SLS 3Dプリントで食品配達ロボットの量産をわずか6ヶ月で実現

香港を拠点に製品設計・開発・製造を行うSavewoは、香港でコロナ禍の救援活動に使う医療器具を製造するべく、2020年に設立されました。設立からわずか3年で、Savewoは香港を拠点にロボティクスや医療機器などの分野で活動する企業から最も信頼される、人気の製造・開発パートナーの1つになりました。

Savewoでは、伝統的な製造技術と近代的な製造技術を組み合わせることで、顧客が設計から量産へとスムーズに移行できるようサポートしています。最近、同社はRice Roboticsと提携しわずか6ヶ月という期間で1つの試作品から何百台ものロボットの量産に成功しました。このロボットには、3Dプリント性の実製品用部品が何千点も搭載されています。

Savewoは、複数台のFuse 1+ 30W SLS(粉末焼結積層造形)方式3Dプリンタと後処理装置Fuse Siftを活用することで、これを実現しました。SLS 3Dプリントを導入することで、設計サイクルの効率化、設計の自由度の向上、厳しい公差や精度要件にも対応できる高品質な部品を製作できるほか、Nylon 12パウダーの優れた機械特性も活かすことができます。 技術的に高度な製品でも量産が可能だということを証明したことで、同社は競合他社を一歩リードし、今後の規模拡大も視野に入れています。

SLSで3Dプリントした実製品用部品
各種資料

SLSを実製品の量産に活用

実製品の量産工程への3Dプリント導入は今や単に実現可能となっただけでなく、SLS Fuseシリーズを活用することでこれまでより安価かつ迅速に、そして規模の拡大にも柔軟に対応できます。量産工程におけるSLS活用事例ページにて、量産方法の比較、パウダー材料のボリュームディスカウントの詳細、現在Fuseシリーズを実際に量産工程に取り入れているメーカー15社の事例をご覧ください。

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生産の課題をチャンスに変える

Rice Roboticsのロボット「RICE」

Rice Roboticsは、わずか6ヶ月という短期間で不可能を可能にできるパートナーを探していた。

Rice Roboticsも香港を拠点とする企業で、食品配送、消毒、検査などの分野で使用するロボットを設計・製造しています。これまで革新的なデザインを小規模で展開してきた同社ですが、自律走行型の屋内配送ロボット「RICE」の量産を検討し始めた時、課題に直面しました。

以前提携していた大手委託メーカーとは、品質管理やコミュニケーションの問題、設計と最終的な成形品に差異があるなどさまざまな問題が発生し、これをきっかけにRice Roboticsは香港を拠点とするパートナーを探し始めました。ただ1つ、問題があります。この段階で残された時間はわずかしかなく、新しく提携するメーカーには設計から量産まで6ヶ月しか与えることができません。

SLS 3Dプリント:6ヶ月という要件を満たす救世主

製品の設計から製造までわずか半年という要件から、従来の製品開発工程では対応できないと判断したSavewoは、設計・検証の反復サイクルから機能試験、最終的にロボットに搭載する実製品用部品の製造に至るまで、開発・製造のあらゆる工程で複数台のFuseシリーズSLS 3Dプリンタを活用することにしました。

開発スピード

多くのロボット企業、特に成形メーカーが数多く存在し非常に安価な製作が可能な香港や中国本土を拠点とする企業では、反復的な開発であっても、金型や射出成形による試作品製作を選ぶ方が妥当です。しかし、Savewoは今回のような短期間での開発には3Dプリントしかないと考えていました。4台のFuse 1+ 30Wプリンタがあれば、24時間365日いつでもプリントできます。

「従来の製造方法では、どうしても時間がかかります。Fuse 1+ 30Wを使えば部品を直接3Dプリントできますし、変更が必要な場合はすぐにデザインを変更してプリントし直すこともできます。これによって開発工程全体が大幅にスピードアップし、3Dプリント製の部品をロボットに搭載した状態での検証も可能になります」

