自作ドローンの製作方法

SkydioやDJIといった大手メーカーの既製ドローンは手頃で入手しやすい一方、購入した状態での仕様に制限されるため、独自の用途に合わせたカスタマイズは容易ではありません。

既製のドローンキットでも、速度を最適化するための設計の自由度が限られていたり、既に持っている材料を使用するなどのコスト削減が適用しづらくなります。一方、自作ドローンであれば用途に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。本ガイドでは、ドローンの製作手順をステップごとに解説し、すぐに使える(そしてカスタマイズ可能な)部品リストを提示するとともに、各種方式・材料・部品の利点をご紹介します。

SLS(粉末焼結積層造形)方式3Dプリンタ:Fuse 1 3Dプリンタ
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ドローンの基本的な仕組みを理解する

ドローンの種類(インフォグラフィック)

ドローンを自作する前に、まずドローンの設計と性能の基本を押さえておきましょう。後ほど、クアッドコプターの設計プロセスも解説します。

そもそも、なぜクアッドコプターなのか?クアッドコプタードローンは、ドローンレース・監視・研究・建設現場のモニタリングなど幅広い用途に使われています。最大の強みはその機動性とホバリング性能で、犯罪現場の監視や農地のマッピングといった観測用途に適しています。これに対し、防衛分野で用いられる固定翼型のドローンは、長時間飛行や積載重量(ペイロード)の大きな運搬に適した設計です。

固定翼ドローンを自作することも可能ではありますが、離着陸の手順がより複雑になります。初めてドローンを設計・製作する場合は、クアッドコプターの方が取り組みやすいでしょう。

クアッドコプターは、モーターが下向きに空気を押し出して揚力を生み出すことで、地面から浮き上がります。4基のモーターのうち2基は時計回り、残り2基は反時計回りに回転し、反対方向に力が生み出すことで姿勢を安定させます。ヘリコプターがメインローターで揚力を生み、テールローターでトルクを打ち消して水平を保つのと同じ考え方です。

ドローンフレームのサイズ・形状・材料

ION Mobilityのこのドローンでは、バッテリー・GPS・VTXを収めるセンター部分や、市販モーターとプロペラを囲む薄型部品などといった主要コンポーネントにSLS 3Dプリント製部品が使用されている。同社チームは、3Dプリントを活用することでドローンの安定性と耐久性を最適化。フレームが衝突や荒い着地の際にプロペラを保護する。

自作ドローンでは、機体サイズの大半を占めるフレームが需要なコンポーネントで、軽量でありながら十分な耐久性と強度が求められます。フレームの役割は電子機器を搭載するベース、およびモーターアームを接続する中心部として機能することです。ドローンのサイズは各プロペラの先端同士の距離で測定されるため、例えばサイズが「550」のドローンはプロペラの先端間距離が550mmという意味になります。一般的なFPVドローン(DJIの人気モデルなど)は直径200〜300mm程度で、高速かつ俊敏ですが、敏捷性が高い一方でフレームが小さいため大容量バッテリーを搭載しにくく、飛行時間は1時間未満にとどまります。

量産フレームの多くは、ABSなどの射出成形プラスチックで作られています。自作する場合、フレームやローターアーム用のABS部品を購入することも、加工・組み立てが容易なカーボンファイバーフレームを購入することも可能です。もしくは3Dプリントを活用して用途に合わせた独自フレームを設計することで、通常は同時に収めることが難しいモーターや配線、バッテリー、ナビゲーション部品を最適に配置することができます。つまり、自作ドローンは思い通りの設計が可能で、かつ3Dプリントによって既製キットの制約を取り払い自由度を一段と高められます。

SLA光造形プリンタの場合、FormlabsのTough 1500 V2レジンなどを使って射出成形のポリプロピレンに匹敵する耐衝撃性の高いフレームの製作も可能です。または、Nylon 12 ToughパウダーのようなSLS用パウダーを使うことで、サポート材なしで強度重量比に優れた有機形状を実現できます。

3Dプリント材料の進化により、機能性を維持したまま繰り返しの応力や衝撃に耐えられる。Tough 1500 V2レジン(左)などのFormlabsのSLA光造形用レジンや、Nylon 12 Toughパウダー(右)などのSLS用パウダーは、機能的強度と耐衝撃性を備え、ドローン用途に最適。

自作ドローンの設計パラメーター

Nextech製の固定翼ドローン

写真の農地マッピングドローンは固定翼設計で、高速かつ長距離の飛行が可能。機動性やホバリング性能を優先する必要がない(写真提供:Nextech)。

コンポーネントを選ぶ前に、まずは以下の質問に回答することで初期パラメーターを設定し、カスタムドローンの設計・製作準備をします。

  • 用途:想定用途に最適化するために重視すべきものは何か?

