プロトタイピングは製品開発に不可欠な工程ですが、これまではボトルネックになることがしばしばありました。
プロダクトデザイナーやエンジニアは、簡易的な概念実証用のモデルを作成する時は基本的なツールだけで事足りますが、機能確認用試作品や生産品質確認用のパーツを製作する時はたいてい実製品を製造する時と同じ工程で作業する必要があります。射出成形などの従来工法は、機械加工やCAEの設定にも高額なコストが必要であるため、少量しか生産する必要がないカスタム仕様の試作品の製作には法外なコストがかかってしまいます。
そのため、多くの企業は、発案したアイデアをいち早く概念実証用のモデルに現実化し、そこから更に実製品と同じように見えて機能する高度な試作品を製作し、いくつかの検証段階を経ながら大量生産に向けた準備を進めることができるラピッドプロトタイピングを有効な手法として採用しています。
ラピッドプロトタイピングを採り入れたプロダクトデザイナーやエンジニアは、これまでよりも早くCADデータから直接試作品を製作し、現実世界の環境条件で適合するかどうかを見極めるために、試験やフィードバックを短期間に数多く繰り返しながら設計を固めていけるようになります。
本ガイドでは、製品開発工程にラピッドプロトタイピングをいかに組み込み、この手法をどのような用途で活用し、現在の製品開発チームにとってどんな種類のラピッドプロトタイピング用ツールが入手可能かについて学ぶことができます。
ラピッドプロトタイピングとは?
ラピッドプロトタイピングは、3次元のコンピュータ支援設計(CAD)データを使って物理的なパーツまたはアセンブリの縮尺モデルをいち早く作成することを可能にする一連の手法の集合体です。ラピッドプロトタイピングでは通常、パーツやアセンブリの製作には従来の削り出し(サブトラクティブ)ではなく、要素を重ねる(アディティブ)積層造形が用いられるため、アディティブマニュファクチャリングや3Dプリントと同義語と捉えられています。
アディティブマニュファクチャリングは、プロトタイピングにはとても相性の良い製法です。この製法は、フォルムにほとんど制限がなく、機械加工も不要で、伝統的な製法で製造された様々な材料の機械特性と非常に近い特性を持ったパーツの製作を可能にします。1980年代に誕生した3Dプリント技術は初期の頃、高額で複雑な技術であったため、導入できるのはほぼ大企業に限られており、当時の中小企業は3Dプリントの専門業者に外注し、反復検証の結果が出るのに数週間待つ必要がありました。
その後の技術革新により、3Dプリントはプロダクトデザイナーがデジタル設計データと物理的なプロトタイプを繰り返し検証しながら、設計した製品を量産できるようにする準備期間を大いに短期化できるようになりました。
デスクトップやベンチトップ型3Dプリンタが開発されると、3Dプリントを取り巻く状況が一変し、導入する企業が後を絶たなくなりました。3Dプリントを内製化できるようになったことで、プロダクトデザイナーやエンジニアは自分たちの手で、デジタル設計データと物理的なプロトタイプを繰り返し検証しながら、設計した製品の生産準備をいち早く進めることが可能になりました。今では試作品を一日以内に作成し、実生活の環境条件に合わせた試験や分析の結果に基づいて、考案した製品の設計仕様、寸法、形状や組み立て方など、数多くの視点で繰り返し検証できるようになっています。ラピッドプロトタイピングは究極的には、より良い新製品を競合メーカーよりも先に市場に投入できるようにする切り札となり得ます。
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ラピッドプロトタイピングの利点
コンセプトをよりスピーディに掘り下げて現実化できる
ラピッドプロトタイピングは、時間もリスクも掛けずに、発案した初期のアイデアのコンセプトを掘り下げて、本物の製品に近づけることを可能にします。この手法を採り入れたプロダクトデザイナーは、仮想空間で各設計案を可視化する必要がなくなり、それぞれの案に基づいて作成した実物の試作品を並べ、デザインを見たり触ったりしながら比較できます。
