3Dプリント方式の比較:FDM vs SLA(光造形)

FDM vs. SLA

3Dプリンタやアディティブマニュファクチャリング(積層造形)市場は、近年急速に変化しています。樹脂の3Dプリントはもはや趣味の領域ではなく、高機能なデスクトッププリンタはあらゆる業界にとって不可欠なツールへと発展しました。製品開発における試作品、試験・生産・組立用治具、量産用金型を起こす前の簡易型製作から果ては実製品まで、幅広い用途で活用可能な機器として定着した3Dプリンタは、製造業、歯科、ジュエリー、ヘルスケアなど、さまざまな分野で活用されるようになりました。

最も普及している3Dプリントの造形方式と言えば、熱溶解積層(FDM)方式とSLA(光造形)方式の2種が挙げられます。どちらの方式もデスクトップサイズに小型化され、より手頃な価格でより使いやすく、より高機能なものとなっています。3Dプリンタの選定時には、順序としてまず造形方式を決定することが、確実に有用性が認められる最も低リスクな導入への近道となります。

そこで本記事では、FDMとSLAの両方式の詳細を解説し、造形品質、材料、用途、作業手順、スピード、コストなどで多角的に比較を行い、どちらの方式がご自身の用途に最適かを判断いただく一助となるようご説明していきます。

FDM vs SLA vs SLS video guide
Guide

業務用3Dプリンタ選定時に知っておくべき6つのこと

3Dプリンタの選定には、まずご自身の用途に合った造形方式の選定から始め、同じ造形方式の機器同士で精度や材料、コスト等を比較するのが最も確実です。こちらの記事では、様々な視点から3Dプリンタ選定時に知っておくべきポイントを体系化してまとめています。

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FDM(熱溶解積層)方式とは

FDM方式は、FFF(Fused Filament Fabrication)とも呼ばれ、家庭用としても広く普及している造形方式です。FDM方式の3Dプリンタは、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PLA(ポリ乳酸)などの熱可塑性樹脂の線材をロール状にした、フィラメントと呼ばれる材料を加熱してノズルから押し出すことでプラットフォームに塗布するように動作し、造形品が完成するまで1層ずつ積層されていきます。

FDM方式3Dプリンタの動作

FDM方式の3Dプリンタは、PoC(概念実証)など初期段階での試作に最適で、通常は切削で製作するシンプルな形状の部品を、手早く低コストで製作したい場合などに適した造形方式です。

SLA(光造形)方式とは?

光造形方式は、1980年代に発明された世界初の3Dプリント技術であり、現在でも特に精度の面で業務用の造形方式として最も定評ある方式です。SLA方式の3Dプリンタは、紫外線レーザーでレジンと呼ばれる液体の光硬化性樹脂を硬化させ、光重合と呼ばれるプロセスで個体の樹脂として造形を行うものです。

SLA方式3Dプリンタの例

SLA方式によるレジンの3Dプリンタは、様々な先端材料で高い精度、強度面での等方性、そして水蜜性のある試作品や部品を、微細な形状や滑らかな表面仕上げで製作できることから、高い評価を得ています。SLA用レジンは、標準的な熱可塑性樹脂、あるいはエンジニアリングプラスチック、工業用プラスチックに匹敵する、幅広い光学的・機械的・熱的特性を備えています。

レジンでの3Dプリントは、金型、治工具、機能部品など、厳格な寸法公差と滑らかな表面を必要とする詳細な試作品製作に適した造形方式です。SLA方式はエンジニアリングや製品設計から製造、歯科、ジュエリー、アート、エンターテインメント、模型製作、教育分野に至るまで、様々な業界で広く活用されています。

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3Dプリント方式の比較:FDM vs SLA

精度と造形品質

3Dプリントで一層ずつ部品を作り上げるプロセスでは、精度という面で各層ごとにズレが生じてしまう恐れがあります。積層プロセスは各層の表面品質、精度のレベル、その精度の再現性(次以降の層でも全く同じ位置に積層できるかどうか)に影響します。その結果、造形品全体のプリント品質にも影響します。

FDM方式の3Dプリンタは、溶融した材料を線状に積み重ねることで積層します。このFDM方式プリンタの解像度の定義は、押出ノズルからの押出径とノズルの動作精度で決定されます。ノズルから押し出されるため、各層は円柱状の層となり、各層間にはログハウスの壁面のようにアール面同士の隙間が発生します。そのため層と層が完全に固着しない場合があり、通常は積層痕と呼ばれる縞模様が表面にはっきりと現れます。こうした特徴から、FDMは他方式と比較して複雑な形状を表現するには不向きとされています。