    • ドローンは、電源を無駄に消耗せずペイロードを支えられるよう、構造強度と重量のバランスが求められます。 

    • 配送用ドローンは重い荷物を運ぶため、機体も電源も大型なものが必要です。レース用ドローンは軽量で高い機動性が必須となり、監視用は高品質カメラを搭載できるよう設計最適化が必要です。 

  • 規制:どの規制を準拠する必要があるか? 

    • ドローン関連の規制は国によって異なります。例えば米国では、250g未満のドローンを娯楽目的で飛ばす場合にはFAAライセンス所有者による操縦は不要ですが、250g以上になる場合はライセンス所持者による操縦と、一部の空域では事前に飛行許可申請が必要です。ライセンス取得には筆記試験の受験と手数料の支払いが必要です。 

    • また、すべてのドローンに対し、高度400フィート以上での飛行や空港から半径5マイル以内での飛行が禁止されています。 

  • コスト:コンポーネントにどの程度予算をかけるべきか? 

    • 予算に合わせて市販のコンポーネントを組み合わせられます。これがフレームやアームを3Dプリントすることの利点です。標準のフレームには収まらない安価な部品を中心にフレームを設計できます。

ドローンの製作方法を選ぶ

FDM・SLA光造形・SLS 3Dプリント製の水密エンクロージャー

水中ドローン(UUV)には3Dプリントが有力な選択肢となるが、写真左のカプセルのようにFDMで作るパーツは基本的に水密性がない。一方、SLA光造形(写真中央のカプセル)やSLS(写真右のカプセル)は、高圧下の水中試験で精密電子機器を安全に保護できることが実証されている。

市販の部品のみを使った設計とするか、事前に設計済みのドローンキットを使用するか、完全にオリジナルのデザインとするか(およびその部品の製造方法を含む)を決めます。ドローンキットの多くには組立手順が付属しているため、本ガイドではオリジナルデザインでドローンを自作する場合を想定し、電子機器以外の部品を3Dプリントする方法に焦点を当てます。しかし、ドローンキットや市販の部品を使用する場合でも、交換部品の製作や既製ドローンの強化・固定・カスタマイズ用パーツの製作などに3Dプリントが有用です。

自作ドローンに3Dプリントを活用する

多くの愛好家にとって馴染み深いFDM(熱溶解積層)は、ホットグルーガンのようにノズルからフィラメントを1層ずつ押し出す方式ですが、機能部品の造形には必ずしも適しているとは言えません。FDM 3Dプリント品は材料が異方性を持つため、衝撃や荷重がかかると層間で剥離が起きやすくなります。価格が手頃で高速なFDMは試作品の製作には有用ですが、量産や実製品用の部品にはより機能性に優れた3Dプリント方式を選ぶべきです。

SLA光造形プリンタは、ドローン部品の試作から実製品部品の製作まで幅広く対応が可能です。SLA光造形によるドローン部品は材料が等方的なため、衝撃や荷重がかかってもFDMのように層間が剥離することはありません。さらにSLA光造形では使用できるレジンが豊富で、求める特性や用途に合わせて最適な材料を選定できます。例えば、水中ドローン(UUV)には水密エンクロージャーが必要です。特にガスケットやシールといった部品には、FormlabsのSilicone 40Aレジンのような柔軟材料を使ったSLA光造形が適しています。

Tough 1500 V2レジンのような耐衝撃材料は、薄肉構造のエンクロージャやブラケット、カバーの造形に最適です。光造形品は表面が滑らかで、よりプロ感のある仕上がりになり、ドローン全体の審美性も向上します。高速造形が可能なSLA光造形プリンタ Form 4/Form 4Lなら1日に何度も試作品製作が可能で、試作・検証を繰り返してドローンの設計を改良する反復設計にも最適です。

