大型モデルの迅速な製作が求められるポイントオブケアの現場において、3Dプリンタはそのスピードについていけるものでなくてはなりません。アメリカのミズーリ州にあるSt. Louis Children’s Hospital(セントルイス小児病院)で3Dプリントエンジニアを務めるBrian Albers氏は、整形外科や頭蓋顎顔面外科向けに、チタン製の事前曲げプレートなどを含む、解剖学モデルやサージカルガイドなどをFormlabsプリンタで3Dプリントしています。
臨床現場における需要は不規則なことから、「すべての依頼に対応できるよう、適切なプロセスを持っておく必要がある」とAlbers氏は言います。臨床現場では、急な製作依頼や大型の解剖学モデル、細部とディテールを高度に表現したモデル、手術室で使用するために滅菌が必要なものなど、ニーズも多岐にわたります。
「かなりの部分をFormlabsのプリンタに頼っています。コストを抑えるという点でも優れていますし、プロセスが高速で高効率なこともプラスです。解剖学モデルの製作も、手作業での後処理がほとんど必要ありません。ちょうど先月、ラボの創設以来毎月製作してきたモデルの生産数が、ほぼ2倍になったんですよ」
セントルイス小児病院 3Dプリントエンジニア、Brian Albers氏
Albers氏が使用するのは、Form 3L SLA光造形3Dプリンタ 1台、生体適合性プリントに対応したForm 3BL 1台、Form 3B 3台、Form Auto 1台、そしてSLS 3DプリンタのFuse 1が1台です。しかし、造形速度と造形サイズがさらに向上したForm 4BLでは、これまでになく直前の製作依頼への対応性が上がり、削減できる時間量も増えたと言います。
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患者様一人ひとりに合った手術器具や心臓補助装置のプロトタイプなど、医療用途での造形に関するご相談をいつでも受け付けております。Formlabs Medicalチームは専門のスペシャリスト集団として、お客様や企業のニーズを的確にサポートします。
急な大型品の依頼もForm 4BLで対応
「Form 4BLの造形速度には驚きました。これまでは時間がなくて対応できなかったような依頼にも応えることができていますし、何より安定感が抜群です。プリントをレンダリングして推定所要時間を確認したらわずか1時間26分と表示されていて、正直バグではないかと思いました。実際に造形が完了するまで、その数字を信じられませんでしたね」
セントルイス小児病院 3Dプリントエンジニア、Brian Albers氏
通常、解剖学モデルの注文は2週間の製作期間が前提です。その時間には、放射線科医がスキャンを確認して承認する時間や、必要に応じて再プリントするための時間が含まれています。しかし、Form 4BLが届いてからわずか一週間以内に、Albers氏は緊急の製作依頼を受けました。通常であれば造形に20時間かかるモデルですが、手術までの日数は2日しかありません。
「他の3Dプリンタの場合、脊椎の解剖学モデルの造形には20時間ほどかかるので、術前計画までにモデルを間に合わせることができません。ところがForm 4BLでFast Modelレジンを使って造形したところ、わずか1時間半で完成し、同日に納品することができました。あのスピードがなければ、希望の納期に間に合わせることはできなかったでしょう」
セントルイス小児病院 3Dプリントエンジニア、Brian Albers氏
その後も、脊椎への予定外の外科的介入処置などで追加の緊急依頼が入りました。祝日と重なる週末が迫っていたことから、翌日にモデルが必要になったのです。成人の脊椎の場合、サイズによっては造形時間を短縮するために3個以上のパーツに分けて複数回のプリントが必要になることもあります。しかし、Form 4BLのサイズとFast Modelレジンのスピードにより、Albers氏はこの脊椎モデルをたった2個のパーツに分けるだけで済み、プリント回数は1回のみ、2時間以内に完成させて翌日に納品ができたと言います。
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精細なディテールと強度を同時に実現
