選択肢になり得ます。
低価格のスキャンシステムには、大きく分けて3つのカテゴリーがあります:IR(赤外線)深度センサーカメラ、写真測量、そしてレーザー方式のベーシックなデスクトップ型3Dスキャナーです。
深度センサーカメラ(例えば、 Structure Sensor、Sense 3D ScannerやiPhone TrueDepthなど)は、3Dシーンのサンプリング用に赤外線で数多くのドットを投影します。深度センサーカメラは使いやすく、3Dスキャンのオプションとしては最も低コストで導入できます。その代わり、精度と解像度は低く、1mmを下回ることが多く、細かいディテールまで捉えきれません。深度センサー付きカメラで大きな被写体を撮影することも可能ですが、被写体からの距離が長くなったり、カメラに対して急な角度になると精度が落ちます。
写真測量 では、デジタル3Dモデルを作成するために大量の写真が自動的に解析されます。理想的な条件下では、写真測量で撮影する被写体のディテールは、レーザー方式の3Dスキャナーに匹敵するほど細部にわたって捉えられます。 全体として、カメラ位置の固定参照点が少ないため、幾何学的な精度は通常、他の方式よりも悪いです。しかし写真測量は、デジタルカメラとソフトウェア以外に必要な機材がないため、魅力的な選択肢だと言えます。
深度センサーカメラと写真測量は共に、3Dプリントの縮尺モデルを製作する目的で大きな物体をスキャンするのに適したソリューションです。両方とも人体の形状を捉えるのに十分な精度を持ち、人間工学的にカスタマイズされた機器を作るためのワークフローに利用することができます。
エントリーレベルのレーザー方式スキャナーでも、Matter and FormやEORAといった上位機種と同様の高度な技術を採用している機種がいくつか市販されています。こうしたローエンドでも高性能のスキャナーは、小さな物体を1:1のスケールで再現するところから始めるには申し分のないツールです。予想されるように、エントリーレベルのレーザー方式3Dスキャナーの精度は、ハイエンドのレーザー方式計測スキャナーよりも低いですが、精度がさほど重要でない小さな装飾品や図形を再現するのが目的であれば、こうした下位機種からでも十分なディテールを容易に得られます。
3Dスキャンのニーズがたまにしかない場合、デジタル化サービスを提供している業者に外注するのも、一つの手です。そうした外部の専門業者であれば、対象物のスキャンだけでなく、CADへの変換や精度検査なども依頼できます。
フローチャート:用途に応じた最適な3Dスキャナーの選び方
このフローチャートを、精度、スキャン量や予算に応じて必要なスキャナーを選定する際にお役立てください。
3Dスキャンは3Dプリントをどのように補完するのか?
3Dスキャナーは、3Dプリンタの機能を拡張し、ほとんどすべての物体の形状を再現可能にできます。この2つの技術を組み合わせれば、様々な業界のプロセスを簡素化・高度化する強力なデジタルワークフローを構築できます。
3Dスキャナーが捉えた物体は、その表面を実寸大で表現した三角形のメッシュで出力されます。場合によっては、スキャン結果として出力した被写体のデータをそのまま使って、CAD作業をせず3Dプリントすることも可能です。
また、固形化したCADモデルとスキャンした3Dモデルを組み合わせたハイブリッドワークフローも強力なソリューションになり得ます。人間工学技術をカスタマイズして、人体の一部の物理的な印象を捉え、機械的な設計と融合させることができます。
また、3Dスキャナーは、製造された物体の精度を測定するためのツールとして重宝します。3Dプリントの精度には多くの要因が影響しますが、計測グレードの3Dスキャナーを使えば、要求の厳しい用途で材料がどのような性能を発揮するかを明確に把握できるようになります。
3Dスキャンから3Dプリントへ:機械の修復、組立治具、アフターマーケット製品のためのラピッドリバースエンジニアリング
このウェビナーでは、リバースエンジニアリング用のCADや3Dプリント技術を組み合わせて、部品の設計や生産の改善を図るために3Dスキャンを使い始める方法について詳しくご紹介します。
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ウェビナーを観る(英語)3Dスキャンと3Dプリントによるデジタルワークフローの構築
3Dスキャナーと3Dプリンタは、あらゆる業界のデジタルワークフローに不可欠なツールです。3Dスキャンを使用して部品の設計や生産の改善を図る方法、および3Dプリントと3Dスキャン技術を組み合わせたデジタルワークフローをエンジニアリングやプロダクトデザインをはじめとする様々なワークフローに効果的に応用できる方法について詳しく説明する Formlabsのホワイトペーパーをダウンロード するか ウェビナー をご覧ください。
3Dスキャナーから有効な3Dプリント可能なモデルを生成できるようになるには、出力したスキャンデータの処理方法について学ぶ必要があります。リバースエンジニアリングを通じて、 スキャンデータを有効な3Dプリント可能なCADモデルに変換する方法 について詳しく説明します。
3Dプリンタ側の知識を深めるには、 光造形(SLA)技術 について学び、Formlabsの先進的な材料を使って3Dプリントした 無償のサンプルパーツを入手するようにしてください。