SLS 3Dプリントは、ドローン設計に3Dプリントならではの強みを提供します。SLSの場合、造形中は未焼結パウダーが造形品を支えるためサポート材が不要で、造形品にサポート痕が残らず、複雑で有機的な形状も製作が可能なため高強度ながら軽量な設計に最適化が可能です。FormlabsのNylon 12 ToughパウダーなどのSLS用パウダーは非常に高い耐久性を持ち、工業用途の耐荷重部品として実績があります。自作ドローンを3Dプリントする場合、機能的かつ丈夫なフレームを入手するには、受託メーカーにSLS部品を外注するというのが最も低コストな方法です。少量の業務用ドローン(1〜5機程度)を設計・製作する場合は外注3Dプリントが最も手頃で、SLS部品なら高い設計自由度と機能強度を両立できます。

ドローンの生産量を拡大したい場合には、Fuse 1+ 30W SLS 3Dプリンタを社内に導入することで初期費用を抑えながら生産ワークフローを確立できます。

3Dプリント製の成形型を自作ドローンに活用する

カーボンファイバーのドローンフレーム

このレーシングドローンのフレームは、カーボンファイバーシートから切り出した複数パーツで構成されている。非常に軽量で衝撃にも強い一方、独自の技術スタックやペイロードに合わせた細かなカスタマイズは難しい。

消費者向けドローンの多くは、極めて軽量で高強度なカーボンファイバー製ボディフレームを採用しています。こうしたカーボンファイバー部品は、通常は量産されたシート材から切り出されます。自宅用の自作ドローンキットとしては有効ですが、特定の技術スタックに合わせて作られているため、本当の意味での自由なカスタマイズは難しくなります。

しかし、フレーム自体に3Dプリント製の部品を使用しない場合でも、3Dプリントはドローンを自作するにあたり安価で有効な方法です。ラピッドツーリングを3Dプリントすることで、カーボンファイバー製部品を手軽に内製できます。

カーボンファイバー製部品用の成形型の製作方法は様々ですが、SLA光造形プリンタは滑らかな表面品質が実現でき選べる材料も豊富なため、社内での型製作によく用いられます。SLA光造形品は実質的に積層痕や小さな穴が残らないため、カーボンシートを型にしっかり押し当てても表面が凸凹になりません。

3Dプリントのもう一つの活用例として、一般に量産されるプロペラの試作・カスタマイズがあります。プロペラのデザインは流体力学に大きく依存し、わずかな形状変更でも揚力の大きさや向きに大きな影響を与えます。市販の射出成形品のプロペラは寸法の安定性と強度に優れていますが、3Dプリントで自作することも可能です。実際に設計する前に、Fusion 360などのCADソフトウェアのエキスパートが公開している各種チュートリアルを活用しましょう。

SLSで自作ドローンを設計する

例として、FAAおよびNDAAの要件を満たすFPV(First-Person View/一人称視点)のドローンの設計から組立までステップごとに見ていきましょう。

  1. パラメーターの特定:

    1. 重量が250g以上

    2. リモートID搭載

    3. GPS搭載

    4. カメラおよび映像伝送機能を搭載

    5. 標準的な小型無人航空機(sUAS)用バッテリー:HRB 2個入り 6S LiPoバッテリー(XT60)

    6. クアッドコプター方式モーター

  2. 市販コンポーネントを選定する: 部品表の詳細は付録をご参照ください。 

  3. ドローン設計の選択:固定翼/アーム分離型クアッドコプター/ダクト付プロペラのコプター型

    1. ラティス構造などで軽量化

    2. ジェネレーティブデザインで重量と強度の最適解を見つけ出し、不要な質量を取り除く

  4. 3Dプリント方式を選定する:

    1. LiPoバッテリーの重量を支えつつ、過度に大きくならない強靭な材料が必要です。フレームには衝撃耐性と耐UV性も求められます。 

    2. 既製コンポーネントに合わせつつ強度と軽さを両立するには、SLS 3Dプリントで自作ドローンを製作するのが最適です。FormlabsのFuse 1+ 30Wなら、すべてのパーツを入れ子構造にして1回のビルドに詰め込み、サポート材不要で造形が可能です。また、後処理も最小限で、24時間以内に完全な機体を作ることができます。 

  5. 3Dプリント材料を選定する:

    1. フレームの強度・耐久性を最大化するため、アームやコンポーネントプレート、カバーにはFormlabsのNylon 12 Toughパウダーを、小型スペーサーやカメラマウント・GPSマウントにはTPU 90Aパウダーを使用します。 

