業界を牽引するSkydioの自立飛行ドローン製作をFormlabs製品で支援

炎の上を飛ぶSkydioのドローン

Skydioが展開する無人航空機システムの製品ラインは、エネルギー公共事業から災害対応など、さまざまな業界の専門家たちに信頼されている。写真提供:Skydio

世界中のメーカーが人工知能の普及に向けて適応・対応方法を模索する中、AI搭載システムの基準を打ち立てたドローン企業があります。それが、米国の大手ドローンメーカーであり自立飛行製品の世界的リーダーでもあるSkydioです。同社の無人航空機システム(UAS)と新たに展開した航空機ドック製品ラインは、エネルギー公共事業輸送公共安全環境調査など様々な業界に新たな可能性をもたらしています。

Skydioのエンジニアリングおよび設計チームは、製品開発段階の試作品製作にFormlabsのSLA光造形3DプリンタForm 3+を活用し、最終的な製造用の設計に可能な限り近づけた試作品を製作しています。Form 3+プリンタではFormlabsが提供する豊富な材料を使用し、機能確認用試作から治具固定具まで、あらゆるものを製作できます。Skydioでは、Skydio 2+、そして大企業や防衛を目的としたヘビーデューティ用のSkydio X2という2種類のドローンを提供しています。また、Skydio Dockという革新的な新製品も発表しました。これは、ドローンを遠方の現場に配備し、人間による操作や監視なしに情報を送信できるようにする製品です。

同社のシニアハードウェア開発スペシャリストのEric Weinhoffer氏に、設計から製造に至るまでの工程、そしてSkydioの高度なソフトウェア開発にハードウェアチームが遅れずについていくために3Dプリントがどう役に立っているのかを教えていただきました。

Skydioが他社と一線を画す理由

ドローン産業の黎明期には、無人航空機(UAV)とも呼ばれるUASはまだ遠隔操縦が必要でした。接続の信頼性を維持するためにも、パイロットは物理的にドローンの近くにいなければならず、ドローンの操縦可能範囲と効果は今よりも制限されていました。しかしここ数年でドローン企業が自社製品にある程度の自律性を搭載するようになったことで、新しい使用事例が生まれ、ドローンによってより多くの情報を収集できるようになりました。

Skydioはまずソフトウェア開発に重点を置き、完全自律飛行システムを導入したことで、競合他社と一線を画す存在になっています。「これまで、ドローンの操縦には多くのスキルが必要でした。従来のドローンは頻繁に墜落したり、映像が貧弱だったりしましたが、私たちのドローンは墜落しません。完璧なショットのセットアップができるだけでなく、木々を避けながらスマートに飛行し、被写体を自動的に追従します。自律飛行の世界を牽引するリーダーになっているんです」とWeinhoffer氏は言います。

このレベルの自立性を搭載することで、ドローンに新たな可能性が広がります。公共安全機関は事故や犯罪現場の調査に自立飛行型ドローンを活用することで、ドローンの監視に人員を充てたり、専門のサービスに費用を支払ったりする必要なく、事件・事故当時の様子をデジタルで再現することができます。公共事業、土木工事会社、および国家機関は、作業現場で広範な検査を行う際にSkydioのドローンを活用しています。また、恒久的に設置したDockにドローンを配置し、人員を追加することなくほぼ年中無休での監視を可能にしています。このような用途では人が立ち入れない場所で使用されることが多く、Skydioのドローンには耐久性と優れた設計が求められます。SLA光造形3Dプリントにより、試作品でそういった要件を確認する際に、最終的な射出成形品に可能な限り近づけた設計が可能になります。

重量、スピード、飛行距離のバランス

Form 3+プリンタからビルドプラットフォームを取り出す男性

Weinhoffer氏とハードウェア開発チームは、Form 3+プリンタとFormlabsが提供する多様なレジンを駆使し、Skydioのソフトウェアチームが高速で行う開発工程に対応している。写真提供:Skydio

