ベーパースムージング(溶剤噴霧)は、SLS(粉末焼結積層造形)方式で3Dプリントした部品の表面処理によく使われる方法で、表面に開いている細かな穴を塞ぐことで粗さを低減し、部品の外観と手触りを向上させます。ベーパースムージングにより、射出成形品に匹敵するほどの品質と耐久性を備え、実製品用部品として最適なSLS 3Dプリント品が出来上がります。
Formlabsは、ベーパースムージング装置を提供する次の大手2社と共同で、SLS 3Dプリント品にベーパースムージングを施した結果を検証しました。
- Additive Manufacturing Technologies(AMT)との共同検証レポート(使用材料:Nylon 12パウダー、Nylon 11パウダー、TPU 90Aパウダー、Nylon 11 CFパウダー、Nylon 12 GFパウダー)
- DyeMansionとの共同検証レポート(使用材料:Nylon 12パウダー)
共同検証の詳細と全結果を確認するには、技術資料をダウンロードしてください。
ベーパースムージングでSLS 3Dプリント品の表面品質を向上:FormlabsとAMTの共同研究
本製品仕様では、ベーパースムージングのメリットと考慮点、そしてFormlabsの3Dプリンタで造形したSLS 3Dプリント品にAMTのベーパースムージング処理装置で後処理を施した結果をご紹介しています。
DyeMansion VX1によるNylon 12パウダー造形品のベーパースムージング
本技術資料では、DyeMansion VX1でベーパースムージングを施したNylon 12パウダー造形品の表面品質、機械的特性、寸法精度について報告しています。
ベーパースムージングとは
ベーパースムージングとは、SLS方式で3Dプリントした部品の表面を溶剤蒸気にさらす化学プロセスです。この工程では、熱と溶剤蒸気の組み合わせによって表面の一部を溶かし、より滑らかで気孔のない表面に仕上げます。
この処理は主に表面層に作用し、内部のコアはそのまま保たれます。求められる表面品質を実現するために、処理装置の中で条件をカスタマイズし、表面のスムーズさを調整します。多くの場合は、ベーパースムージング用の装置を提供するメーカーが開発したカスタム設定を使用します。
ベーパースムージングは、消費者製品や患者に合わせた医療器具などの用途で、表面を滑らかにするだけでなく興味深いデザインも演出できる。
SLS 3Dプリント製部品にベーパースムージングを施すメリット
SLS方式で3Dプリントした部品にベーパースムージングを施すことで、以下のようなメリットが得られます。
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表面粗さと色の均一性:
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FormlabsがAMTおよびDyeMansionと共同で実施した研究では、ベーパースムージングにより、FormlabsのSLS用パウダーによる造形品の平均表面粗さが63〜81%低減することが確認されています。衝撃強さや寸法精度においても同様の一貫性が見られます。
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バクテリアの繁殖と吸湿の防止:
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FormlabsとAMTによる検証では、Nylon 12パウダーの造形品上でMRSAの増殖が60%減少したことが確認されました。
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見えない部分への適用性:
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ベーパースムージングは、直接目で確認できない部分も含め、部品のすべての表面に均一に作用するため、他のコーティング工程よりも大きな利点があります。
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機械的特性の維持:
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FormlabsとAMTによる検証では、ベーパースムージングによる機械的特性の変化はごくわずかなものでした。これもベーパースムージングの利点の一つで、部品の機能性や構造的な完全性を損なうことなく外観や表面品質を向上させられます。
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ベーパースムージングは、画像のカスタム香水ボトルのような消費者製品の表面品質と審美性を向上させる方法として最適。
ベーパースムージングは、構造的な完全性を損なうことなく処理を行えるため、薄肉構造の造形品にも使用できる。
SLS 3Dプリント製部品のベーパースムージング方法
SLS方式で特に実製品用部品を大量に製造する企業の場合、ベーパースムージング用の装置を購入することも可能です。現在、ベーパースムージング装置を提供する主な企業は、AMTとDyeMansionの2社です。両社ともベーパースムージング用のハードウェアと消耗品を販売しています。装置の価格はサイズや処理能力、使用可能な材料種類によって異なりますが、通常は$35,000前後からで、融資のオプションも利用できます。
一方で、SLSで3Dプリントした部品のベーパースムージング処理をサービスとして提供する、信頼できる受託メーカーや外部委託業者も数多くあります。技術資料をダウンロードすると、推奨業者をご確認いただけます。
ベーパースムージングを行う前の考慮点
ご自身でベーパースムージングを行う場合は、部品の設計上の特徴と処理設定に注意が必要です。
ベーパースムージングのプロファイル
ベーパースムーシングを行う会社やベーパースムージング用の装置には、それぞれ独自のパラメーターと溶剤が揃っています。最も頻繁に調整が行われるパラメータは、温度と圧力です。さらに、すべてのSLS 3Dプリント用材料で最高の品質を引き出せるよう、ベーパースムージングメーカーが材料に合わせて開発した独自のプロファイルがあります。
