Formlabsは、衝撃や圧力、手荒な扱いにも耐える生体適合性材料へのニーズに応えるため、特別に開発された新しい材料であるBioMed Durableレジンを発表しました。
BioMed Durableレジンは、PSI(Patient Specific Instruments)と呼ばれるその患者専用の器具やカスタム品の手術用器具、あるいは設計から小ロット量産までのあらゆる段階で生体適合性材料を使用すべき製品開発プロセスに最適な材料です。
USP Class VIに分類され、ISO 13485認証取得済のFDA認定工場で製造されるこの材料は、長期の皮膚接触や短期の組織、骨、象牙質接触の用途に対応しています。
BioMed Durableレジン:Formlabs史上最も耐衝撃性に優れた材料
衝撃や圧力、手荒な扱いにも耐える医療機器用の新たな生体適合性材料の詳細をご紹介します。本ウェビナーでは、医療用3Dプリントの専門家が、BioMed Durableレジンの主なメリットと用途をご説明します。
BioMed Durableレジン
ヘルスケア業界では、3Dプリント製のモデルや装置、ガイド、そして製品にポジティブな影響をもたらす多くのエビデンスが既に存在するにも関わらず、多くの医療機器メーカーでは医師の治療行為における重要事項に3Dプリント品を取り入れることを躊躇しています。その気持ちも理解はできます。患者の健康に対して責任を負う立場では、材料や治療行為に万全を期す必要があります。これまでの多くの3Dプリント用材料は、認証を取得し、研究によってその安全性が証明された完璧なものであることを示すことができませんでした。
Formlabsの生体適合材料はそれぞれ、ヘルスケアにおける特定の用途に最適な機能を提供することを目指しています。 BioMed AmberレジンやBioMed Whiteレジン等の材料は、サージカルガイドや患者専用の器具に活用され、大きな成功を収めています。しかし、多くの医療機関や医療機器メーカーからは、医師はより衝撃や摩耗に強いものを強く求めているという報告が寄せられています。患者専用の器具や手術用器具においては、精密さや過酷な使用で破損する可能性を慎重に評価する必要があります。 手術室のような細心の注意を要する環境では、すべての部品に信頼性、耐久性、そして一貫性が求められます。
医療機器メーカーにとって、使い捨ての手術用器具に強度と生体適合性だけでなく、耐衝撃性にも優れた材料が使えるということは、製品開発期間の短縮につながります。
こうしたニーズに応える材料が、BioMed Durableレジンです。USP Class VIの評価、幅広い医療用途に対応できる適合性認証、エンジニアリングに特化した強度を備えた、既存のヘルスケア向け3Dプリント用材料のギャップを埋める新しい材料です。
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BioMed Durableレジンの主なメリット
世界中の医療機関、製造拠点、研究施設など多彩な分野のFormlabsパートナーと密接に協業し、強度と生体適合性に関する厳しい規格に適合したBioMed Durableレジンを開発しました。また、レジンの持つ優れた表面品質と造形の緻密さにより、試作品は試作・検証サイクルの最終段階においても射出成形品のような外観と質感を実現します。
この新材料の最大引張強さは29.1MPaで、Formlabsのエンジニアリング用レジンの中でも特に人気の高いDurableレジンや、一般的な樹脂材料であるポリプロピレン(PP)と同等となっています。98J/mの衝撃強さ(ノッチ付きアイゾット)を持つBioMed Durableレジンは、BioMed Clearレジンの約3倍の強度を備えながら、同じ生体適合性規格に適合しています。BioMed Durableレジンのこれらの機械的特性は、本材料が破損に強い耐久性と耐衝撃性を備えていることを示しています。新材料BioMed Durableレジンは、手術室で使用される器具、あるいは医療機器の機能確認用試作において、高強度で耐摩耗性のある部品を作るのに適しています。
最大引張強さ | 引張弾性率 | 破断伸び | ノッチ付きアイゾット | |
---|---|---|---|---|
BioMed Durableレジン | 29.1MPa | 0.99GPa | 33% | 98J/m |
BioMed Clearレジン | 52MPa | 2.1GPa | 12% | 35J/m |
Durableレジン | 28MPa | 1.0GPa | 55% | 114J/m |
