光造形3Dプリント品の後処理&仕上げガイド

 

レジンを光で造形するステレオリソグラフィー(SLA)方式の3Dプリントは、さまざまな先端材料で、高い精度と等方性、防水性を備えたプロトタイプやパーツを、微細な形状と滑らかな表面品質で製作できることから、幅広い支持を集めています。

しかし、パーツがプリントを終えた地点ではまだ100%の仕上がりではありません。多くの場合後処理を必要とします。ビルドプラットフォームから外したばかりのパーツはすぐに使用でき表面も滑らかである一方で、仕上げ処理をさらにいくつか加えると、パーツは幅広い用途で使えるようになります。

このガイドでは、イソプロピルアルコールでのパーツ洗浄、光と熱を用いた二次硬化、塗装、サンディング等、SLAで3Dプリントしたパーツの後処理に関する必要情報全てを説明しています。

Stereolithography - Form 3 Resin 3D Printer
White Paper

光造形(SLA)方式のデスクトップ型3Dプリント技術の概要

高精細3Dモデルを製作できる3Dプリンタをお探しですか?SLAプリントの機能について、また非常に精細なモデルを製作できる3Dプリント方式として、どれほど広く活用されているかを詳しく知ることができるこのホワイトペーパーをダウンロードしてください。

※本ホワイトペーパーは現在翻訳中です。近日のアップデートをお待ちください。内容の詳細は[email protected]までお問合せください。

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SLA方式の後処理の基礎

洗浄

多くのユーザーは、SLA方式で3Dプリントしたパーツの塗装方法、もしくは滑らかにしたり磨いたりすることで美しい実製品に仕上げる方法を知りたいと思っています。そのためには、パーツを洗浄し、粘りのある余剰なレジンを表面から取り除く必要があります。パーツが適切に洗浄されないと、粘りのある好ましくない状態になるため、3Dプリントを成功させるための後処理は欠かせない作業です。

SLAプリントによるパーツ洗浄へのヒント:

  • Formlabsでは、SLAプリントしたパーツをイソプロピルアルコール (IPA) またはトリプロピレングリコールモノメチルエーテル (TPM)で洗浄することをお勧めしています。ほとんどのユーザーはイソプロピルアルコールでのパーツの洗浄が効果的とみなしています。ただ、イソプロピルアルコール溶液は大量購入のみ可能な場合が多いため、余剰分は後に使用するために保管しなければならない場合があります。この方法を選択される前に、入手の可否や方法等についてご確認ください。

  • 洗浄を最適化するために、パーツを溶剤の中で動かしたり浸したりしてください。

  • サポート材はパーツの洗浄後に取り外してください。

  • マイクロ流体のような狭い水路のあるデザインには、注射器を使って内側のレジンを取り除き、レジンの硬化を防いだり、水路をブロックしたりすることができます。

  • パーツによって完全洗浄のためには、イソプロピルアルコールで1回とトリプロピレングリコールモノメチルエーテルで1回、合計2回の洗浄を必要とする場合があります。完成前に水の中で洗浄することをおすすめします。各パーツが完全に洗浄されたかどうかの判断はご自身で行ってください。

FormlabsではFormlabsのデスクトップ型プリンタと一緒に Form Wash のご使用を奨励しています。 大型のSLAプリンタにはForm Wash L を使うことで、プリントしたパーツを自動洗浄とすすぎを行うことができます。

硬化:

SLAでのプリントを終えたばかりのパーツは、重合反応がまだ完了していないことがあります。要するに、パーツはまだ最終的な材料特性に到達しておらず、特に圧力下の丈夫なパーツなどは、期待通りの機能を果たさない場合があります。二次硬化と呼ばれる、パーツを光と熱にさらす過程により、材料特性の堅牢性を高めることができます。

SLAプリントによるパーツの二次硬化へのヒント:

  • Formlabsのスタンダードレジンについては、二次硬化はオプションであり、必ずしも必要な手順ではありません。他の種類のレジンは、機械的特性を最大限に発揮できるようにするために二次硬化する必要があります。

  • 生体適合性材料の場合、規制当局が定めている安全基準を満たすために二次硬化は必須です。 

  • それぞれの材料によって決められた時間の二次硬化プロセスが必要です。レジンごとの二次硬化時間はこちら.

このためFormlabsは、自社製レジンを短時間に一貫性のある仕上がりで二次硬化できるようにする独自のソリューションとして、デスクトップ型と大型のSLA方式3Dプリンタ用に、Form CureForm  Cure Lを開発しました。Form CureまたはForm  Cure Lを使えば、SLA方式で3Dプリントした各パーツを自動的に、特性に応じて異なる正しい波長の光と適切な温度の熱で最適な時間まで二次硬化させることができます。

Post-curing SLA
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光造形 (SLA) 方式3Dプリントの二次硬化ガイド

このホワイトペーパーでは、二次硬化の基礎について、またプロセスを効率化することで作業時間の短縮を図り、各材料の特性を最大限に発揮できるようにする方法について説明しています。

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サンディング

Ontario-based Nix sands a Clear Resin SLA 3D printed part.