Savewo R&Dエンジニア、Feng氏

設計の自由度

Savewoが設計した複雑な部品

実製品用部品を3Dプリントで製作することで、従来の製造方法ではコスト効率が悪くなる複雑な部品も設計が可能に。

Savewoが設計した複雑な部品

Savewoが今回の挑戦にSLS 3Dプリントを選んでからというもの、まったく新しい可能性が広がりました。FuseシリーズSLS 3Dプリンタでは、造形中は未焼結パウダーが造形品を支えるため、突出部やアンダーカットのある部品、内部に溝のある構造など、従来の製造方法では高額かつ実現が困難な特徴を備えた部品も製作できます。

こうした複雑形状の部品を3Dプリントすることで、設計の変更も一晩で反映できたほか、革新的で有機的なデザインを採用してロボットの部品が担う範囲や機能性の拡大にも成功しました。「従来の製造方法では低コストの製作が難しい設計も、SLS 3Dプリントのおかげで簡単かつ正確に製作できました」と言うのは、SavewoのR&Dシニアメカニカルエンジニア、Zhong氏です。

工程全体で求められる厳しい公差と制御

SLS方式3Dプリント

部品をSLS 3Dプリントで製作することで、部品の位置調整や公差管理がこれまでより簡単に。

Rice Roboticsが以前の受託メーカーと取引をしていた時に大きな問題となったことの1つは、設計、試作品、ベータ品、実製品用の成形品で設計にズレが生じることでした。メーカーから明確な情報が得られなかったこと、そして各工程で異なる製造法が使用されていたことで、各工程で作る部品の寸法精度にばらつきが出ていました。さらに、射出成形時に発生する熱や処理時間、膨張などを考慮し、設計工程全体を通して微小な変更が行われるため、意図した設計と最終的に出来上がる部品に差異が生じてしまっていたのです。

小規模で明確かつオープンなコミュニケーション構造を持つSavewoとの提携では、Rice Roboticsのエンジニアたちが希望をしっかりと伝え、3Dプリンタでの製作にも必要なだけ関与することができました。Rice RoboticsがFuseプリンタでの製作を直接確認できたことで、アディティブマニュファクチャリング用に部品の設計を変える時もスムーズな設計変更が可能でした。さらに、金型の設計を考慮する必要がないため、3Dプリントによる試作品製作から実製品用部品の製作に至るまで、どの工程でも一貫性のある設計を保つことができました。

Nylon 12パウダーを使った実製品用部品の製作

丈夫で耐久性がありながら、わずかに柔軟性を備えた部品を製作できるNylon 12パウダーは、部品が摩擦や反動に常にさらされるロボット用途に最適な材料。

多くの部品が、Fuseシリーズのプリンタで実製品用部品として製作されます。Nylon 12パウダーで作る部品は強度と耐久性に優れ、ロボットのように過酷な環境での使用が想定される用途に最適です。ナイロンはエンジニアにとっても馴染みのある材料で、材料特性もよく知られています。Rice Roboticsにとっては、Savewoが量産能力のある企業であるという信頼が増しただけでなく、最終的なナイロン部品が射出成形品と同じように動作する、という確信を持つに至りました。

ロボティクス分野では、複数部品をジョイントやヒンジで結合した機能アセンブリが多く必要とされています。3Dプリントはこれまで、繰り返しの引張や圧力、トルク、摩擦に耐えられる部品の製作には必ずしも最適な方法ではありませんでしたが、SLSプリント製の部品ならこの用途でも十分に活用できます。Fuse 1+ 30WにてNylon 12パウダーで部品を製作する場合、予めねじ山をつけた状態でのプリントや、ヒートヘリサートのねじ山でタップ加工することも可能です。

Savewoは、大量の複数部品を組み合わせたアセンブリを製作したことで、製造方法と材料の万能性を証明しました。「Nylon 12パウダーは、十分な硬度と靭性、優れた機械的特性を備えています。私たちが作る3Dプリント製部品のほとんどには、ねじ山があります。Nylon 12パウダーを使って部品を直接プリントすれば、ねじを何度も締めたり緩めたりする必要がありません」とSavewoのR&Dディレクター、Chen氏は言います。

