オン・ザ・ロード:SLS方式3Dプリントが中小企業の方向転換を可能に

Terra Xのマウント&ホルダー

アトランタでの高級家具から南カリフォルニアでのメルセデス・ベンツのカスタムSprinterバンまで、Jenny、Alex Baumann夫妻は高品質な製品づくりを熟知しています。パンデミック後、「バンライフ」コミュニティにおけるSprinterバンのカスタム市場は過密化していました。そこでバウマン夫妻は思い切って事業を方向転換し、その結果生まれたアフターマーケット自動車製造ブランドTerra Xが大成功を収めることになります。

Terra Xが展開する15種類の製品は、3台のFormlabs Fuse 1+ 30W SLSプリンタで設計・試作・生産されており、拡張可能な内製アプローチで無駄のない一貫した運用を実現し、競合優位性を獲得しています。

「これが私たちのビジネスを変えました。内製化によってすべての工程を100%コントロールできています。中小企業や自転車店なら、このプリンタを1台は導入しておくべきだと思います」

Terra X共同設立者兼オーナー、Alex Baumann氏

バンの改装を超えた世界へ

シンク、ベッド、座席、コンロが装備されたバンの内装

Baumann夫妻は、高品質なバンの製作を手がけたことをきっかけに自動車アフターマーケットのカスタマイズ事業をスタート。そこから、Fuseシリーズによる量産体制を確立したTerra Xへと進化を遂げていく。

長年カスタム家具業界で働いてきたJenny氏とAlex氏は、アトランタに持っていた部屋を引き払うと同時に、持ち物のほとんどを手放しました。最後のカスタム案件(のつもり)として、Dodge Promasterバンを購入・改装し、全米横断の旅へと乗り出したのです。サンディエゴ郡にたどり着いたとき、夫妻はその地域の雰囲気と気候、そしてビジネスの可能性に魅了されたと言います。「300台ほどのバンが集まる会に参加したのですが、皆が私たちの改装について質問してきたんです」とJenny Baumann氏。夫妻は長年のカスタム製作経験を活かし、都市を離れて旅する「バンライフ」を追求する人々に向けてバンの製作を始めました。

しかし2022年、コロナ禍で業界が活況になり、市場は急速に飽和し始めたと言います。「サンディエゴ郡だけでもバンビルダーが27社あり、パンデミック期には本当に大きなブームになっていました」とAlex Baumann氏は当時を振り返ります。最初の事業が転換点を迎えようとしていた頃、夫妻はすでに別のビジネスに移行できる可能性を確信していました。

「ナビ、スマートフォン、iPadなどを車内のどこに取り付けたらよいか、いつも質問を受けていました。バンを製作する個人や企業は、後部座席部の居住空間づくりや外装関連に時間を費やしすぎて、運転のしやすさや『実際の移動を考えた設計』にまで考えが及ばないことが多かったんです」とAlex Baumann氏は言います。

試行錯誤とSEAL隊員からの学び

FDM方式で造形したバン用マウント

当初Baumann氏は、必要な部品を全て外注加工するつもりでいたが、海軍特殊部隊(SEAL)時代にSLS 3Dプリントを使っていたという地元の機械工と協業したことがきっかけで、計画を大きく変更。

FDM方式で造形したプロトタイプ

安価なFDM 3Dプリンタで素早くプロトタイプを製作できたことが、最終的なデザインの確定に役立った。

Alex氏は自身のデザインスキルを活かして試作品を図面に起こし、小型のFDM 3Dプリンタを購入して試し始めました。最初の数個のプロトタイプがうまく機能したため、未塗装の道などを走る過酷なオフロード環境や、多くのバン所有者に共通するタフなライフスタイルに耐えられる別の方法も検討し始めました。

まずは機械工に会い、金型製作の可否を確認しました。「当時は機械工と組んで押出成形で作りたい、と考えていた」というBaumannn氏に対して、機械工は別のアイデアを提案します。海軍特殊部隊SEALの退役軍人であるこの機械工は、ナビゲーションを可能な限り容易にする耐久部品の作り方を長年追求し、SEALチーム向けにiPadマウントをSLS 3Dプリントで製作していました。

