Formlabsから、生体適合性のある医療器具や模型を直接3Dプリントできるエラストマー材料が新たに2つ登場します。BioMed Flex 80AレジンとBioMed Elastic 50Aレジンは、医療機器や医療器具の製造、病院や医療関連サービス提供者が行うポイントオブケアでの3Dプリントの可能性を広げます。
従来、これらの業界で器具の製造を担当する企業は、手間がかかり作業手順が煩雑になりがちなシリコン成形に頼るか、高額なコストを払って受託メーカーに外注するかのどちらかしかありませんでした。
しかし、BioMed Flex 80AレジンとBioMed Elastic 50Aレジンの登場により、従来のエラストマー材料と生体適合性材料の利点を、使いやすく合理化された作業手順が自慢のFormlabs SLA光造形3Dプリンタと組み合わせることができるようになります。
これら2つの新材材は、ISO 10993およびUSPクラスVI試験、FDA登録、ISO 13485認定をすべて取得済みの施設で製造されているため、医療従事者の方々にも安心してご使用いただけます。Formlabsが提供する生体適合性材料が拡大するにつれ、より多くの作業手順や用途で3Dプリントをご利用いただけるようになり、患者様へのより良いケアの提供やコスト削減を実現しながら、新たな可能性を広げることができます。
Formlabsの生体適合性エラストマー材料で血管解剖学模型を製作
Formlabsの最新材料BioMed Flex 80AレジンとBioMed Elastic 50Aレジンを例に、生体適合性のあるエラストマー材料を医療従事者が3Dプリントで使用する方法を解説しています。
ヘルスケア業界における生体適合性を備えた軟質部品製作の難しさ
長年にわたり、3Dプリントによって医療機器メーカーや医療従事者の作業手順が改善してきたことは事実です。しかしこれまで、柔軟性と生体適合性の両方が求められる用途では、Formlabs製品で実現できる包括的な3Dプリントソリューションはありませんでした。
従来、医療機器メーカーにとっては、設計段階と製造段階の両方で3Dプリント用のエラストマー材料が利用できるかどうかが、製品の実現を左右する要素になっていました。試作品製作段階では生体適合性のない材料や硬質材料を使って型を3Dプリントし、3Dプリント製の型を使って医療グレードのシリコンを手作業で鋳造するか、法外な値段で成形加工メーカーに外注しなければなりませんでした。これが原因で設計サイクルが不完全なものとなり、製品性能が低下したり迅速な市場投入が難しくなっていました。
生体適合性のある硬質部品であれば、多くの企業が3Dプリントでコスト効率良く製造できることがわかっています。一方のエラストマー部品については、生体適合性に関する厳格な要件に準拠しつつ適切なショア硬度と引張強さを備える材料が存在しなかったために、3Dプリントは使用できませんでした。実製品に使用される軟質部品はコスト効率良く製造することが非常に難しく、そのため多くの企業はカスタマイズ性のない標準型の製品しか提供できませんでした。
ポイントオブケアの用途では、生体適合性を備えた軟質材料がないために、病院や医療関連サービス提供者が3Dプリントのメリットを享受しきれない状態が続いていました。現在、いくつかの病院研究者が生体適合性のない軟質材料を研修や教育目的で使用していますが、それらを手術室(O.R.)に持ち込むことはできません。生体適合性のある軟質部品を3Dプリントすることができれば、病院や医療関連サービス提供者が3Dプリント製の模型を手術室に持ち込めるようになるだけでなく、提供できる製品の幅が広がり、患者ケアの質を向上させ、医療サービス提供者にかかるコストを削減することができるようになります。
柔軟性、透明性、生体適合性で3Dプリントの新たな用途を実現
BioMed Flex 80AレジンとBioMed Elastic 50Aレジンの導入により、医療器具メーカー、医療従事者、手術計画部が、3Dプリントと生体適合性材料の長所を組み合わせた合理的な作業手順をようやく利用できるようになりました。規制準拠および認定済みの作業手順を遵守するというFormlabsの信念に基づき、これら材料はISO 10993およびUSPクラスVI試験、FDA登録、ISO 13485認定済みの施設で製造されているため、安心してご使用いただけます。
最大引張強さ | 引裂強さ | ショア硬度 | |
---|---|---|---|
BioMed Flex 80Aレジン | 7.2MPa | 22kN/m | 80A |
BioMed Elastic 50Aレジン | 2.3MPa | 11kN/m | 50A |
BioMed Flex 80Aレジンのショア硬度は80A、引張強さは120%で、部品を変形させても元の形状に戻るため、試験や研究中に部品に対して色々な操作を行うことができます。この材料で作った部品は、医療グレードの生体適合性を要する器具にご使用いただけます。外科医にとっては、この材料で製作した硬組織よりの解剖学模型を手術室に持ち込んで術中に確認・参照することが可能になり、手術結果や患者の術後経過の改善につながることがわかっています。
Formlabsの特殊レジンを長年使用しているシンシナティ大学放射線科の助教授Prashanth Ravi博士は、BioMed Flex 80Aレジンの登場で新たな用途の可能性が広がることに喜びながら、こう話してくれました。「BioMed Flex 80Aレジンは、さまざまな臨床用途で生体適合性材料として使用できるすべての要素を兼ね備えた軟質材料で、医療現場で活躍する外科医を支援するツールの幅が広がることでしょう」