アイデアを説明するためのコミュニケーションを効果的に進められる
プロダクトデザイナーは、独自の設計案に基づいて作成した物理的なモデルを同じ製品開発チームのメンバー、クライアントや社外の協力者に見て触ってもらえるようになるので、設計案を単に画面に映し出して説明するよりも遥かに具体的なコミュニケーションを図ることができます。ラピッドプロトタイピングは、エンドユーザーの実際のニーズを理解する上で非常に重要なユーザーの明確で実用的なフィードバックを得て、その情報に基づいて設計に改良を加えやすくします。
設計を反復的に検証し、改良点を瞬時に具体化
考案した初期の設計案を実製品に採用する正式な最終設計案に昇華させるためには、試験・評価・改良を何回も繰り替えす反復プロセスを必ず経る必要があります。ラピッドプロトタイピングに3Dプリントを活用すると、より実物に近い試作品をより早く作成するために必要になる柔軟性が得られ、改良点を瞬時に反映し、試行錯誤するプロセスを短期化することができます。
モデルさえ良いものであれば、通常の稼働時間内に設計案を固め、そのデータに応じて作成する試作品の3Dプリントを夜間に完成させ、翌朝から試験を始め、その結果に基づいて設計案を改良し、その一連の作業を必要なだけ繰り返す、という24時間の設計サイクルに対応できます。
コストも製作時間も大幅に削減
3Dプリントの場合、高額な機械加工もセットアップも不要です。また、モデルの形状が変わっても同じ装置を使って製作できます。ラピッドプロトタイピングを内製化できるようになると、これまで必要だった高額な外注コストや長いリードタイムを省くことができます。
製作時間とコストの削減幅を試算
本オンラインツールでは、Formlabsの3Dプリンタで内製化を行った場合に、どれだけの時間とコストが削減可能かをインタラクティブなオンラインツールで試算いただけます。
徹底的な検証で設計ミスのリスクを最小化
製品設計や製造の工程では、設計ミスをできるだけ早く見つけ、修正することが重要です。工程がだいぶ進んだ後で発生する設計の見直しや機械加工方法の変更は、大幅なコスト増に繋がります。
ラピッドプロトタイピングにより、エンジニアは、作成した試作品を見た目も機能面もできるだけ実製品に近づけるために実施する試験を徹底的に行う時間的余裕が持てます。本番生産に移る前に試験を徹底的に実施できれば、製品の有用性や製造可能性に関する問題が発生するリスクを最小限に抑えられます。
ラピッドプロトタイピングの用途
プロダクトデザイナーやエンジニアは、ラピッドプロトタイピングに様々な技術や材料が利用可能になったことで、初期のコンセプトモデリングから、エンジニアリング、有効性の確認試験や本番生産に至るまでの製品開発のどの段階でもラピッドプロトタイピングを有効活用できるようになりました。
概念実証(PoC)用試作品とコンセプトモデル
コンセプトモデルまたは概念実証(PoC)用試作品は、プロダクトデザイナーが考案したアイデアや推測の有効性を見極め、製品の実現可能性を試験で確認するのに大いに役立ちます。物理的なコンセプトモデルは、プロダクトデザイナーが考案したアイデアを形にしてステークホルダーに見せ、その内容について議論し、ローリスクのコンセプト探求法を通じて、そのアイデアの是非を問うことができるようにします。
PoC用のプロトタイピングは、製品開発の非常に初期の段階で実施します。そこで作成された試作品には、製品開発をより具体的な方向に進む前に、初期の想定が間違っていないかを検証するために必要な最低限の機能しか備わっていません。
コンセプトモデリングを成功させるには、スピードが鍵を握っています。デザイナーは物理的なモデルを製作して評価作業を進められるようになる前に、多くのアイデアを発案し、吟味する必要があります。この段階では、製品の有用性や品質はまだそれほど重要ではなく、設計チームはできるだけ既製品を使ってアイデアの検証に着手します。