 

SLA 3Dプリントしたパーツのサンディングは最良の方法である場合が多く、端を表面加工したり、染みを除去したり、サポート材によってできた傷を取り除くのに最適です。手動サンディングはシンプルな形には効果的ですが、深い割れ目や内側サポート材のある複雑な造形品には、困難または不可能である場合もあります。 

SLAパーツをサンディングするするとき、まずは低グリッドのサンドペーパーを使い、その後、少しずつ目の細かいグリッドレベルに移行していくことをおすすめします。例えば、SLA3Dプリントしたパーツは、3000グリッドのサンドペーパー を使ってサンディングすることで滑らかで光沢のあるパーツに仕上がります。徐々にグリッドレベルを上げ、パーツが希望の質感に仕上がるまで、研磨と加工を続けます。およそ12,000グリッドレベルで、パーツは反射するようになります。もしも上手く行かない場合は、パーツに水を流しながらサンディングしたり、サンドペーパーを濡らしてサンディングを行うことで、丈夫なパーツの表面が滑らになってきます。

SLAプリントを行いビルドプラットフォームから取り出しパーツは、FDM等、他の3Dプリント方式でプリントしたパーツに比べて層間の線が顕著に少なくなります。SLAプリンタでは、層間の線が目立たない場合が多くあります。よって、FDMプリントしたパーツを滑らかにするには、はるかに多くのサンディング作業が必要となります。とは言え、SLAプリントでも、ガラスのように滑らかな仕上がりを望むならば、特に球形のパーツの場合、サンディングで層の跡を完全に取り除かなければなりません。徐々にサンディングペーパーのグリッドを上げていくことで、どのSLAパーツも、層の線を取り除いたり、取るに足りない程度にまで減らしたりすることができます。 

3Dプリントしたパーツをサンディングする理由の中で最も多いものは、サポート材の跡を消すことです。3Dプリントを使いこなせるようになったら、プリントの準備プロセスの時間を増やして、造形品の重要パーツからサポート材を除去したり減らしたりできるように角度を変えてみることも大切です。例えば、もし胸像やモデルをプリントするとしたら、モデルの顔部分にサポート材を必要としないようパーツの角度を調整することも可能です。こうすることでサンディング作業の手間が軽減されるでしょう。 

納得できるサンディングが行えたら、ベーシックなマイクロファイバークロスを使って、造形品の表面の小さな傷やサンドペーパーの粉を除去することができます。 

もし1つのパーツに非常に念入りなサンディングを施すならば、パーツの洗浄後に鉱油でこすると、極めて滑らかな表面仕上げが実現します。ほとんどの技術と同じく、鉱油が造形品に大きく役立つかどうかはパーツの形状によって決まりますが、完璧な仕上げ技術を見つける前に、まずは複数パーツのサンディングを行ってください。 

For anyone focused on high-quality, precise SLA parts, Formlabs Finishing Tools is a set of curated products designed to streamline the SLA post-processing workflow and help users achieve superior surface finish, perfectly smooth planes and edges, and an elevated appearance, all while driving down your labor time and cost per part.

塗装

アクリルで塗装したSLA方式3Dプリントパーツ例

アクリルで塗装したSLA方式3Dプリントパーツ例

Dyedレジンを用いたプリント:このプロセスでは1リットルのClearレジンを通常アルコールインクで染めて、カスタムカラーを作ります。その色付きのClearレジンをFormlabsの3Dプリンタに入れて使用すると、新しいカスタムカラーの造形パーツが出来上がります。アルコールインクはClearレジンに完全に溶け、プリント中終始一貫性のあるカラーをもたらす理想的なカラー因子となります。着色したレジンを使って、複数のカラー付き3Dプリントパーツを造形する場合は、着色レジンが洗浄液に溶けることを考慮して、パーツごとに個別の洗浄液を使用することをおすすめします。洗浄液にラベルを付けてどの種類の染料が使われたかを記録することで、濃いカラーの染料の入った水でWhiteレジンを用いたパーツを洗浄するといった誤りを防ぐことができます。 

アルコールインクと混ぜ合わせたClearレジン。

アルコールインクと混ぜ合わせたClearレジン。

ヒント:FormlabsカラーキットはFormlabs製の標準的な一体型カラーミキシングパッケージです。カラーキットを使えば、仕上げや塗装などの手作業なしに、様々なカラーでの3Dプリントが可能になります。カラーキットの使い方の詳細は、以下のビデオをご覧ください。 

カラーキットの活用例として、Birdkidsが、新製品のカラーを試作するためのカラーキットを含む、様々な材料で3Dプリントを使って新製品を開発した方法をご覧ください。