先進医療の大手プロバイダーであるNorthwell Healthでは、何年も前から3Dプリントを活用してきましたが、同社のAllison Neuwirth氏は、Formlabsの2つの新材料がリリースされるまで、生体適合性のあるカスタム医療器具や患者の体に接触する器具を製作する際は手順が何段階にもわたるシリコン成形が必要だったと言います。
「病院にサービスを提供する私たちのような企業にとって、患者様の体に触れても安全なカスタムの軟質部品を作るのに最適な材料です。また、手間がかかる上に無駄も多いシリコン成形で試作品製作をする必要もなくなります」
Northwell Health プロジェクトマネージャー、Allison Neuwirth氏
BioMed Elastic 50Aレジンが備える弾性、ショア硬度50A、引張伸び150%という特性は、生体適合性材料が必要な用途で3Dプリントの新しい可能性を切り拓きます。このレジンで製作した部品は自由に曲げ伸ばしや圧縮することができ、医療機器メーカー向けにガスケットやシール、そして薄くて柔らかい筐体を作ることができます。BioMed Elastic 50Aレジンの透明性により、チューブのような部品であれば中を通る流体を目で確認することもできますし、医療用途で使用するカスタムの生体適合性流体デバイスをコスト効率よく製造することができます。
また、BioMed Elastic 50Aレジンは、外科医が手術室に持ち込んで確認できる軟組織模型などにも最適です。Ravi博士は、新しいエラストマー材料が最適な用途があると言います。「この材料が確実に役立つだろう用途の1つは、心房細動の治療で必要となる左心耳閉鎖術の計画時のデバイスサイジングです。心臓専門医が滅菌した3Dプリント製解剖学模型を手術室に持ち込んでデバイスのサイズを決定し、術前に外科チームと情報共有をしたい場合に、BioMed Elastic 50Aレジンが最適でしょう」
Baystate Healthで3Dプリントのスペシャリストとして働くGreg Gagnon氏は、3Dプリント製のボーラス装置やその他装置を医師に提供しています。Gagnon氏はBioMed Elastic 50Aレジンが登場するまで、エラストマー材料を直接3Dプリントすることができないでいました。
「この材料は素晴らしかったです。相対電子密度は水の1.0g/cm3とほぼ同じで、患者のボーラスを3Dプリントするのに最適です。[私たちは]すでにいくつかの製品設計を終えていて、これから検証をして外科分野での使用例を拡大していく予定です」
Baystate Health 3Dプリントスペシャリスト、Greg Ganon氏
Application Guide: Printing Soft Anatomical Models Using BioMed Flex 80A Resin and BioMed Elastic 50A Resin
This guide aims to help the user decide on the best method of silicone part production for their intended use, and provides step-by-step instructions for both printing with Silicone 40A, and molding silicone using SLA 3D printed tooling (including two-part injection molds, overmolds, and compression molds).
医療グレードの軟質部品の製作を合理化
FormlabsのForm 3B/+およびForm 3BLプリンタなら、医療機器メーカーや医療従事者の方々が、模型や器具、部品を簡単かつコスト効率よく製造できます。プリンタの設置面積が小さく作業手順も少ないため、スペースが限られている病院内でも使いやすく、製造現場でも複数台の導入で効果的にスケールアップすることができます。
新しい2つのレジンにより、医療器具の製造工程の削減と作業手順の合理化を実現しながら、医療業界の他にも数々の用途でFormlabsが提供してきた造形品質の一貫性と安定性はそのままに、生体適合性のある軟質部品を直接3Dプリントできるようになります。
ペンシルバニア州を拠点とする医療機器コンサルタントのBrian Powell氏は、私たちにこう話してくれました。「FormlabsのBioMed Flex 80Aレジンは、これまで提供してきた材料ライブラリに新たに加わった、頑丈で耐久性のあるレジンです。生体適合性がありながら、高い硬度のおかげで細かなディテールも実現する高精細な造形が可能です。水中UV硬化工程が加わることを考えても、高精細なネットシェイプ成形が可能なことと後処理がしやすいという点で私のニーズに合っていると感じました。FormlabsのBioMed材料ラインナップに新たに嬉しい材料が加わったことで、生体適合性のある軟質部品の製造が可能になり、今後さまざまな選択肢が広がっていくと思います。BioMed Elastic 50Aレジンと共に、待った甲斐があると言える材料になることは間違いないでしょう」
BioMed Flex 80AレジンとBioMed Elastic 50Aレジンは、医療器具の製造や解剖学的模型の製作工程で立ちはだかる障壁を取り除き、手間のかかるシリコン成形が不要になることで、使用者はより重要な作業に集中できるようになります。2つの新材料の特性をさらに詳しくお知りになりたい方は、こちらのウェビナーをご覧ください。また、既存作業手順への統合に関して医療用3Dプリントのスペシャリストへのご相談もご予約いただけます。