屋内食品配送ロボットRICE 2に搭載されている部品のうち、骨格とシェルを接続するコネクタをFuse 1+ 30Wで3Dプリントしました。このコネクタは、ロボットが「歩行」する際に発生する絶え間ない振動に耐え、骨格とシェルを安定させる役割を果たします。Nylon 12パウダーが持つ柔軟性は、この種の安定化を担う部品に最適です。RICE 2に搭載されているSLS 3Dプリント製部品は他にも、アトマイザーモジュール(PCB全体、リーフファン、ジョイントバックル)、空気排出口、中央処理装置(CPU)と衝撃吸収装置の固定具があります。

SLS方式3Dプリント

ロボットの外側のシェルに使う部品もFuseシリーズにてNylon 12パウダーでプリントし、検証により圧力や衝撃、一般的な磨耗に耐えられることが実証された。

開発を継続しながら週に50台のロボットを製造

Savewoの自社工場には4台のFuse 1+ 30W SLS 3Dプリンタと後処理装置のFuse Siftが1台設置されており、RICE 2ロボットを毎週50台製造できるだけの実製品用部品を製作しています。さらに、Fuse 1+ 30Wで部品を3Dプリントすることで、成形用の高価な金型を作り直す必要がなく、開発を継続しながら常に最良の設計を模索できます。

従来の工場の様式に則って射出成形で量産をしていた場合、スケジューリング、試験、微調整、その他の工程が発生し、各部品の製造と設計変更が発生するたびに製作期間としてそれぞれ45~60日はかかっていたでしょう。このプロジェクトでは、長期に渡る製作期間と高額なコストは受け入れ難いリスクになります。

Savewoのエンジニアはまず、製品の確実な要素と不確実な要素を分類しました。RICE 2の中でも確実性の高い大型部品については成形型を設計して従来の射出成形で作ることにし、一方で開発の過程で複数回の変更が発生すると見込まれる、不確実性の高い部品には3Dプリントを使用することにしました。

4台のFuseシリーズSLS 3Dプリンタをノンストップで稼働させることで、Savewoは部品の再設計が発生しても週に50台のロボットを納品できるように。

小さな島から、大きな変化を

小型部品を何百点も製造するため、Fuseシリーズの3Dプリンタをノンストップで稼働させている。

不動産が決して安くはない香港ですが、新たなビルやビジネスが立ち上がることはあっても、なくなることはありません。Fuseシリーズ3Dプリンタのサイズやスケールがあれば、Savewoが今後生産規模を拡大する場合でも、設備を大幅に変更したり、より広い場所を確保するための投資が必要ありません。同社は1台目のプリンタを購入してすぐに、追加で3台導入して生産量を増やしました。現在では4台のFuse 1+ 30Wプリンタと1台のFuse Siftを稼働させている同社は、研究開発チームと製造チームが設計工程の各段階を迅速かつ効率的に進められるようになりました。

RICE 2ロボットの設計見直しから実製品用部品の量産までをわずかな時間で実現したことで、Savewo自身がハイブリッド製造の実用性を確信しただけでなく、香港を拠点とする革新的な企業に対して同社の価値を決定づけることができました。「Savewoが香港のイノベーションとテクノロジーの発祥地となり、香港のインダストリー4.0を促進する存在になりたいと思っています。ゆくゆくは、Savewoをきっかけに香港のビジネスが再び海外で名を馳せるようになることを願っています」と、SavewoのCEO、Ding氏は言います。

Fuse 1+ 30Wプリンタがあれば、小さな企業でも大きな変化を生み出すことができます。手頃な価格のSLS 3Dプリンタは、誰にでも使いやすい作業手順と馴染みのある確立された材料ライブラリ、そして射出成形品に匹敵する公差と精度を実現します。Savewoは、Fuseシリーズのスケーラビリティを十分に活用し、激戦市場での成功を手にしています。

Fuseシリーズに関する詳細、またはお客様の用途に応じた製品開発・製造工程でのSLS 3Dプリントの活用方法については、Formlabsのスペシャリストまでお気軽にお問い合わせください。

Fuse 1+ 30Wの詳細