高靭性・切削加工性・水密性:Nudge Zeroを支える材料

Nudgeデバイスの筐体部

幾何学的な複雑さ・水密性・耐衝撃性・精密性・切削加工性・生体適合性…Nudge Zeroの材料要件は多岐に渡り、定められたスケジュール内でこれら全てを満たすには、3Dプリントを活用した内製が唯一の方法です。

Nudge Zeroは、低強度集束超音波を使用し、オピオイド中毒から耳鳴り・うつ病に至るまで、あらゆる脳疾患を治療するClass II医療器具となることが期待されています。部品には高水準の要件が求められ、その中にはMRI内部で動作しなければならないものも含まれます。さらに、エンジニアは1日以内(あるいはそれ未満)で設計改良を行える必要があります。数年前であれば製造がほぼ不可能だったこれらの部品も、3Dプリント技術と材料の進化により、Nudgeチームは今では1日もかからずに社内で反復できるようになりました。

「これがうまくいき、理論上想定されている症状の一部でも治療できるようになれば、何億人もの人々の生活を劇的に変えられる可能性があります。実現可能性と、多くの人々を救うという計り知れない可能性の両方を秘めた技術は、ほとんどありません。だからこそ、できる限り速く開発を進める必要があるのです」

エンジニア、Sam Schmitz氏

Nudge Zeroは次の3つのコンポーネントで構成されています。

  • コア:多くのチャネルを制御する超音波フェーズドアレイを、MRI装置内で使用可能なヘルメット構造に組み込んだもの

  • カート:超音波アレイ用の水を脱気・脱イオン化し、加温する装置

  • 駆動エレクトロニクス:超音波アレイのビームフォーミングに必要な波形を生成する回路 

カートとコアにはいずれも、コアの筐体部分を含め、Form 4Lで造形した3Dプリント部品が使用されています。追加のシリコン部品は3Dプリント製の成形型で鋳造しますが、これらすべてを1日以内に完了できます。 

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用途に最適な材料を

「Tough 2000レジンは、SLS部品に匹敵する耐久性を持つ点で実製品用材料として本当に信頼しています。落としたり叩いたりしても壊れません」

エンジニア、Sam Schmitz氏

材料は重要です。コアの一部には、タップ加工や通常使用に耐える水密性と耐衝撃性が必要で、別の部分には生体適合性が求められます。Schmitzは部品にFormlabsの複数の材料を使用しており、直近ではTough 2000レジンの新バージョンを追加しました。

Tough 2000レジン:切削加工のポリカーボネート部品を置き換え

Tough 2000レジンは、ABSに匹敵する剛性・強度・耐衝撃性を備えた材料です。Schmitz氏は当初、直近で必要としていた薄肉部品で最新のTough 2000レジンの性能を試すことにしました。厚さ1mmの部品が、折れることなく指定の場所にカチッとはまることを確認した後、Schmitz氏は余分にプリントしたもので更なるテストを行いました。

「造形品にハンマーを何度か叩きつけてみたんです。その時に、この材料はすごい、と思いました。耐衝撃性がどうしても必要なので、他にもポリカーボネート製の薄肉部品がたくさんあります。以前は切削加工に出していたのですが、部品を設計し直したタイミングですべてTough 2000レジンに置き換えました。完璧な働きをしてくれています」

エンジニア、Sam Schmitz氏

カート上の操作パネル

ボタンパネルはTough 2000レジンで造形。

Schmitz氏は、カバーを再設計するにあたり、これまで外注していたポリカーボネート加工部品をTough 2000レジンを使った3Dプリントに置き換えました。Form 4Lがあれば、必要に応じて再設計し、数時間以内にプリントすることが可能です。

Tough 2000レジン:精細なディテールにこだわった大型の水密筐体

アレイ筐体は長さ約300mm、直径約250mmと大型の部品です。2つのパーツがスナップで嵌合し、かつ水密であるために、寸法精度に加え反りやクリープに対する耐性も求められます。さらに、精細なディテール表現も必要です。この装置はMRI内で動作する必要があるため、装置内に金属は使用できません。ネジもプラスチックにする必要があります。さらに、数ブロック離れたMRIまで搬送してセッションで使用し、その後は別の試験場所へと移されます。搬送は決して穏やかではないため、筐体には耐衝撃性が必要です。

「圧入型やヒートセット型のヘリサートは使えないので、実際にタップ加工ができるだけの強度も必要です。この要素は特に重要です。これらはすべてM3ねじで、Tough 2000レジンV2で作る部品に直接タップを切っているのですが、うまく機能しています」

エンジニア、Sam Schmitz氏

アセンブリは、ゴム製ガスケットを挟むようにして組み付けられ、締結すると水密状態になります。「念のため」の処置として、Schmitz氏はRTVも薄く塗布しています。「特に新しいサポート材では全体がきれいに造形でき、大きな隙間を作らずに組み付けられることが分かりました。」

当初、筐体はSLS(粉末焼結積層造形)方式の3Dプリントで外注していたSchmitz氏ですが、Tough 2000レジンをテストしたこと、そしてForm 4Lの造形サイズなら対応可能であることから、筐体の内製化を試みることにしました。Tough 2000レジンは求められる耐衝撃性を満たせるだけでなく、寸法精度と表面品質も外注品より優れていたと言います。Schmitz氏は穴を公称タップ下穴径で造形し、その後、ドリルで仕上げ加工を行います。 

