アクシス、SLS 3Dプリンター「Fuse 1+ 30W」で車種別アフターパーツを量産

アクシス、SLS 3Dプリンター「Fuse 1+ 30W」で車種別アフターパーツを量産―開発期間を6か月から1か月に短縮―

車のインテリアパネルやスマートフォンホルダーなど、アフターマーケット向けカスタムパーツを手がけるアクシス。

ECサイトでの販売を主軸とする同社にとって、新車発売に合わせた製品投入のスピードは競争力の源泉となっている。2025年4月にFormlabsのSLS 3Dプリンター「Fuse 1+ 30W」を導入した同社は、試作から量産までを一貫して社内で完結させる体制を構築。金型不要の製造プロセスにより、開発期間を従来の6か月から約1か月へと大幅に短縮した。

代表取締役の入江秀行氏に、3Dプリンターを活用した製品開発と量産の取り組みについて話を聞いた。なお、同社が使用するFuse 1+ 30Wをはじめとする機器は、Formlabs正規販売代理店のBRULEから導入している。

Axis 3D Printed Part

Fuse 1+ 30Wで造形した車種別スマートフォンホルダー。赤いアクシスのロゴエンブレムを装着し、染色による仕上げを施している。車種ごとにダッシュボードの形状に合わせた専用設計となっている。

創業17年、車好きに「満足」を届けるアフターパーツメーカー

アクシスは東京都練馬区に本社を構え、車およびバイク向けアフターパーツの設計から開発、製造、販売までを一貫して手がけるメーカーで、2009年の創業以来、車好きに向けた製品を作り続けてきた。パートタイムスタッフを含む約30人の社員のうち、2名のエンジニアと1名のモデラーが製品開発の中核を担う。

主力製品は車用品のアフターパーツで、トヨタ、ホンダ、マツダ、スバル、日産など国内主要メーカーのスポーツタイプ車両を中心に、シフトパネルカバーやドアハンドルカバーといったインテリアパーツ、LED製品、ドライカーボンパーツなどを展開している。近年はアウトドア用品にも製品ラインを広げ、「A-TRAS」ブランドでタクティカルラックシステムなどを販売している。

Axis Parts Car Display
Axis Parts Car Trunk

Tokyo Auto Salon 2026に出展した際のブース。アクシスが手掛けるカスタムパーツの使用例が紹介された。

「世界の車好きに自分たちの『満足』を提供し続けることを目標にしています」と入江氏は語る。同社の製品はすべてECサイトを通じて販売されており、国内の大手オンラインモールで車種専用のカスタムパーツを購入できる。新車が発売されるとそれに対応したカスタムパーツをいち早く市場に投入することが求められる。このスピード感こそが、アフターパーツ市場で競争優位を築くための生命線となっている。

ECサイトでの販売という特性上、顧客は全国に広がっている。北海道から沖縄まで、車好きのユーザーが同社の製品を購入している。対面での販売ではないため、製品の品質と迅速な対応が信頼を築く上で重要な要素となる。

金型不要、翌日には試作品を確認できるワークフロー

アクシスが3Dプリンターを本格的に活用し始めたのは2025年4月からのこと。現在はFormlabsのSLS(粉末焼結積層造形)3Dプリンター「Fuse 1+ 30W」を2台導入し、後処理装置として「Fuse Sift」1台と「Fuse Blast」1台を組み合わせて運用している。以前はFFF方式(熱融解積層方式)3Dプリンターを試作用途で使用していたが、SLS方式の精度の高さを評価してFuseシリーズへの移行を決めた。

「FDMとSLSでは造形方式がまったく異なるので単純比較はできませんが、SLSはやはり精度が高く、ほぼ図面通りに仕上がります」と入江氏は評価する。

Fuse 1+ 30W 3D Printer at Axis

アクシスの造形室に設置されたFuse 1+ 30W。2台体制で毎日の量産に対応している。床にはカーペットを敷き、毎日の清掃を徹底することで粉末の飛散を管理している。