3Dプリンタは、コンセプトモデリングには最適なツールです。3Dプリンタがコンピュータに保存しているファイルを物理的な試作品に変換するまでに要するターンアラウンド時間は非常に短いため、デザイナーにはコンセプトの別バージョンを追加して試験する余裕も生まれます。また、デスクトップ型3Dプリンタは、製作所や製造工場に設置されている大半の機械設備と違って、オフィス内で必要とする専用スペースは非常に少なくて済みます。
外観確認用試作
外観確認用試作品は、抽象的なレベルで実製品を彷彿とさせますが、機能面の多くはまだ欠けている状態です。その利用目的は、実製品に求める見た目を更に良くするアイデアを生むための叩き台としての役割を果たすことであり、エンドユーザーがその製品をどのように扱うかをより深く理解できるようになることです。外観確認用試作品は、実製品に備える機能を本格的に作り込むために多くの時間をより詳細な設計やエンジニアリングに費やす前に、エルゴノミクス、ユーザーインターフェースや全般的ユーザーエクスペリエンスの検証を活用できます。
外観確認用試作品の作成は通常、スケッチ画、発泡体や粘土模型から始まり、それからCADモデリングに移っていきます。設計サイクルが一回目の反復検証から次のサイクルに移るまでの間、プロトタイピングはデジタル設計データと物理的なモデルの間を行ったり来たりしながら、修正や改良が繰り返されます。設計が最終段階に近づくにつれ、工業デザイン担当チームは、製品仕様で実際に指定されている色、材料や仕上げ材(CMF)を使って、外観確認用試作品をできるだけ実製品に近づけることを目指します。
機能確認用試作
エンジニアリング担当チームは、工業デザイン工程と並行して、製品に組み込む機械系、電気系、熱系統のシステムを試験し、反復検証を繰り返し、改良を加えるための別の試作品をもう一式作成します。機能確認用試作品は、外観的には実製品と似ていないかもしれませんが、その中には、実製品に組み込まれる中核技術や主要機能を開発して試験できるようにするために必要な要素が盛り込まれています。
重要な中核機能は多くの場合、別のサブユニットで開発され、そこで試験を重ねてから、単一製品として一体化された試作品に統合されます。このようにサブシステムを使って製品開発を進める手法は、実製品に入るすべての要素を組み込む前に、各機能系統の開発担当チームの責任を分担させることで、より細かな粒度までそれぞれが担当する機能の信頼性を高める作業に専念しやすくします。
Formlabsの大容量SLA光造形3DプリンタForm 3Lの初期段階における機能確認用試作品
製品試作(エンジニアリングプロトタイプ)
エンジニアリング用試作品は、プロダクトデザインやエンジニアリングのチームが、社内で企画している実製品を商品として市場に出せるようにする最低限の要素を盛り込んだ製造に適合させた設計(DFM)を実現させるための試作品です。こうした試作品は、製作所や研究所で選抜された代表的なユーザーグループと実施するユーザー試験、設計開発内容がより具体的になる加工段階を受け持つ専門技師とのコミュニケーションや営業部門との初期のミーティングで披露するデモなどに使用されます。
この段階からは、エンジニアにとって、設計内容の細かなディテールがより重要になってきます。3Dプリントを活用すれば、実製品に一段と近づける高忠実度の試作品を容易に製作できるようになります。3Dプリントで製作する高忠実度試作品は、設計を変更することが時間的にも費用的に段々難しくなる先に高額な機械加工の工程や本番生産に移る前に、設計通りに製造可能なのかを確認したり、フィット感や機能性の検証を行いやすくします。
高度な3Dプリント用材料を使えば、射出成形などの伝統的な製造工程で製作されたパーツの外観や感触、材料特性に非常に近づけることができます。ディテールの凝った造りや複雑な構造、表面の柔らかさ、滑らかさや低摩擦性、硬くて頑丈な筐体、透明な部品など、様々な特徴を持つパーツを模倣できる材料が開発されています。3Dプリント品は研磨や塗装や電解めっきといった表面処理で実製品の外観に近づけることができ、複数の部品や材料を組み合わせたアセンブリを作れるようにネジ穴やネジ山などを設けることも可能です。