「驚くほどの時間削減効果があります。筐体の半分を1回のビルドで造形できるので、2つの部品が実質1日で揃うというのは本当に助かります。受託メーカーなら数週間かかっていましたし、早く仕上げたい場合には特急料金として数千ドル近くかかりますから」

エンジニア、Sam Schmitz氏

シェル一式の製造コスト

プリンタ総コスト
外注大型SLS$7,000〜10,000
内製Form 4L$145

時間短縮

部品の製造期間部品のサンディング時間下地処理と塗装の時間合計
外注SLS5日(特急)8時間2時間5日+仕上げ10時間
SLA光造形で内製1日3時間2時間1日+仕上げ5時間

再造形でさらに時間を短縮できたSchmitz氏は、「新しいTough 2000レジンを使った筐体は、外注の筐体よりも寸法精度が高い」と言います。

仕上げ工程でも、時間と作業工数を大幅に削減できます。外注の大型SLS部品では、後処理として8時間のサンディングが必要でしたが、Form 4LでTough 2000レジンを使ってプリントすることで、軽くサンディングを施した後は下地処理と塗装を行うだけで希望の色に仕上げられます。サンディング後にミネラルオイルを塗布する方法も試しましたが、ミネラルオイルはMRIで蛍光を発します。

Schmitz氏は、将来的に装置を生産する段階では、数百台規模の生産では射出成形を採用する可能性が高いものの、そのためにはアンダーカットや内部の穴あけなど、大幅な再設計が必要になると考えています。そのため、「仮に50台作る必要がある場合でも、おそらくTough 2000レジンで造形し続けるだろう」と述べています。

サンプルパーツ

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Tough 2000レジンV2 は、ABSに匹敵する強度と剛性を持つ頑丈な材料で、靭性とともに高い耐熱性や耐クリープ性を備えています。

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Greyレジン:成形型とテスト品

Nudgeでは4台のForm 4Lが常時稼働しています。すべてのテスト部品と成形型が、Nudgeの主力であるGreyレジンで造形されています。Schmitz氏はGreyレジンで複雑な2分割・3分割・4分割のシリコン成形型を製作しています。この成形型は、その形状とアンダーカットのため、5軸CNCを含め3Dプリント以外の方法では製作が不可能です。

成形品

ヘッドシールは、ユーザーの頭部をコアのウォーターバス内に密着させるコンフォーマルガスケットです。大型のこの部品を作るための成形型には多数のアンダーカットがあり、製作には3Dプリントが最適です。さらにForm 4Lでは、「これらをすべて2時間半で造形できるので、昼食前に1回反復し、ガスケットを流し込み、昼食を取り、テストして、午後にもう1回サイクルを回せます」とSchmitz氏は言います。「合わなければ、その日のうちに別のものを作ることができる。これは本当に驚くべきことです。これまでに何十個もこうした部品を製作してきました。」

Rigid 10Kレジン:熱成形型

3Dプリントした成形型で熱成形されたプラスチック品

熱成形型の一部は、Nudgeが主力とするコスト効率の高いGreyレジンで造形されていますが、小型部品や非常に精細なディテール・反りを起こさずに多数のサイクルに耐える必要がある成形型には、Rigid 10Kレジンを使用しています。

Rigid 10Kレジンは高密度のガラス充填材料で、高温・高圧下でも安定性があり、熱成形部品の高ボリューム生産に耐える理想的な材料です。

生体適合性レジン

透明な3Dプリント部品

テスト部品の多くはGreyレジンで造形されますが、仕様が確定してからは、皮膚やウォーターバスに触れる3Dプリント部品は生体適合性レジンで製造します。アレイ筐体にはBioMed ClearレジンTough 1500レジンを使用しています。

Nylon 12パウダー

黒いマウントに取り付けられた白い部品
レジンを使った3Dプリントに加え、Schmitz氏は

Fuse 1+ 30Wでも造形しています。振動するMRI装置内で装置をしっかりと保持するための応力と圧力を受けながら、装置の調整機構を担う部品には、Nylon 12パウダーが使用されています。Schmitz氏はPreFormの自動パッキング機能を使い、造形時間を最小化しています。

3Dプリントによる実製品用部品

「こうした3Dプリント品の多くは、適切に設計し、対応可能な範囲で正しく使用し、適切な解析を行うことで、実製品用部品になり得る可能性があります。製造プロセスの中で、3Dプリントから従来の製造方法に移行しなければならないタイミングがあるとすれば、それは想像よりずっと後期の段階です」

エンジニア、Sam Schmitz氏

現在、社内試験を実施中のNudge Zeroでは、テストのたびに新しい部品や設計の変更が必要になります。将来的に従来手法で製造する可能性はあるものの、複雑な形状は切削加工では対応できないため、多くの部品を再設計する必要があります。Schmitz氏は、Form 4LとFuse 1+ 30W、そして高機能材料で実現できることを考えると、Nudge Zeroを内製する未来も視野に入れていると言います。

Form 4LとFuseの詳細については、Formlabsの3Dプリンタ製品ページをご覧ください。Formlabs材料の品質を実際にお確かめいただける無償サンプルパーツのリクエストも受け付けています。お気軽にお申し込みください。