- FormlabsとAMTは、FormlabsのすべてのSLS 3Dプリント用材料に合わせた専用の装置設定プロファイルを開発しました。特別開発されたプロファイルを使用するには、AMTに直接お問い合わせください。
- FormlabsとDyeMansionは、Formlabs本社(米国ボストン)でVX1によるベーパースムージングの共同評価を完了し、FormlabsのSLS材料との適合性を確認しました。
部品の形状
肉厚や部品全体のサイズなどの形状は、スムージング処理に影響する場合があるため、ベーパースムージングのプロファイル設定時に考慮が必要です。例えば、AMTとDyeMansionはいずれも、薄い部品(1〜2mm)と厚い部品(2mm超)向けに、異なる装置設定プロファイルを用意しています。
ラックがけの痕跡
ベーパースムージング工程では、部品を金属製のワイヤーラックから吊り下げる必要があるため、ワイヤーやクリップを取り付けられる形状が必要です。こういった場所の痕跡は最小限に抑えられますが、完全に無くすためには、3Dモデル設計時に結合ポイントを追加するか、量産用途の場合は設計段階ですべての部品を結合しておくなどの検討が必要です。
溶剤の溜まり
部品にカップ状の箇所がある場合は、溶剤蒸気が液体となって溜まってしまわないよう、カップ状の部分を下向きにしてラックに吊るすことをお勧めします。また、可能であれば部品の設計としてそのような形状はできるだけ避けることも検討してください。
安全性と作業場所に関する考慮点
AMTは、ベーパースムージング装置PostPro SFを設置および操作するにあたって、作業場所が安全基準を満たしているかどうかを確認できる包括的な作業場所の準備ガイドを提供しています。このガイドには、潜在的なリスクを軽減するために重要なステップとなる、オペレーター向けの安全性および装置の取り扱いに関するトレーニングが含まれています。FormlabsとAMTが提供する推奨事項の詳細や、表面の気孔率、抗菌性、吸湿性に関する共同検証の結果については、製品仕様をダウンロードしてご覧ください。
ベーパースムージングの費用
ベーパースムーシングのコストは、部品のサイズ、使用する材料、部品表面の複雑さ、部品の数量など、いくつかの要因によって変動します。一般的に、ベーパースムージングのコストは部品のサイズと数量にほぼ比例します。以下は、お客様ご自身で3Dプリントした部品をコロラド州の受託メーカーAvid Product Developmentに送付し、ベーパースムージングを依頼する場合の費用例です。
| パーツ | 硬質の矯正用インソール | 眼鏡フレーム | 腕時計バンド |
|---|---|---|---|
| 材料 | Nylon 11パウダー | Nylon 12パウダー | TPU 90Aパウダー |
| モデル寸法(mm) | 157 x 23 x 80 | 144 x 36 x 47 | 262 x 13 x 37 |
| 数量 | 50 | 80 | 50 |
| 焼結済みパウダーのコスト(1点あたり) | $3.98 | $0.62 | $2.98 |
| ベーパースムージングのコスト(1点あたり) | $0.98 | $0.49 | $0.78 |
| 造形品1点あたりの合計コスト | $4.96 | $1.11 | $3.66 |
ベーパースムージングを施したSLS 3Dプリント製部品の用途
多くのエンジニアや製造業者、製品設計者が、SLS 3Dプリント製部品の外観や実製品用部品の機能を向上させる方法としてベーパースムージングを利用しています。さまざまな業界や用途でSLS方式の活用が広まるにつれ、ベーパースムージングもSLS工程においてさらに不可欠な要素となっていくでしょう。
ベーパースムージングは、このSLS 3Dプリント製の柔軟なブーツのような自動車部品にも有効です。
眼鏡フレームにベーパースムージングを施すことで、より快適なつけ心地を実現できる。
SLS 3Dプリント製の矯正用インソールにペーパースムージングを施して快適性と審美性を向上。
自動車部品
ベーパースムージングは、エアインテークマニホールド、エンジンカバー、ダッシュボード部品といった自動車部品の表面品質や耐久性の向上にも活用できます。また、ガソリンやディーゼル燃料などの溶剤が使われる自動車用途では、湿気や溶剤の吸収を抑える効果も役立ちます。ベーパースムージングにより表面の気孔が塞がれ、液体や気体の浸入が低減されるためです。
医療器具
SLS方式は現在、医療器具の製造に広く活用されています。ベーパースムージングにより、元の材料の生体適合性を維持しながら、義肢や補正装具、医療器具アセンブリなどの造形品の表面品質を向上できます。また、ベーパースムージングによって患者様が補正装具の装着時に感じる表面の摩擦を大幅に低減し、細菌が増殖する可能性も低減できます。
消費者向け製品
ベーパースムージングはまた、電話ケースや眼鏡、ゲーム部品、その他電子アクセサリーなどの消費者向け製品の外観を、Class AまたはClass Bレベルに高めることができます。この処理では表面の光沢もある程度調整でき、光沢のある仕上がりからセミマットな仕上がりまで対応できます。審美性を最大限に高めるためには、ベーパースムージングの後にさらにコーティングを行うこともご検討ください。硬質のSLS 3Dプリント用材料を使った造形品にはCerakote(セラコート)を、TPU 90Aパウダーを使った造形品にはBASF Ultracur3D Coat Fなどがお勧めです。
ベーパースムージングを取り入れる
技術資料に記載された共同検証の結果が示すとおり、ベーパースムージングによって表面の気孔率や吸湿性を低減し、抗菌性や外観を向上させることができます。
SLS 3Dプリントの作業手順の詳細や、ベーパースムージングを組み合わせたSLS方式がお客様の用途に適しているかどうかのご相談は、Formlabsまでお気軽にお問い合わせください。ベーパースムージング装置の購入についてAMTまたはDyeMansionにお問い合わせの際は、各社のWebサイトをご覧ください。