過去10年間で、ジュエリー業界における3Dプリントの認知度は劇的に向上しました。かつては実験的な試みという位置付けだった3Dプリンタが、今では世界中のジュエラーによって導入されているのです。
直感的な操作で誰もが簡単に扱え、かつ低コストで導入できる3Dプリンタが登場し、ジュエリーデザインとインベストメント鋳造に3Dプリントを導入する利点は、今や非常に明確です。高品質かつ高精度な3Dプリントは、今やあらゆる規模で活動するジュエラーにとって経済的にも技術的にも手が届くものとなり、ビジネスの成長に合わせて簡単に増設することさえ簡単に行えます。
高い水準で安定した鋳造用材料を高い信頼性と共にジュエラーに提供するため、FormlabsはCastable Waxレジンシリーズを提供しています。例えば紫色が特徴のCastable Waxレジンは20%のワックス充填率を持ち、繊細でディテールの凝ったデザインをも表現でき、非常に美しい仕上がりを実現します。
本記事では、世界的なデザイナーであり金細工師でもあるAbbas Saleh氏が、Castable Waxを活用する上での知見やヒントをご紹介します。アディダスやレッドブル、ウィーン国立美術館などでジュエリー製作に携わってきたSaleh氏は、デジタル技術と伝統的な金細工の技術を組み合わせ、最先端の技術を駆使するパイオニアです。
Castable Waxレジンでのジュエリー製作:Saleh氏登壇ウェビナー動画(英語)
本ウェビナー動画では、ジュエリー製作での3Dプリントの用途と、従来の作業との組み合わせで得られるメリットについて、Saleh氏のお話を直接聞くことができます。本動画ではデザインの試作や顧客の試着、加硫ゴム成形や鋳造マスターまで、幅広く学ぶことができます。
灰を残さないバーンアウトで省力化も
豊富な経験を有する金細工師であり、CADソフトウェアのトレーナーとしても知られるSaleh氏は、ジュエリー製作のあらゆるステップに造詣が深く、3Dモデリングや3Dプリントなどのデジタルツールを伝統的な職人技と組み合わせる術をも理解しているパイオニアです。バーンアウト工程でレジンが膨張し、型の細部が損傷してしまうことに常々不満を感じていたSaleh氏は、Castable WaxレジンをFormlabsのSLA光造形3Dプリンタ Form 2でテストしました。
Saleh氏はこのレジンのユニークな特性が、バーンアウトの最中も一貫して金型の繊細な形状を保ち、美しく複雑なデザインも非常に短い時間で製作できることに気が付きました。熱心な3Dプリントユーザーとして、Saleh氏は鋳造で製作できるものを内製でプリントすることがコスト、時間、そして競争力を高水準で維持する際のポイントとなり、それがジュエリービジネスにもたらす利点を高く評価しています。
「オーダーメイドのジュエリーを検討する時、お客様は常に『そのエッジ』を求めています。大手のブランドとは一線を画す何かが、あなたのジュエリーに求められているのです。全てのプロセスに携わることで、お客様にパーソナルで唯一無二という感覚を提供することができます。また、試着の際にお客様のニーズが変わることがあってもデザインの調整も簡単に行えます。」
―Abbas Saleh氏 ジュエリーデザイナー 兼 金細工師
当日中にキャスティングへ。二次硬化も不要
Castable Waxレジンの他の鋳造用レジンと異なる点は、グリーン状態での強度です。本レジンでは二次硬化を行う必要なく、繊細なフィリグリーやパヴェ形状をプリントできます。これはワックス充填を行い組成したレジン配合による成果であり、きれいなバーンアウトを可能にし、マスターの細部に至るまでの表現を可能にしています。
また、Castable Waxレジンはワークフローの更なる高速化を実現します。本レジンは一般的なバーンアウトスケジュールから、光硬化性樹脂を用いた鋳造工程の急激な昇熱に耐えられるよう開発されたR&R Ultravest Maxxなどの強力なインベストメントによる8時間程度の短時間でのバーンアウトスケジュールまで対応します。
Formlabs SLA光造形プリンタとCastable Waxでのダイレクトインベストメント
Fusion 360とPreFormによるモデル設計
Saleh氏にとって、リングのデザインは通常、宝石選びから始まります。彼はまず宝石を採寸して写真に撮り、Fusion 360で形状を再構築します。こうすることで最終形状が完璧にフィットし、後工程で予期せぬ修正が発生してコストを取られることがなくなります。宝石のすべての寸法を正確に把握するため、Saleh氏は宝石商に3Dスキャナを導入するか、受託で3Dスキャンを代行する宝石店に行くことを推奨しています。