乳房再建術の一種であり、脂肪移植を伴う深下腹壁動脈穿通枝皮弁法もまた、スケジュールの頻繁な変更によって迅速なモデル製作が求められます。これらのモデルは腹部、特にそこで皮下脂肪に血液を供給する血管を再現し、外科医が乳房再建のために脂肪を採取する場所をマッピングできるようにします。腹部から移植する脂肪に血管があると、成功する確率が高まるためです。
こういったモデルは、細部にわたる非常に細かな表現が必要です。Albers氏はこう言います。「Form 4BLは細かなディテールもきちんと再現してくれます。深下腹壁動脈穿通枝皮弁のごく小さな箇所も、大型モデルと同じように安定して造形できます。FormlabsのSLA光造形プリンタ以外で、こういうプリントができるものはありませんね。PolyJetは非常に高額な割に、造形品からサポート材を取り外す時にとても脆いんです」
BioMed Clearレジンは、生体適合性や滅菌が求められる用途にも使用できるため、プリントしたモデルを手術室に持ち込み、術中に参照することもできます。手術前にのみ使用する場合は、Rigid 4000レジンやFast Modelレジンが使用できます。Fast ModelレジンはFormlabsの中でも最速で造形可能な材料で、急な依頼への対応時には特に重宝します。
これらのモデルでは、表面品質も大切です。特に滅菌処理が行われるモデルの場合、尖った箇所があると作業者の手袋を破ってしまう可能性があるためです。Form 4BLで造形するモデルは表面が非常に滑らかに仕上がり、ライトタッチサポートでサポート材を簡単に取り外せるため後処理も少なく済みます。さらに、PreFormの造形設定のカスタマイズ機能により、Albers氏はサポート材の設定を微調整し、今後も繰り返し使用できるようその設定を保存しておくことができます。
BioMedレジンのサンプルパーツ
BioMedレジンのサンプル品にはエンボス・デボス加工が施され、カットアウトの厚みは0.5~2.0mmと、細部の仕上がりをご確認いただけます。また、本レジン固有の規制関連情報も付属しています。
コストパフォーマンスの高い大型モデルを高速で届ける
Formlabsのデスクトップサイズの3Dプリンタで骨盤や成人の脊椎などの大型の解剖学モデルをプリントする場合、複数のパーツに分けての造形が必要です。Albers氏はForm Autoを活用することで、複数パーツのプリントキューを夜のうちに処理し、翌朝組み立てられるようにしています。それが今は、Form 4BLの造形サイズとスピードにより、骨盤モデルも脊椎の全部位も、たった1回のプリントで完成するようになりました。プリントの回数も時間も減ったことで、夜間のプリントが必要なくなることも増えたと言います。
Albers氏はさらに、Form 4BLの特徴として、大型モデルの製作期間が削減できるだけでなく、他のプリンタと比べてコストパフォーマンスが高いことにも気がつきました。
「例えばこの脊椎モデルですが、PolyJetでプリントしたときはレジンだけで$1600でした。それがFormlabsのプリンタだと、脊椎1本あたり材料だけで$80にまで削減できたんです」
セントルイス小児病院 3Dプリントエンジニア、Brian Albers氏
材料費だけでも20倍のコスト削減となり、大型モデルを効率良く、高いコストパフォーマンスで製作できるようになります。
大容量プリントをポイントオブケアで活用
「Form 4BLの限界を試すような使い方をしてきたのですが、これまで造形に失敗したことは一度もありません。高負荷下での安定性は目を見張るものがあります」
セントルイス小児病院 3Dプリントエンジニア、Brian Albers氏
Form 4BLの大容量造形サイズと驚きのスピードで、Albers氏は大型モデルや緊急の製作依頼だけでなく、複数の小型モデルのプリントにも対応できるようになりました。Albers氏は、Form 4BLがあれば、将来的にバッチ生産ができるようになり、日中に連続稼働させることで夜間のプリントが必要なくなると見込んでいます。
Form 4BLの詳細については、以下のリンクから製品情報をご確認いただくか、ウェビナーをご覧ください。その他ご質問については、Formlabsまでお気軽にお問い合わせください。Form 4BLをお客様の用途に組み込み、事業目標を達成する方法についてお話ししましょう。