ドローンの設計は、トレードオフをいかにうまく調整できるか、の試行錯誤の積み重ねです。頑丈なドローンは軽量なドローンに比べて飛行時間が短くなります。一方、非常に軽量なドローンでは自律飛行に必要なコンピューティングをすべて搭載しきれず、すべてを搭載しようとすると質量が増加するため、飛行時間に影響してしまいます。わずかな設計変更や段階的な微調整、そして広範に渡る検証を絶え間なく繰り返すしかありません。「自律飛行をサポートするために、私たちの製品にはたくさんのコンピューティングを搭載しています。すべての決定の軸となるのが、ハードウェアと電子機器ひとつひとつに影響を及ぼす性能のトレードオフです」

部品の形状に僅かな変更を加え、それが飛行時間や耐衝撃性にどのように影響するかを検証するにあたり、ハードウェアチームは一晩で3Dプリントを行い、開発工程の支援と情報提供を行っています。

「3Dプリントで実現するスピードのおかげで、何を妥協すべきかを迅速に決めることができます。僅かに異なる2つの形状を比較し、そのトレードオフを検証するんです」

シニアハードウェア開発スペシャリスト、Eric Weinhoffer氏

Skydioは、こういった意思決定と検証を迅速に行えたことで納期内に製品を製作し、契約締結に結びつけました。米国連邦政府の主要認定事業では、多くのドローン企業が公開入札に参加しました。参加企業は厳しい納期の中で、政府が定める仕様を満たす製品を提示しなければなりません。Skydioが落札できたのはハードウェアの開発を高速に行うことができたからですが、その一端を担ったのがFormlabsのプリンタです。

「納期は絶対でしたから、ハードウェアとソフトウェアの開発を同時に進めることが非常に重要でした。製造用部品の製作期間が、最も厳しいところでした。Form 3+は即座にノンストップで稼動してくれるため、ハードウェアで何か変更が必要になってもすぐに用意することができました」とWeinhoffer氏は言います。

ラックに搭載されている複数台の3Dプリンタ

Skydioのハードウェア開発チームは、SLA光造形3Dプリンタをラックの上下に重ねていつでも利用できる状態にし、連続稼働によって試作品製作や検証を常に行えるようにしている。写真提供:Skydio

設計の最終決定と機能確認テスト

連邦政府向けの入札など外部で行われる検証環境では、射出成形品や加工品の頑丈さや耐久性、強度や剛性をシミュレートできる3Dプリント製部品を製作できることが重要です。Skydioでは、簡単な形状テストやフィットテストにはFDM(熱溶解積層)方式を使用していますが、試作品の設計を最終的に確認する機能確認用検証にはFormlabsの3Dプリンタを使用しています。「最短で可能な限り製造用部品に近づけられるSLA光造形のスピードと能力が役立っています。最終的に製造に使う材料特性に近い特性を持った部品を作れるのは、本当にすごいことですよ」とWeinhoffer氏は言います。

Skydioでは、耐熱性、耐衝撃性、強度が求められる場合にはRigid 4000レジンを、射出成形品のプラスチック部品に似た特性が求められる場合にはTough 2000レジンを使用しています。Clearレジンの表面の透明性は、電子機器を多用するドローンで配線を確認するための検査段階で不可欠な要素になっています。また、金型の高速製作や新しいガスケットやシール設計の機能確認用には、ElasticレジンDurableレジンを使用しています。

「Formlabsの部品は、硬質の成形品のような見た目と手触りになります。最終的な製品に可能な限り近づけられるというのは、非常に大きなメリットです。また、フィット感や表面品質など様々な要素から推測して、デザイナーが落下試験や試作品の飛行テストに向けて手に持ったときの重さをイメージできるため、自信を持って飛行テストに臨むことができています」

シニアハードウェア開発スペシャリスト、Eric Weinhoffer氏

自動車の残骸の上を飛ぶドローン
ウェビナー

航空宇宙業界の大小様々なメーカーで活用できるラピッドツーリングと治具製作

本ウェビナーでは、航空宇宙業界のメーカーがラピッドプロトタイピング以外にも様々な用途でアディティブマニュファクチャリングを活用している事例をご紹介します。3Dプリント製の治具や固定具により、あらゆる規模の企業が製作時間とコストを削減し、より良い製品をいち早く市場に投入することができています。Formlabsのスペシャリストと一緒に、航空宇宙、航空、製造業界の限界を押し広げる確立されたケーススタディを見ていきましょう。