次に、Saleh氏は同一のデザインで複数の試作品を製作することにしています。そうすることで顧客や同僚からのフィードバックを集め、実際のキャスティングでの製作前に多角的な調整・変更が行えるのです。
世界中のデザイナーやジュエラーにジュエリー製作を教えてきたSaleh氏は、デジタル技術を駆使した製作を導入することは、特に導入当初の時点では大きな時間的投資となることも理解しています。Fusion 360は非常に使いやすいソフトウェアで、Formlabsの無料造形準備ソフトウェアPreFormにシームレスに対応しています。
「Fusion 360を選んだ理由?ビギナーにも使いやすいソフトだからです。Rhinoを使ったことがない人でもすぐに使い方を覚えられます。私はソフトウェアの使い方も人に教えているので、3Dの世界に飛び込む最初のハードルは決して低くないということが分かるんです。」
―Abbas Saleh氏 ジュエリーデザイナー 兼 金細工師
次にSaleh氏は、Fusion 360からPreFormにデザインした3Dファイルをインポートします。PreFormでは、ジュエリーデザイナーはデザインに最適な積層ピッチ(垂直解像度)と造形スピードを選択することで、最高の造形品質を得ることができます。高速造形には50ミクロン、Castable Waxレジンでより精細なディテールを表現したい時には25ミクロンの積層ピッチを推奨します。
PreFormの自動生成機能を使って3Dプリント設定を行う方法をもっと詳しく知りたいですか?ウェビナー動画にて手順ごとの解説をご確認ください。
PreFormでの造形設定から3Dプリントへ
これで、デザインを3Dプリントする準備が完了しました。本ステップでは、Form 2、Castable Waxのレジンカートリッジ、レジンタンク、そしてより効果的にプリント後の造形品を洗浄するためForm Washを使用します。
「Form 2でのプリントはすごく簡単で、誰にでもできます。レジンタンク、ビルドプラットフォーム、レジンのカートリッジをセットしたら、後はプリンタ本体のスクリーンの『Print』をタップするだけです。」
―Abbas Saleh氏 ジュエリーデザイナー 兼 金細工師
造詣が完了したら、造形品をビルドプラットフォームから取り外し、Form Washに投入します。Form Washは自動洗浄装置で、イソプロピルアルコール(IPA)を入れたタンクを攪拌することで造形品を洗浄します。過度な洗浄や浸漬を防ぐため、Form Washは洗浄が終わると自動的に造形品を引き上げ、造形品の劣化を防止します。
これで、3Dプリント製モデルをキャスティング(鋳造)する準備は整いました。こちらのウェビナーではSaleh氏によるキャスティングツリーやバーンアウトの準備、モデルの研磨と仕上げに関するトップTIPSをご覧いただけます。
造詣が完了したら、造形品をビルドプラットフォームから取り外し、Form Washに投入します。Form Washは自動洗浄装置で、イソプロピルアルコール(IPA)を入れたタンクを攪拌することで造形品を洗浄します。過度な洗浄や浸漬を防ぐため、Form Washは洗浄が終わると自動的に造形品を引き上げ、造形品の劣化を防止します。
これで、3Dプリント製モデルをキャスティング(鋳造)する準備は整いました。こちらのウェビナーではSaleh氏によるキャスティングツリーやバーンアウトの準備、モデルの研磨と仕上げに関するトップTIPSをご覧いただけます。
3Dプリントの内製化で製作時間とコストを削減
Saleh氏にとっては、単に新しいものを取り入れることや、現在の作業を改善するだけが目的ではありません。3Dプリントをジュエリービジネスの最前線に導入することで、製作時間を大幅に短縮し、コストを削減することができました。Saleh氏がForm 2による内製で製作したリングは、外注時のコストと比較して5分の1になりました。
「社内でプリントとキャスティングを両方行うことは、私が柔軟な対応が可能なジュエラーでいられる唯一無二の方法です。旧来の製作作業では、デザイン工程でスケッチを描き、それを製作する必要があるため、土壇場での変更や修正には対応できません。しかしForm 2があれば、ジュエリーの変更に費やす時間が削減でき、10~15本のリングを掛ける小さなツリーを製作する際には都度4日分の時間短縮ができます。」とSaleh氏は言います。
高度な材料と低コストで導入・運用できる社内用3Dプリンタが、ジュエリーメーカーやデザイナーの仕事のやり方を変えています。工業品質をデスクトップにもたらし、かつては何時間もかけて慎重に作業せざるを得なかった複雑な形状の製作と宝石の装着を簡単なものにしています。
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