エンジニアリング用試作品として製作するパーツまたはアセンブリは、実製品が実際に置かれる外的環境や条件の下で想定通りに機能するかどうかを確かめるために実施する広範囲に亘る機能試験や有用性試験に耐えられるように造らなければなりません。今では、様々なレベルの熱応力や化学的・機械的ストレスに耐える高機能試作品をいわゆるエンジニアリングプラスチックを使って3Dプリントすることが可能です。
各種検証用試作から量産へ
小ロット量産やワンオフ品、サブアセンブリ用の設計や各種検証試験(EVT、DVT、PVT)用の試作品を製作する必要があるエンジニアたちは、ラピッドプロトタイピングを通じて製造可能性を確認することができます。
3Dプリントは、大量生産に移る前に社内や現場で、実際の製造工程で求められる条件を念頭に置いた、総合的な実施試験を実施しやすくします。
ラピッドプロトタイピング用に3Dプリントした試作品は、射出成形、真空成形やシリコン成形といった従来工法と組み合わせることで、生産プロセスの柔軟性、俊敏性、拡張性やコスト効率性を高めることもできます。3Dプリントによるラピッドプロトタイピングは、特注の冶具や固定具の試作品を短期間に繰り返し製作しながらデータを蓄積していくことで、機能試験や認証試験を簡素化することができる効率的なソリューションにもなります。
3Dプリントの場合、生産が開始した時点で、設計を更に改良する作業を必ずしも止める必要はありません。プロダクトデザイナーやエンジニアは、ラピッドプロトタイピング用のツールを使えば、生産を開始してからでも設計変更や微調整を容易に続けられます。生産ラインで製品に組み込む治具や備品に不具合が発生しても、すぐにその問題に効果的に対応できるため、組立工程や品質保証プロセスを効率化し、製品の継続的な品質向上を最終段階まで確実に図ることができます。
3Dプリンタによるラピッドプロトタイピングを成功させる方法
本e-bookは 、3Dプリンタで従来の工程にイノベーションと向上をもたらす企業の6つの 実例を紹介して います。
治工具のラピッドプロトタイピングとその方法
アディティブマニュファクチャリング
ラピッドプロトタイピングは実質的に、アディティブマニュファクチャリングや3Dプリントと同義語として捉えられています。今では様々な方式の3Dプリントが利用可能で、中でも最も広く普及しているラピッドプロトタイピング用の3Dプリント方式はFDM(熱溶解積層)方式、光造形方式と、SLS(粉末焼結積層造形)方式が挙げられます。
FDM方式
FFF(熱溶解フィラメント)方式とも呼ばれるFDM方式の3Dプリントでは、 熱可塑性樹脂のフィラメントを溶解させ、プリンタのノズルから押し出して積層していきます。
FDMは模型製作を趣味にするユーザー向けの3Dプリンタの需要の高まりと共に、消費者の間で最も広く活用されるようになった3Dプリント方式です。プロ仕様のFDMプリンタになると、プロダクトデザイナーやエンジニアの間でも広く使われています。
精密性や精度という点では、FDMは樹脂3Dプリント方式の中では最も低いため、精密で複雑な形状のデザインやモデルをプリントするのに最適な方式とは言えません。FDM方式でのプリント品をより上質に仕上げたい時は、化学的あるいは機械的な研磨を後処理工程に加えることをお勧めします。プロ仕様のFDMプリンタの中には、こうした品質面の課題を軽減するために水溶性のサポート材を使ってプリントできる機種も存在します。
FDM方式の3Dプリント用材料としては、ABSやPLAといった標準的な熱可塑性樹脂、またはそのブレンド材が使用できます。ハイエンドのFDMプリンタになると、より幅広いエンジニアリングプラスチックにも対応し、中には炭素繊維などの複合材やPEEK材などのスーパーエンプラを使用できる機種もあります。FDMプリンタをラピッドプロトタイピングに使用する場合は、従来では機械加工で製作するような比較的シンプルな形状の場合に特に有効です。