「彼に会ったその日、帰り際に『SLS 3Dプリントを使うべきだ』と言われたんです」とAlex氏は話します。夫妻はまず外注から始めることとし、PBF(パウダーベッドフュージョン)方式による部品を受託メーカーに発注しました。最初に製作したのは、SprinterバンのダッシュボードにスマートフォンやiPadを固定するためのマウントとブラケットの2種類でした。

RAMトラック

Terra Xは当初、Ram製のトラックシステムをデザインに組み込んで製品化していた。その製品が軌道に乗り始めると、Ramからの提案でパートナーシップを締結し、Terra Xは同社の公式ディーラーとなることに。

ブラケットは組み立てコストが高額で、ダッシュボードへの取り付けにはOEM製のトラックを使用していました。その後、販売数が伸び始めるとOEMのRamから注目されるようになり、公式ディーラーに指名されるまでになりました。「その瞬間から利益率が大きく改善しました。収益を上げられるようになり、すべてを内製化することを考え始めました」とJenny Baumann氏は言います。

内製化の検討

メルセデスのSprinterバンに組み込まれたNavidock製品

内製化により、Terra Xは製品ラインナップをさらに拡充。写真のNavidockはFuse 1+ 30Wで造形され、メルセデス・ベンツのSprinterバンの運転手がナビを容易に取り付けられるよう設計されている。

SLS方式プリンタを導入したことで、夫妻は単に利益率を高められただけでなく、製品の多様化と事業の拡大を自分たちのペースで進められるようになりました。「導入を決めた時点で、すでに5つの新製品のアイデアがありました。競合に比べて3歩先のデザインまで進めていたんです」とAlex Baumann氏。

発注先のプリントファームは、手頃な価格設定を維持するために大量発注を要件としており、Alex氏が計画していた製品数では釣り合いがとれませんでした。まずは機能的で高品質な部品を少量製作して市場のニーズを確認し、その後で金属部品と適切に組み合わせる必要があります。

「どんなに素晴らしいアイデアを持っていても、満たさなければならない最低発注量が大きすぎて妥当な価格では実現できませんでした。それにプロトタイプの質も良くなかったため、理想通りの製品を作るには自分でやるしかない、と感じました」とAlex氏は言います。

納品される部品は最適な向きや構造強度を考慮したものではなく、製作側の効率を優先した詰め込み配置でプリントされたものでした。ブラケット前面にラインの入った部品が複数届いた時、それが製品性よりも利益性を優先したネスティングの結果であると見抜いていたAlex氏は、「それが2回続いた時点で内製化を決心した」と言います。

Terra XのFuse 1+ 30W

広い作業室に設置された3台のFuseシリーズプリンタとFuse Sift

Fuseシリーズは設置面積が小さく価格も手頃なため、多大な初期投資を行うことなく需要の増加に応じたプリント能力の拡張が可能。段階的に事業を成長させることができる。

導入を決めた後、Jenny氏はプリンタの調査をAlex氏に任せました。「彼は機械のリサーチを徹底する人ですし、私たちは高価な生産設備を扱ってきた経験があるので、安定して信頼できる機械を導入することの重要性は理解しています」とJenny氏は言います。

調査の結果、Fuse 1+ 30Wは中小企業でも導入しやすい価格で、物価の高いサンディエゴ郡でもサイズ・電圧ともにちょうど良いことが分かりました。

「南カリフォルニアなので、110ボルト未満で動く機械が必要でした。Formlabsのチームがテストプリントをしてくれたのですが、サイズ、表面仕上げ、公差、価格のすべてが完璧でした」とAlex氏。信頼できる生産ワークフローの構築にはさほど時間を要さず、プリンタを受け取ったその日から稼働を開始しました。

「すぐに狙いどおりの結果が出ました。最初から全開で稼働させていたのですが、初回のプリントが完璧に決まり、そのまま販売を開始しました」

Terra X共同設立者兼オーナー、Alex Baumann氏

生産の冗長性とスケーラブルなシステム

夫妻は発売開始と同時にFuse Blastを導入し、手作業にかかる時間をほぼ半減しました。Fuse Siftで造形品をアンパックし、Fuse Blastでブラスト処理と研磨を行い、その後、料理用のスロークッカーとRIT染料(ブラック)を使った染色で仕上げていきます。