この新材料は、医師や医療機器メーカーが患者との接触が生じる場面で使用するものです。そのためFormlabsは、この新材料に確実な信頼性を担保するため、USP Class VIに規定された製造工程に則り、長期の皮膚接触(30日以上)および短期の組織、骨、象牙質接触(24時間未満)のある用途で使用するための認証を取得しています。Formlabsのレジンは、ISO13485認証取得済の工場で製造されており、徹底した品質管理が行われています。
Formlabs BioMedレジンの概要
接触種別 | 皮膚 | 粘膜 | 骨、組織、象牙質 | 薬剤容器、薬品用資材、医療機器部品 | 粘膜 | 呼吸経路 |
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接触期間 | 30日以上 | 24時間未満 | 24時間未満 | - | 30日以上 | 30日以上 |
適合ISO規格 | EN ISO 10993-1 EN ISO 10993-3 EN ISO 10993-5 | EN ISO 10993-1 EN ISO 10993-3 EN ISO 10993-5 | USP <151> Pyrogen | USP <88> Class VI | EN ISO 10993-1 EN ISO 10993-3 EN ISO 10993-5 EN ISO 10993-10 EN ISO 10993-11 EN ISO 10993-23 | EN ISO 18562-1 EN ISO 18562-2 EN ISO 18562-3 EN ISO 18562-4 |
BioMed Clearレジン | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
BioMed Durableレジン | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 評価試験実施中 | |
BioMed Whiteレジン | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ||
BioMed Amberレジン | ✅ | ✅ | ✅ | |||
BioMed Blackレジン | ✅ | ✅ | ✅ |
BioMed Durableレジンの用途
患者専用の器具
患者専用器具は、患者様固有の身体構造や症状に合わせて作られるガイドです。患者専用器具を使用することで、患者の転帰が16%改善し、合併症が30%近く減少し、手術時間が平均70分短縮されるという結果が出ています。外科医にとっては手術に汎用器具を使用するという小さな妥協をする必要がなくなり、眼前の処置に完璧にマッチした器具が使えるようになることで、より効率的に処置が行えるようになります。また、手術時間の短縮は患者にとっても医療機関にとっても有益です。医療機関は手術時間の短縮によって、3Dプリント製の患者専用器具導入の投資対効果(ROI)をすぐに実感できます。
BioMed Durableレジンに対応した3Dプリンタ、Form 3B+は医療機器メーカーや院内ラボのどちらでも簡単に設置できるサイズで、高い精度と信頼性、実績のあるワークフローを提供します。 医師と共同で手術器具の設計と3Dプリントを行うPSIプロバイダー、米TechFitでは、CEO兼共同創設者のMauricio Toro氏がBioMed Durableレジンを用いて、衝撃、破損、摩耗に強い患者専用器具を製造しています。
"BioMed Durableレジンは、使い捨ての患者専用手術器具を3Dプリントするのに理想的な材料だと思います。最高の手術結果を得られるよう、これまで同様の生体適合性を維持しながら、これまで以上の機械的特性が得られることで設計の自由度と使いやすさが生まれています。 "
Mauricio Toro氏、TechFit CEO兼共同創設者
TrabTech製カスタムサージカルガイド
BioMed Durable Resin is ideal for patient-specific instruments like these surgical guides. Source: Trabtech
Trabtechは3Dプリンタによるカスタム品の切断および穴あけ用ガイドの設計・製作を行っており、常に外科手術の高度化を目指しています。
2022年、同社はマルテペ大学整形外科・外傷学科の名医の一人であるTuran Najafov博士が設計した、脊髄アンカーシステムの開発を中心とした博士研究プロジェクトを実施しました。その目的は、Najafov博士が新たに考案した「ATSAS(Angled Transpedicular Screw Anchor System」と呼ばれるシステムの引抜き強さを、従来の6.5mmの椎弓根スクリュー(PS)と対照群で比較することでした。その結果、ATSASの引抜き強さは従来の椎弓根スクリューよりも非常に優れており、35%の差が見られました。