光造形方式
SLA光造形方式の3Dプリンタは、レーザーを用いた光重合という化学反応を利用して光硬化性の液体レジンを硬化させることで造形します。SLAは、解像度、精度や利用可能な材料の汎用性がいずれも高いため、3Dプリントの専門業者の間で最も広く活用されている方式の一つです。
SLA方式でのプリント品は、樹脂材料での3Dプリント方式の中で最高の精密性と精度、表面品質を備えます。そのためSLA方式は、その表現に対する要求水準の高い外観確認用および機能確認用の製作に最適な3Dプリント方式です。
しかし、SLAを使う最大のメリットは実はそこではなく、利用可能な材料(レジン)の幅が非常に広い点にあります。多くの材料メーカーが提供する一般的な熱可塑性樹脂やエンジニアリングプラスチックに備わる機械的特性や熱的特性に相当する高い機能を持つよう調合された、画期的なSLA用の光硬化性レジンが数多く開発されています。
例えば、FormlabsのDraftレジンでのラピッドプロトタイピングは、最高でFDM方式の3Dプリントより10倍速くプリントすることができます。
SLS(粉末焼結積層造形)方式
SLS(粉末焼結積層造形)方式とは、様々な業界のエンジニアや製造業者から強度がある機能的な製品やパーツを製作できる方式として信頼される方式ですが、その最大の特徴は金型レスでの小ロット量産に対応する方式である点です。
SLS方式3Dプリンタは、高出力レーザーで高分子ポリマーを焼結することで1層毎に造形を行います。プリント中は、造形品周囲に残る未焼結のパウダーが造形品を支える形になるため、サポート材が不要になる点も大きな特徴です。SLSは、複雑な内部構造や成形ではアンダーカットになってしまう形状、薄肉の壁やエンボス構造等、複雑な形状の造形に適しています。SLS方式での造形品は、射出成形品に匹敵する高い強度や優れた機械的特性を有します。
ラピッドプロトタイピングの現場ではSLS方式の3Dプリントは主に、本物のように機能確認用試作品や過酷な条件の機能試験またはお客様からフィードバックを得るための実地試験に必要になるエンジニアリング用試作品(例、配管、ブラケット)の製作に活用されています。
パーツの無償サンプルをリクエスト
FormlabsのSLS、Fuseシリーズで実際にプリントした無償サンプルパーツをお届けします。貴社にてその品質をご確認ください。
CNCによる機械加工
コンピュータ数値制御(CNC)加工機はFDM、SLAやSLSなどの3Dプリンタと違い、いずれも削り出しによるサブトラクティブマニュファクチャリングです。CNC加工での製作工程は、まずブロック状、シート状や棒状のプラスチックや金属などの材料を準備するところから始まります。次にその材料を機械加工による切削を行いながら求める形状を得ます。
機械加工には、固定したワークを回転式の工具で削るフライス加工や、固定した旋盤にワークを回転させて削る旋盤加工があります。レーザーカッターを使えば、幅広い種類の材料に彫刻やカッティングを行うことができます。また、ウォータージェットカッターでは、実質的にほぼすべての材料に高圧噴射した水のブレードで研磨、切削が行えます。CNCのフライス加工機や旋盤の中には、より複雑な加工が行える多軸式のものもあります。レーザーやウォータージェットカッターは、どちらかと言うと、フラットな形状のワークを加工するのに向いています。
CNC加工機では、樹脂、軟質金属、硬質金属、木材、アクリル、石材、ガラスや複合材など幅広い材料を加工することができます。アディティブマニュファクチャリング用のツールと比較すると、機械加工は加工開始までのCAE等のセットアップや機器の操作も複雑で、中には特殊なツールや操作方法、設置環境や処理方法などと共に作業を行う必要がある場合もあり、一度しか製作しないワンオフ品の製作などでは、3Dプリントよりもコストが割高になってしまいます。
ラピッドプロトタイピングの現場では、機械加工はシンプルなデザインや構造の部品、金属部品や3Dプリントでは製作できない種類の部品の製作に適しています。