製品開発のワークフローは、まず3Dスキャナーを使って対象となる車両やパネルをスキャンするところから始まる。ハンドヘルド型の3Dスキャナーは、車内の複雑な形状も高精度に取得できるため、取得した3Dデータをもとにリバースエンジニアリングを行い、CADソフトウェアで設計した後、STLデータに変換してFuse 1+ 30Wで造形する。3DモデリングはすべてCADを扱うエンジニアが社内で担当しており、外注に頼らない体制を構築している。

「今までは開発から試作品を作るのに、試作専門の企業に依頼したり、金型を起こしたりしていました。それが今では自社で翌日には試作品を確認できる。量産に入るまでのスピードも格段に上がりました」

アクシス代表取締役、入江 秀行 氏

入江氏が強調するのは、このスピードがもたらすトライアンドエラーの効率化である。設計チームとの連携もスムーズになり、量産前に起こりうる問題点を早期に発見して解決できるようになった。3Dスキャンを実施した当日中にモックアップを造形し、形状やデザインを確認。翌日には2次試作、翌々日には3次試作というペースで、毎日リバースエンジニアリングベースの試作を繰り返すことで短期間に製品設計を仕上げている。

従来の金型を使った製造プロセスでは、試作品の確認に数週間を要することも珍しくなかった。設計変更が必要になれば、その都度金型の修正や新規製作が必要となり、時間とコストがかさむ。3Dプリンターの導入により、この反復プロセスが劇的に短縮された。

毎日2台を回して量産品を生産

アクシスでは2台のFuse 1+ 30Wを量産用途で運用している。基本的に1日1回のサイクルで2台を同時に稼働させ、1台あたり製品のサイズにもよるが20〜30点程度を造形している。2台体制にしているのは生産量を確保するためだけでなく、1台で試作を進めながら別の1台で量産を続けるという使い分けや、万が一の故障時にも生産を継続できるバックアップとしての意味合いもある。

「基本はもう量産用で使っていますので、1日に2台を1回ずつ回している形になります。1台は試作を作って、別の1台では量産をするという形で運用できます。もし故障した場合でも、もう1台が動けるようにという意味も含めて2台体制にしています」

Fuse 1+30W 3D printer at Axis
Fuse Blast at Axis

造形後のパーツからパウダーを除去するFuse Blast(上の写真)。バレル式の自動粉落とし機能により、後処理の作業効率が大幅に向上した。以前使用していた他社製のブラスターと比較して、作業時間を短縮できている。

使用している材料はNylon 12(PA12)パウダーで、導入当初はガラス繊維入りのPA12 GFでスタートしたが、リサイクルパウダーと新品パウダーの配合比率の管理が難しかったことから、BRULEのアドバイスを受けてPA12に移行した。ステーなど90℃程度の耐熱性が求められる製品への対応も視野に入れていたが、リサイクル率を重視する観点からPA12での運用に落ち着いた。FormlabsとしてもSLS 3Dプリンターを初めて導入するユーザーには、最も汎用性の高いPA12でのスタートを推奨している。

造形時間についても改善が進んでいる。導入当初はビルドチャンバーの限界近くまで造形することで約20時間を要していたが、FormlabsがリリースするPreFormソフトウェアのアップデートにより、現在は約13時間まで短縮された。PreForm 3.34.0のリリースでは、レーザーの走査パターンの効率性を改善することで造形速度が向上している。レーザーが最上層全体を横断するような移動パターンに変更し、最終的な断面の形状に合わせて粒子を焼結できるようになったことで、直近のアップデート比で25%の造形速度向上を達成した。この時間短縮により、造形13時間とクールダウン3時間を合わせた約16時間のサイクルで1日1回の造形を安定して回せるようになった。

「想像以上に丈夫で、そこは期待以上でした」と入江氏は機器の信頼性を評価する。造形室の床にはカーペットを敷き、毎日の清掃を徹底することで粉末の飛散を管理。消耗品を適宜交換することで、2台を問題なく運用できているという。