BioMed Durableレジンの開発を知ったTrabtechは、すぐに生体適合性版のATSASを開発できる可能性に思い至りました。同社は早速、Tough 2000レジンとBiomed Durableレジンの両材料で製作したATSASの引抜き強さの比較評価試験を依頼。
Trabtech社は、従来のATSASで行っていたものと同じ設計と実験を徹底して行った結果、Biomed Durableレジンを使用したグループは、Tough 2000レジンのグループを20%上回る引抜き強度を示すことを確認しました。
「BioMed Durableレジンの登場は、サージカルガイドの進化において極めて重要な意味を持ちます。この優れた機械的特性と3Dプリントの有用性を活用することで、手術の精度と効率を向上する器具の開発力というTrabtechの強みを一層強化することができると思います。この素晴らしい材料の可能性を考えれば考えるほど、切断用ガイドや手術器具など、実に幅広い分野での活用が想定でき、現在も様々な試験を行っています。Formlabsとのコラボレーションと、この新材料の導入のおかげで医療技術の分野に新たな可能性が生まれたと思っています。」
Trabtechと共同研究を行ったTuran Najafov博士、マルテペ大学、整形外科・外傷学科
使い捨て手術器具
restor3d は、FormlabsのSLA光造形3Dプリンタ数台を用いて、数千に及ぶ処置用の樹脂製器具を製造しています。3Dプリントがもたらす設計の自由度とリーン生産方式によって、restor3dは手術用器具の業界に革新をもたらしました。
一般的な手術用器具はステンレスを切削して製作するのが通例で、一般的な器具であるトレイも数千ドルに及ぶコストが必要となるため、医療機関や外科医はこうした器具を他のものに換えることを躊躇しがちです。しかし、その手術に特化した器具を短期間で製作できれば、執刀医は施術中に使用する器具がその手術のためだけに特別に作られたものなのだという確信を持って、安心して手術に全力を尽くすことができるようになります。3Dデザインと3Dプリントによって、restor3dは外科医からの要望に応え、製品開発期間の短縮も行っているのです。
restor3dの製品開発統括責任者であるNathan Evans氏は、新たなBioMed Durableレジンについて、「私たちは常に最高の3Dプリンタと最高の材料を求めています」と話します。これは、カッティングガイドやドリルガイド等、多くの様々な用途が考えられますが、特に半透明である程度シースルーになる点は非常に便利です。例えば、K-ワイヤやドリルビットなどの位置を正確に把握できるからです。」
執刀医が施術箇所を簡単に確認できる視覚的な利点は、より自信を持った施術につながりますが、それに加えて新材料の破損しにくいという特徴は非常に重要です。我々restor3Dは、手荒に扱われたり海外輸送にも耐えられるよう、器具の耐久性を確保する必要があるからです。
"また、機械的特性に優れている点も重要です。実はこれは製造室で撮ったもので、ハンマーでひたすら叩いていたんです。わからないでしょう?衝撃に極めて強いので、どちら側を叩いたかわからなくなってしまうほどです。それだけ医療機器や手術用器具に求められる多くのニーズを満たしているのです。」
Nathan Evans氏 restor3D 製品開発統括責任者
BioMed Durableレジンの使用方法
BioMed Durableレジンは、FormlabsのForm 3B+およびForm 3BLで使用でき、効率的で使いやすい作業手順でご使用いただけます。この新材料は、手術計画のサービス提供会社から院内に3Dプリントラボを持つ医療機関まで幅広いユーザーに、すべてのプロセスを首尾一貫して生体適合性材料を用いて行え、輸送や手荒な扱いで破損しない耐久性を持った器具なのだという自信を与えてくれます。
Formlabsのソフトウェア、PreFormは、STL形式、OBJ形式、そして3MF形式であればすべてのファイルに対応しており、どのソフトウェアでデザインを行っても問題にはなりません。MaterialiseからSolidworksまで、どの医療用またはエンジニアリング用ソフトウェアで作られたファイルでも簡単に3Dプリント設定が行えます。
高い耐久性を備えた生体適合性3Dプリント品に関心があるお客様は、是非お問合せください。また、この新材料の強度や柔軟性を実際に確認されたい場合は、無償サンプルをお申込ください。