    2. Nylon 12 Toughパウダーで作る部品は高い延性と優れた寸法精度を備えています。リフレッシュ率がわずか20%と低く、造形コスト面でも非常に有利です。

    3. TPU 90Aパウダーは衝撃吸収が必要なマウントに最適で、カメラやGPSモジュールなどのデリケートな機器を安全に保持できます。今回製作するドローンフレームでは、配線のためにGPSマウントに切り欠きを入れます。こういった加工はTPU 90Aパウダーなら可能ですが、他のSLSパウダーでは難しい場合があります。 

  6. プリントと後処理:

    1. プリントと後処理はそれぞれの手順に従って行ってください。

      1. スペーサーは非常に小さく、余剰パウダーの中に紛れ込んでしまうことがあります。造形後に簡単に位置を特定できるようパーツケージに入れて造形するか、後で切り離せるようなグリッド状にしてまとめてプリントします。 

    2. 今回製作するSLS 3Dプリント製のドローンでは、1台のプリンタでNylon 12 Toughパウダーを使用し、もう一台のプリンタでTPU 90Aパウダーを使って部品を製作する必要があります。 

      1. 未焼結パウダーを取り除きます。SLSの場合、Fuse Siftでパウダー除去が可能です。 

      2. ブラスト処理を行う際、TPU 90Aパウダー製の部品(マウントとスペーサー)にはメディアを使ったブラストは行わないでください。

  7. 3Dプリント製の自作ドローンを組み立てる:

    1. 組立手順については、Building Momentumのチーフプロダクトオフィサー、Henry Sullivan氏の解説に従ってください。 

Fuseシリーズの詳細については、各製品ページからご覧いただけます。SLS 3Dプリント製のドローン部品の検証をご検討の場合は、Formlabsまでご気軽にお問い合わせください。 
 

付録:材料コスト

項目内容説明ドローン1機あたりの数量SKUあたりのコスト
バッテリー取り付けストラップバッテリーストラップ2$7.99
ハードウェアM3角ナット([フレーム全般])12$8.00
ハードウェアM3 × 16mmフランジ付きボタンボルト[フレーム全般用]12$12.93
ハードウェアM3ワッシャー []6$5.50
ハードウェアM3×10mmネジ [モーター]16$9.37
ハードウェアM2×16mm皿ネジ([VTX用])4$9.00
ハードウェアM2ワッシャー([VTX用])4$9.75
ハードウェアM3×30mm皿ネジ([FCスタック用])4$6.93
バッテリーコネクターXT60 E-M1$8.59
sUASバッテリーDronetag BS V2リモートIDモジュール1$89.00
sUASバッテリーHRB 2個入り 6S Lipo バッテリーXT60 22.2V 4000mAh 60C1$90.99
バッテリーアダプター3個入りXT90オス → XT60メス変換コネクターアダプター(LiPo電動クアッド/ESC用)1$9.60
アンテナコネクターSMA-U.FLケーブル(30cm)1$5.49
VTXアンテナLHCP SMA 125mmレッドアンテナ1$14.99
VRXWalksnail Avatar HDゴーグル1$458.99
RC RXHGLRC Gemini ELRS 2.4GHz RX デュアルレシーバー1$22.99
RC TXRadioMaster Boxer ラジオトランスミッター - 4-in-11$139.99
ESCHobbywing XRotor Micro 65A 6S BLHeli_32 4-in-1 ESC - 30x301$89.99
フライトコントローラーRADIX 2 HDフライトコントローラー(HD[デジタル]FPVシステム用H7ベース)1$112.99
GPSLumenier SAM-M10Q GPSモジュール - NDAA1$79.99
HD VTXWalksnail Avatar HD Kit V2 - 8GB - ジャイロ付き1$139.00
FPVケーブルWalksnail Avatar同軸ケーブル(20cm)1$11.90
モーターT-Motor CINEシリーズ Cine66 2812モーター - 925KV4$45.99
プロペラHQProp 7.5×3.7×3 ポリカーボネートプロペラ4$4.99
バッテリーチャージャーiSDT 608ACスマートバッテリーチャージャー AC 50W DC 200W 8A(取り外し可能電源付き)1$64.99
リボバッグLiPo保管バッグ1$12.99

お客様ビジネスに最適な3Dプリント製品については、1対1の相談セッションをご予約ください。各材料の比較やROI評価のほか、お持ちのデザインでテストプリントなども承っています。