車種別スマートフォンホルダーとラックシステム用パーツ

Fuse 1+ 30Wで量産している主力製品の一つが、車種別にカスタマイズされたスマートフォンホルダーである。トヨタのシエンタ、GRカローラ、クラウンセダン、カローラクロス、ランドクルーザー、ヤリス、プリウス、ハリアー、RAV4、ホンダのプレリュード、ステップワゴン、オデッセイ、ZR-V、N-BOX、WR-V、シビック、マツダのロードスター、MAZDA3 BP、CX-60、ロードスターND、スバルのフォレスター、WRX S4、クロストレック、日産のセレナなど、幅広い車種に対応した製品を展開している。

Axis 3D Printed Phone Holder

 実際の車両に取り付けたスマートフォンホルダー。車種ごとのダッシュボード形状に合わせた専用設計により、しっかりと固定される。運転中の視認性と操作性を両立した位置に設置できる。

造形後の製品にはいくつかの後加工を施している。同社のロゴが入った赤いエンブレムを装着し、染色による着色を施す。赤色の製品ロゴとの組み合わせは商品イメージとして力を入れてデザインしている部分だと入江氏は説明する。スマートフォンホルダーの場合、ゴム製のオーリングと組み合わせることでスムーズな可動を実現している。

「3Dプリンター品をお客様の手元にお届けしているので、表面処理には気を使っています。プリンターで造形すると灰色のような色味になりますが、手に取ったときに『これは3Dプリント品だ』と思わせない仕上がりを目指して、材料と組み合わせながら作り込んでいます」

要求される精度は0.2mm程度で、SLS造形では若干痩せて出てくる傾向があるため、その分を見込んで設計している。はめ合いの部分はテーパーの付け具合などで調整していくため、PreFormの設定を細かくいじることはせず、Formlabs純正の設定のまま造形している。

造形品の染色には紫外線に弱くなるという課題があるが、表面処理の工夫でカバーしており、入江氏は「メーカーとしての腕の見せ所」と語る。3Dプリント造形品としては、浸漬すれば数時間で染まる扱いやすさを評価している。

3D Printed SLS Part

「A-TRAS タクティカルラックシステム専用アルミ製マルチフック」に使用するコネクターパーツ。削り出したアルミ部品とネジで固定して使用する。耐荷重性が求められる用途で、SLS造形品の強度特性を活かしている。

もう一つの主力製品がアウトドア用品ブランド「A-TRAS」のタクティカルラックシステム用アルミ製マルチフック向けコネクターである。削り出したアルミ部品をネジで固定してフックとして使用するため、丈夫さに加えて耐荷重性も求められる用途で、SLS造形品の強度特性を活かしている。

Axis 3D Printed Part

実際の車両に取り付けたA-TRASタクティカルラックシステム。アウトドアや車中泊での荷物整理に活用できる。フックやホルダーを自由にカスタマイズできる拡張性が特長となっている。

開発期間6か月を1か月に、金型代も不要に

3Dプリンター導入による最大の成果は、開発期間の大幅な短縮である。従来の射出成形による製造プロセスでは、開発から量産開始まで約6か月を要していた。金型の設計と製作に時間がかかるうえ、形状の変更が必要になれば金型を作り直す必要がある。これがFuse 1+ 30Wの導入により約1か月まで短縮された。

「金型を起こすと量産まで1〜2か月はかかります。それが3Dプリンターなら翌日には製品を確認できるようになります。翌日にはデータを追加修正して、その翌日には造形できる。その繰り返しができるのが一番大きなメリットかなと思います」

アクシス代表取締役、入江 秀行 氏

コスト面でも効果が出ている。射出成形の場合、小物部品でも金型代として最低100万円程度が必要となる。3Dプリンターによる製造ではこの金型代が不要となり、試作費用も大幅に削減できた。同社では材料コストを「製品重量(g)×1.2(パウダーが20%残る想定)×パウダー単価(同社の場合は1gあたり13円で計算)」という計算式で算出しており、これに電気代と人件費を加えて製品コストを管理している。