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機能試験で使用する固定具の製作

強度が求められるのは、ドローンに搭載する部品だけではありません。試験で使用する固定具も同じなのです。同社チームは、Rigid 4000レジンの機械的強度やTough 2000レジンの耐衝撃性を活かし、機能試験時にドローン部品を固定するための固定具をForm 3+プリンタで製作しました。

ドローン開発工程の一つ、無線周波数(RF)試験では、外部からの電波を排除したアンテナ測定チャンバーにドローン部品を設置します。ロボット仕様のターンテーブル上に部品をしっかりと固定しておくため、強度の高い固定具が必要でしたが、実験の妨げになるため金属材料は使用できません。Weinhoffer氏は設計した固定具をRigid 4000レジンで3Dプリントし、チャンバーに取り付け、検証時にアンテナを適切な位置に固定できるようにしました。

RFチャンバー内で活用される3Dプリント部品

RF(無線周波数)チャンバーでは、3Dプリント製の固定具が実製品用部品を所定の位置で固定する。金属製の固定具は高価であり、かつRFテストの妨げになるため、Rigid 4000レジンで3Dプリントした写真の固定具のように、必要に応じて製作できる3Dプリントが欠かせない。写真提供:Skydio

他にも、防振ゴムの試作品を社内製作する方法を模索していたことがありますが、複数種類の軟質部品を外注すると、コストも時間もかかってしまいます。そんな時、同社ハードウェア開発チームはFormlabsの製品仕様から着想を得て、成形型のマスターを複数製作し、それらを用いて様々な設計の防振能力を検証することができました。

「最大の利点は、なんと言ってもFormlabsが提供する材料の豊富さと材料特性です」

シニアハードウェア開発スペシャリスト、Eric Weinhoffer氏

シリコン部品製作に関する製品仕様
技術資料

3Dプリント製の型でシリコン部品を生産

本製品仕様では、ベストプラクティスや導入事例など、3Dプリント製の型でシリコン部品を製造するための詳細なガイドをご覧いただけます。

技術資料のダウンロード

使いやすさ重視で広がる用途

自動車の残骸の上を飛ぶドローン

ドローンは、公共安全機関が危険な場所に人を送ることなく災害現場や犯罪現場から情報収集するのに役立っている。

簡単に手の届かない場所に設置されていることの多い発電設備なども、SkydioのドローンやDockのおかげで近くにオペレーターを配置することなく点検が可能。写真提供:Skydio

Skydioが幅広い業界や様々な顧客を惹きつけている理由の一つは、同社製品のアクセスのしやすさと使いやすさにあります。非常に高度な機能を持つ同社の自立飛行製品は、配置の際に様々な考慮や計画をする必要がありません。法執行機関であればドローンの操作に気を取られることなく犯罪現場での情報収集に集中でき、建設コングロマリットであればドローンとDockを配備することで点検期間の心配をすることなく数年に渡る長期プロジェクトにも取り組めます。Weinhoffer氏はこの哲学を3Dプリントの選定にも取り入れており、アクセスしやすい製品でなければ、その価値が十分に発揮されているとは言えないと考えています。「Formlabsのプリンタはとても使いやすく、エンジニアリングチームの多くのメンバーが使いこなせます。Form 3+をさらに数台追加することでエンジニアリングチームに1日か2日程度余裕が生まれ、その結果としてさらに迅速な行動が可能になり、会社にも大きな影響を与えられます」とWeinhoffer氏は言います。

Skydioの製品ラインが拡大しカスタム製品の開発が増えるにつれ、3Dプリントは単なるツールではなく、ハードウェアチームが驚異的なスピードで行われるソフトウェア開発を支援するために重要な役割を果たすようになりました。

Formlabs Webサイトの業界ページでは、航空宇宙・防衛メーカーが Form 3+などの3Dプリンタを活用して作業工程の最適化や重要な契約の締結、製造・開発コストの削減を実現している方法をご紹介しています。また、ご不明点がある場合にはFormlabsまでお気軽にお問い合わせください。