ラピッドプロトタイピング用ツールの比較
FDM 3Dプリント | 光造形3Dプリント | SLS 3Dプリント | 機械加工 | |
---|---|---|---|---|
精密性 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
精度 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
表面品質 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
使いやすさ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
複雑形状の表現 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
ワークの最大サイズ | 最大300 x 300 x 600mm (デスクトップや小型の3Dプリンタ) | 最大300 x 335 x 200mm (デスクトップや小型の3Dプリンタ) | 最大165 x 165 x 300mm (コンパクトな工業用3Dプリンタ) | 装置により幅広く異なる |
使用可能な材料 | ABSやPLAといった標準的な熱可塑性材料とそれぞれのブレンド材 | 非常に多彩な光硬化性樹脂のレジン。スタンダード系、エンジニアリング系(ABS、PPやシリコンやゴムライクの軟質材、高耐熱、高剛性、難燃性、ESD対策材料等)、ロストワックス対応材料、歯科用や医療用等の生体適合性材料など。 | エンジニアリング系の熱可塑性樹脂、ポリアミド(ナイロン)系が一般的だがガラスや炭素繊維などの複合材も。生体適合性材料にも対応。 | プラスチック、軟質金属、硬質金属(工業機械)、木、アクリル、石、ガラス、複合材 |
用途 | 基本的な概念実証用モデルや低コストで実現できるシンプルなパーツのプロトタイピング | 厳しい精度要件が求められる、滑らかな表面品質が求められる、あるいは短納期の試作品、再現性の高い外観確認用試作品や機能確認用試作品など | 複雑な形状、機能確認用試作品やエンジニアリング用試作品、小ロット量産まで対応。 | シンプルなデザイン、構造材、金属部品 |
装置価格 | デスクトップサイズのものであれば、ローエンド機で数万円から、より高機能なミドルエンド機で約30万円程度から、業務用ハイエンド機は100~200万円程度。 | 業務用のデスクトッププリンタは 50万円程度から、大容量のベンチトップサイズ機で150万円程度、大型の工業用光造形機は1,000万円以上の価格帯。 | FormlabsのFuseシリーズはベンチトップサイズの工業用プリンタとして1,000万円以下、旧来の工業用ハイエンド機は4,000万円程度から。 | 小型のCNC加工機は20万円程度から、工業用の本格的なものは遥かに高額。ベーシックな研磨機程度であれば5万円以下、ミドルエンドのレーザーカッターでは50万円程度、ウォータージェットカッターは250万円程度から。 |
ラピッドプロトタイピングを始めましょう
ラピッドプロトタイピングは、フォーチュン500にランキングされているような大企業から、そうではない中小企業にまで至る様々な業界で幅広く導入されています。その目的はいずれも、開発のスピードを加速させ、コストを削減し、関係者間のコミュニケーションを良くし、究極的にはより良い製品を製造できるようにしたいということで共通しています。
これまで複雑で法外なコストが掛かる技術であった3Dプリントは、デスクトップ型やベンチトップ型の3Dプリンタが市販されるようになって以来、どのビジネスでも容易に利用できる身近な技術になりました。
3Dプリンタについてより詳しく知り、大手メーカーが3Dプリントをどのように活用して、コストを削減し、設計から本番生産までのリードタイムの短縮化を図っているか掘り下げてみたい場合は、次のような方法が用意されています。