ただし、入江氏は生産数量によるコスト構造の違いも冷静に分析している。「数量が300個以上になった場合は射出成形の方がコストも抑えられます」。3Dプリンターによる製造は、多品種少量生産や頻繁な設計変更が求められる製品開発において真価を発揮する。車種ごとに異なる形状が求められるアフターパーツは、まさにこの特性に合致した製品カテゴリーといえる。

設計の自由度も大きなメリットとして挙げられる。樹脂を型で製造する場合は抜き勾配などの制約が生じるが、3Dプリンターではそうした制限から解放される。

「一番大事なのは自由な設計で造形できること。型で製造すると抜けの問題もあっていろいろ制約が出てきてしまいますが、3Dプリンターだとそこから解放されて短期間で設計、試作、製造ができます」

アクシス代表取締役、入江 秀行 氏

顧客対応の面でも効果が表れている。従来は顧客から製品の改善要望を受けても、金型の修正や再製作に時間とコストがかかるため、迅速な対応が難しかった。3Dプリンターの導入により、設計に問題があった場合や顧客からの指摘にもすぐに対応できるようになった。ECサイトでの販売では顧客からのフィードバックが直接届くため、この対応スピードは顧客満足度に直結する重要な要素となっている。

量産品として販売する企業は業界でも稀

入江氏によると、アフターパーツ業界において3Dプリンターで造形した製品を量産品として顧客に販売している企業は、同業界ではほとんど見かけないという。多くの企業が3Dプリンターを試作用途にとどめている中、アクシスは量産工程にまで踏み込んで活用している点で先行している。

「量産品としてお客様に販売している企業はあまり見かけません。車のアフターパーツ業界の中では、3Dプリンターを量産に使っていることは、当社の強みになっていると思います」

アクシス代表取締役、入江 秀行 氏

この優位性を支えているのが、BRULEによるサポート体制である。導入時の材料選定に関するアドバイスから、Fuse Blastの不調が発生した際の対応まで、継続的なサポートを受けている。「十分満足しています。問題が起きることがゼロではないので、そのときの対応は電話すれば対応してもらえますし、安心感があります」と入江氏は評価する。

量産に3Dプリンターを活用する上での課題として入江氏が挙げるのは、後処理工程における人手の問題である。粉落としやブラスト処理など、造形後の工程には人の手がかかる。「そこから量産品に持っていくまでのプロセスの中で、どうしても人の手がかかるので、最初は流れを作るのに苦労しました」。現在は工程の標準化を進め、安定した量産体制を確立している。後処理も染色もすべて社内で完結させる体制を構築したことで、外注に依存しない機動的な生産が可能となった。

4台体制への増設を計画、業界のパイオニアを目指す

今後についてアクシスでは、Fuse 1+ 30Wをさらに増設する計画がある。

「更に増やしてフルに回していきたい。ここまでやってきているので、さらにこの業界でデータを使った商品開発でも、パイオニアとは言わないですけど、先行してうまくいければいいなと思っています」

入江氏は3Dプリンターの活用について、ECビジネスとの親和性の高さを強調する。「ECサイトの場合は本当にスピード感が勝負で、新しい車が出たときにそれに付随する商品をすぐ出せるか出せないかで決まってきます。そこは3Dプリンターがあると自分がやりたいことを達成できると思います」

アフターパーツ業界における3Dプリンター活用の可能性について、入江氏は「基本的に大きくは変わっていませんが、3Dプリンターの導入によって開発と生産のスピードが飛躍的に速くなると思います」と展望を語る。毎日の造形サイクルを回せるだけのヒット商品があれば、複数台導入のメリットは大きい。

金型レスで設計の自由度と開発スピードを両立し、精度と強度を兼ね備えたFuse 1+ 30Wは、アクシスのようなECを主軸とするアフターパーツメーカーにとって、競争力を支える重要な製造設備となっている。