「Polishing Systemにより、光沢のある美しい黒色に仕上がります。ベーパースムージングかと聞かれるほどの品質で、染料の浸透力も抜群です。屋外カメラマウントのUV耐候試験もしていますが、1年経っても日光による色褪せは見られません」

Terra X共同設立者兼オーナー、Alex Baumann氏

製品が好調な売り上げを記録するにつれ、Terra Xはボトルネックに直面しました。夜間プリントを行ってもなお、生産能力が不足してきたのです。需要過多に対応するために2台目のFuse 1+ 30Wを導入し、さらに半年後には3台目を追加しました。Alex Baumann氏は、製造におけるストレス要因を減らし、「もしも」に備えるうえで冗長性が重要だと考えています。「プリンタが1台必要なら2台、2台必要なら3台入れたほうが良いでしょう。今では3台すべてを毎日フル稼働させています」とBaumann氏は言います。

Terra Xは顧客対応と納期厳守を最優先に掲げ、在庫切れや納品遅延を防ぐため、週6日・3台体制でプリントし続けています。競争の激しいアフターマーケット自動車業界において、丁寧な顧客対応が高品質製品の売れ行きを支えています。

ダウンタイム削減と迅速な対応を実現するエンタープライズサービス

夫妻は自社の顧客対応だけなく、取引先ベンダーの顧客対応にも高い水準を求めています。ベーシックサービスプランで運用を始めた夫妻ですが、3台体制でほぼ24時間稼働するようになってからは、ビジネスをもう少し実践的に理解し、基本的な切り分けを行ってくれる前提の支援を必要としていました。

「私たちは所有するプリンタの使用には精通していますし、状況もしっかり把握しています。何か問題があった時に基本的な説明から始めるのではなく、具体的な問題解決にすぐに着手してくれるようなサポートが必要でした」とJenny氏は言います。そこで、ダウンタイムを最小化し迅速な復旧を可能にするFormlabsのEnterprise Service Plan(ESP)を導入し、速やかな立ち上げを実現しました。

現在は、夫妻のニーズとワークフローを理解したESPの担当者がつき、何か問題が起こった際には要点に素早く切り込める体制が整っています。「Enterprise Service Planなら互いに要点を押さえて話せますし、担当者も私たちが機械をきちんと扱えることを理解しています。Formlabsが真剣に製造プロセスの一部になろうとしてくれていると実感します」とAlex氏は言います。

ダッシュボードのその先へ

FDM方式で造形したバン用マウント

15種類の製品の売り上げが既に好調に推移しているTerra Xは、さらなる事業拡大に向けた準備が整っている。試作から量産までを単一の内製ワークフローで完結することで、新製品を極めて短期間で市場投入が可能に。

ダッシュボード3Dプリント

Fuseシリーズで造形しFuse Blastの研磨システムで仕上げるTerra Xの部品は、高い機能性を備えながら車内インテリアに自然に溶け込む。

Ramが夫妻の製品を評価し公式ディーラーに迎えたことが、Terra Xのビジネスにおける大きな転機となりました。現在15種類の製品を展開しながら、さらなるアイデアも生み出し続けるTerra Xは、次の一歩に踏み出す段階に来ています。新たなOEM、新モデルと新製品、そして新しいプリンタの導入により、大幅な固定費増や大規模なインフラ変更を経ることなく、迅速な拡張が可能になります。Fuseシリーズのプリンタにより、コストを倍増させることなく生産能力を倍増してきたTerra Xの製品は、今後も需要が衰える気配はありません。

「多くの中小企業は、巨額の初期コストや大量生産を前提とした事業が必要ではないか、デザインが盗まれる可能性はないか、などといった不安に直面します。そういった状況の中で、Fuseシリーズのようなソリューションは本当に良いアイデアだと思います。既にある設備を基盤に、自分たちで作りきることができる。それが私たちのビジネスを変えました」

Terra X共同設立者兼オーナー、Alex Baumann氏

以下よりFuseシリーズのさらなる活用事例をご覧ください。Fuse 1+ 30Wで造形した無償サンプルパーツのリクエストも受け付けています。お気軽にお申し込みください。