冶具とは、製造や組立工程の効率化や精度向上、工程の短縮や作業者の安全性向上を目的に使用されます。
メーカー各社は通常、自社あるいは外部委託による機械加工で治具を製作して使用しますが、その治具やワークにかかる荷重等の条件によっては必ずしも金属製の治具を使う必要がないケースもあります。
3Dプリント材料の中でも、Formlabsの光造形方式の材料であるレジンは大きく進歩しており、Formlabsのスタンダードレジンやエンジニアリング用レジンなど、3Dプリント製治具製作に適した機能性レジンは数多く存在します。また、高強度な治具を多数製作するニーズが恒常的にあるメーカーや治具製作事業者様では、小ロット量産に対応する粉末焼結積層造形(SLS)方式の方がメリットが大きいケースもあります。そのため現在では、世界中のメーカーが自動化された機械加工、電子機器の組立ライン、鋳造所などの生産設備において、金属製冶具に置き換える形で3Dプリント製治具を使用し、製作期間の短縮や効率化を図っています。
Pankl Racing Systemsで二輪のギア製造に使用される3Dプリント製治具
以下では3Dプリントで対応可能な治具の具体例を7つご紹介します。製造ラインに3Dプリント製治具を導入する際の参考資料としてご確認ください。
本記事は、技術資料「3Dプリント製治具の設計ガイド」からの抜粋したものです。治具設計の基本や3Dプリント製治具設計の具体例、3Dプリント製治具の検証方法など、より総合的な情報をお求めの方は技術資料をダウンロードしてご確認ください。
3Dプリント製治具の設計ガイド
本技術資料では、3Dプリントが導入可能な治具の解説、およびその設計時の参考情報をまとめています。本記事でご紹介する内容をさらに詳しくお知りになりたい方は、リンク先のフォームに必要事項を入力して資料をダウンロードしてください。
※本資料は現在翻訳中です。近日中のアップデートをお待ちください。内容詳細が必要な場合はお手数ですが[email protected]までお問合せください。
ソフトジョーインサート
ソフトジョーインサートとは、ワークの形状に合うよう設計され、複雑な形状あるいは固定が難しい形状のワークが動かないよう固定しつつ、軟質金属や樹脂に傷が付かないよう保護するためのものです。例えばABS相当材であるFormlabsのTough 2000レジンのような材料で3Dプリントすることで、複雑形状のワークに対応する治具を高速かつ低コストで製作することができます。
ガイド治具
ガイド治具は加工の精度や一貫性を保つために使用されます。例えばドリル用のガイド治具は穴あけ作業の効率化や品質維持などを目的に用いられ、穴あけの角度や穴径を公差内に維持するためのものです。
上図のドリルガイド治具にはブッシュが圧入されていますが、こうしたブッシュには圧入式とねじ式があり、一般的な工業資材業者から購入できます。中でもプラスチック製の治具で使用するために作られたブッシュは、3Dプリント製治具での使用に非常に適しています。
圧入式を選ぶ場合、適切な穴径を決める際には弊社の技術資料の公差ガイドライン(翻訳中/英語)をご参照ください。
検査ゲージ
検査用テンプレートやゲージは、品質管理担当者による簡単な公差確認で幅広く使用されます。3Dプリント製の検査ゲージは形状が複雑なゴム製部品などのように、僅かな形状や寸法の狂いで正常に機能しなくなってしまうもの、あるいはその寸法がノギスやマイクロメーター等の一般的な測定ツールで確認できないようなケースで使用されます。
3Dプリント製の検査ゲージでは、組立や製造ラインにおける品質管理関連の確認作業を迅速かつ低コストに実現できます。
運用のヒント:検査対象のワークによっては、時間の経過と共にゲージが摩耗しQC不良に繋がる恐れがあります。3Dプリント製のゲージは低コストですぐに製作できるため、予め交換スケジュールを策定するか必要に応じてプリントし直して交換することで、ゲージの摩耗による不良発生を防ぐことができます。当然ですが、この傾向は検査ゲージにはめ込むワークが金属のように硬いものであるほど顕著になります。
組立用治具
多くの製品において、部品を組み立ててボルト等で固定し、サブアセンブリやフルアセンブリを組み上げる工程は、製造プロセスにおいて最も労力を要する工程になります。その部品専用の組立用治具を3Dプリントで製作することで、作業手順を短縮して組立技術者の労働安全衛生に配慮した治具を高速かつ低コストで準備でき、製造部門全体の効率化を図ることができます。
分解用治具
検査での不合格品の調査や不適合箇所の修正、または改修や修理作業においては製品を分解する必要があるケースもあります。分解用治具を使用することで、この作業を効率化でき、破損リスクも低減できます。例えば、スナップフィット式の筐体を分解する場合、部品の破損を防ぐためには各スナップを同時に開く必要があります。これを効率的に行うためのツールが分解用治具です。
接着用治具
3Dプリント製の接着用治具は低コストで製作できるため、切削などの機械加工で製作された治具とは違い、定期的に交換することができます。理論上は、接着用治具は再加工したり交換する必要がないよう設計され、手入れもされるのが一般的ではあるものの、実際の現場環境や作業者によっては交換も視野に入れておく必要があります。
運用のヒント:接着用治具に離型剤を塗っておくと、治具にこぼれた接着剤が固まってもクリーニングが手早く行えます。
ラベル貼り、マーキング、マスキング用治具
3Dプリント製の治具は、例えばそのロットを通してラベルを全く同じ場所に貼り付けたり、マーキング前のマスキングを行ったりするような、大きな荷重を受けない用途にも有効です。
FormlabsのFlexible 80Aレジン(硬質ゴムライク)等の軟質材料では、ワークの表面にぴったりと貼り付くようなマスクを簡単に製作することができます。テンプレートが硬めの方が都合が良い場合は、Durableレジン(PE相当材)が効果的です。
サロゲート部品
代替品またはサロゲート部品とは、それ自体は治具ではないものの、最終部品の製造開始前に治具をテストするために使用され、製造や組立を迅速に開始する、あるいは製造開始前に工程内の不備を解消する目的で使用するものです。
サロゲート部品の目的は、電子機器のような高額な部品が損傷することを避け、低コストの3Dプリント品を代替品として使用することで製造プロセスの検証を行う点にあります。
SLA光造形によるプリント品は、寸法精度が高く非常に微細な造形が行える点に特徴があるため、FDM/FFF方式等の他方式では見逃す恐れのある製造上またはユーザビリティ上の細かな問題を再現できるため、サロゲート部品に適していると言われています。また、光造形によるプリント品は荷重方向によって強度が変わる異方性がない(等方性となる)ため、FDMによるプリント品とは違い、成形部品に準じた品質と言われ、強度面での挙動もそれに準じたものとなります。
Google ATAPの事例:FormlabsのHigh Tempレジンでプリントしたサロゲート部品によって部品納期を85%短縮し、10万ドル(1,300万円)以上のコスト削減を実現した事例をご確認いただけます。
より有用性の高い治具を設計するには
20ページの技術資料をダウンロードし、効果的な治具を製作するためのヒントをご確認ください。本技術記事では3Dプリントを活用することで工程を短縮、あるいはコストを削減し、設計者から製造現場の技術者に至るまで、より効率的な製造工程を実現する方法に重点を置いています。