SLAパーツのプリント後の着色:着色材料を全体を混ぜ合わせてしまうことは避けながらパーツを着色したい場合は、プリント後に着色することができます。マルチカラーのパーツを造るための他の着色方法もあります。 

ClearレジンやElasticレジンなど、他のレジンよりも着色しやすいレジンがあります。ここでもアルコールインク溶液の使用をおすすめしており、その中にサポート材付きの3Dプリント パーツを浸します。

着色したレジンを使って3Dプリントしたパーツにカラーを付けることのメリットは、1リットルのレジン全てカラーを変える必要がないことです。その代わりに、Clearレジンで複数パーツをプリントした後に様々なカラーを付けます。着色した3Dプリントパーツは、それぞれに専用のIPA洗浄液を必要としないため、IPA洗浄もはるかに簡単です。 

アクリルで塗装:入り組んだディテールの複雑なモデルには、塗装によって着色する方法があります。塗装は多くの時間を要するプロセスですが、結果は塗装の力量次第で変わるため、ユーザーに「創作特権」があると言えます。プリント後に塗装する場合も、Formlabsのカラーキットを使う場合も、他のパーツが混入しないように、別々の洗浄ユニットが必要になります。アクリル塗装にはこの問題はありません。なぜならパーツは通常の洗浄と二次硬化をし、乾燥させた後に塗装をするだけだからです。 

腕の立つ職人によってアクリル塗装することで、命が吹き込まれたようなパーツになり得ます。

腕の立つ職人によってアクリル塗装することで、命が吹き込まれたようなパーツになり得ます。

スプレー塗装:スプレー塗装の使用は、特に大きく平坦なパーツに有効で、滑らかな表面と深みのある色階調をもたらします。腕の良いユーザーが行えば、SLAで3Dプリントされたパーツのスプレー塗装は素早く終えられます。スプレー塗装の技術のコツは、数回の薄いスプレーコーティングを一気に行うことです。スプレー式のプライマーは、造形したパーツの表面を素早く均一にコーティングできるため、塗装に最適です。Formlabsの「3Dプリントしたパーツの準備と塗装方法」ガイドには、SLAプリントしたパーツのスプレー塗装へのベストプラクティスとその手順説明が書かれています。 

コーティング

「Window to the Heart」をタイムズスクエアにスクエアに設置するために、FormlabsとAranda/Laschのチームは、自動車修理工場に依頼し、Lesonal Universal Clearを使ってタイル一枚一枚にスプレーコーティングを施しました。

「Window to the Heart」をタイムズスクエアにスクエアに設置するために、FormlabsとAranda/Laschのチームは、自動車修理工場に依頼し、Lesonal Universal Clearを使ってタイル一枚一枚にスプレーコーティングを施しました。

真に素晴らしいパーツを造り上げるために、研磨プロセスにおいてユーザーができる代替手段が1つあります。SLA 3Dプリントされたパーツを完全に滑らかで艶やかに仕上げるには、上述の塗装方法の1つを使う代わりにコーティングを行います。通常、パーツをピカピカに仕上げるには、クリアスプレーコーティングが最も有効です。スプレーコーティングは、パーツに念入りなサンディングがなされた後に行います。

3Dプリントパーツをコーティングするとき、Clearレジンの硬化プロセスはパーツの黄変を引き起こす可能性があるため、行わないようにしてください。コーティングを行うパーツに求めるものが外観の美しさのみならば、機械特性をもたらすための硬化は不要かもしれません。硬化プロセスを行わず、IPAまたは水での洗浄後に空気乾燥させます。パーツが完全に乾燥したら、埃の無い環境下で、2、3回スプレーコーティングを行ってください。

電気めっき

3Dプリントしたパーツのコーティング以外にも、新たな手段が選択肢としてあります。それらの中の1つ、パーツを電気めっきすることで、パーツのユーザビリティを変え、補強することができます。電気めっき は、金属イオンがパーツの表面の薄い層に蓄積される電解加工プロセスです。表面を電気めっきすることで、その下のパーツは大幅に強化され、摩耗、紫外線、腐食への材料耐性が高まります。これは最終製品用パーツに最適で、金属3Dプリントの低価格での代替手段です。

電気めっきの使用例をご覧になりたいですか?VolkswagenはホイールキャップをFormlabsのデスクトップ型SLA方式3DプリンタでClearレジンを使ってプリントした後、0.004インチの薄さのニッケル層で電気めっきしました。出来上がったパーツは金属の見た目と感触を有していますが、最低限の形状制限によるデザインが適用されて、高速生産が可能になります。

SLA方式3Dプリントの詳細情報

SLAでプリントしたパーツの後処理は気の遠くなるような作業ではありません。ほとんどのユーザーは、複数のプリントを終えた後、洗浄、二次硬化、塗装、サンディング等を容易に行っています。手の届きやすい価格帯のデスクトップ型3Dプリントと、パーツの後処理に関する知識があれば、アイデアを形にすることが今までになく簡単になります。 

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