一方でSLA光造形方式では、液体のレジンを高精度のレーザーで硬化させて各層を形成するため、精細なディテールを表現することができ、高品質な結果を一貫して得られるという信頼性があります。その結果、SLA方式は微細な形状と滑らかな表面品質、非常に高い精度、そしてその精度の再現性にて定評がある方式です。

―3Dプリントにおいて、精度、精度の再現性、そして造形の寸法公差は少し複雑で、よく誤解される用語です。3Dプリンタの性能をよりよく理解するために、「精度」という言葉が意味するところを詳しく見ていきましょう。

SLA parts have sharp edges, sleek surfaces, and minimal visible layer lines. This example part was printed on the Formlabs Form 3 desktop SLA 3D printer.

SLAでのプリント品は、シャープなエッジ、滑らかな表面を備えています。積層痕は存在しますが非常に微細でFDMのそれのような形状的な凹凸は生じない。上のサンプルはFormlabsのForm 3で造形したもの。

また、熱ではなく光(UV光)でプリントすることも、SLA方式の信頼性が高水準なものとなる要因の一つです。室温に近い温度でプリントを行うことで、FDM方式でのプリント中に起こり得る熱膨張や熱収縮を発生させることがありません。

左がFDMでの造形品、右がSLAでのプリント品。高精度レーザーにより、SLA方式は複雑な形状の造形にも対応できる。

左がFDMでの造形品、右がSLAでのプリント品。高精度レーザーにより、SLA方式は複雑な形状の造形にも対応できる。

FDM方式が押出動作によって機械的に各層を固着させるのに対し、SLA方式は光硬化性樹脂によって各層を光重合で固着させ、水や空気を通さない高密度な造形を行います。このSLA方式は横方向の強度も高く、造形品の強度が向きによって変わることがない、等方性を備えたプリントを実現します。そのためSLA方式は材料の物性が重要なエンジニアリングや製造用途にも非常に適していると言えます。

左:FDMプリント品、右:SLAプリント品。比較的単純な形状では造形品質の差はさほど目立たないものの、SLAプリント品は高密度で等方性であるため製造業で幅広い用途に活用される。

左:FDMプリント品、右:SLAプリント品。比較的単純な形状では造形品質の差はさほど目立たないものの、SLAプリント品は高密度で等方性であるため製造業で幅広い用途に活用される。

 

Form 3L Sample Part
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材料と用途

樹脂を押し出して積層するFDM方式は、ABS、PLA、それらブレンド材料など、さまざまな熱可塑性樹脂のフィラメントが使用できます。趣味の分野でFDM方式が普及した面もあり、カラーの選択肢も豊富です。また、木や金属のような質感を表現するために、さまざまな実験的なフィラメントのブレンドが存在します。

ナイロン、PETG、PA、TPUなどのエンジニアリングプラスチックに加え、PEEK、PEIなどのスーパーエンプラと呼ばれる高機能材料を利用できるものもありますが、ごく一部の業務用FDMプリンタに限られ、そうした機種では導入コストが他方式より安価というメリットはあまり感じられないかも知れません。

FDMのフィラメントとブレンドには幅広いカラーの選択肢がある。(出典:All3DP.com)

FDMのフィラメントとブレンドには幅広いカラーの選択肢がある。(出典:All3DP.com)

SLA用の材料であるレジンは、軟質や硬質、ガラスやセラミックなどを充填した複合材、高耐熱や耐衝撃性などの機械的特性を付与したものなど、ある目的に合わせてさまざまな材料を開発できる点に優位性があります。多彩な樹脂を配合することで、標準的な熱可塑性樹脂、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンプラに匹敵する光学的、機械的、熱的特性を提供することが可能です。

SLA方式で使用するレジンは、多彩な用途に対応する様々な材料が開発できる。

SLA方式で使用するレジンは、多彩な用途に対応する様々な材料が開発できる。

こうした汎用性や機能性を備えている点を理由としてSLA方式の3Dプリンタを導入するケースもあるようです。ある課題を解決できる機能性材料を見つけた後、さらに多くの可能性を発見し、SLAプリンタは様々な材料の多彩な機能を活用するためのツールとなります。

SLA方式に特有の材料特性は、例えば以下のようなものがあります。

Clear Resin 3D printed part

透明材料

SLA方式は、デスクトップサイズでほぼ完全に透明な部品を製作できる唯一の3Dプリント方式です。複雑なアセンブリ、マイクロ流体装置、金型や治具、光学部品、照明部品、あるいは半透明な部品の製作に最も適した方式です。

Elastic Resin 3D printed goggles

軟質材

硬質ゴムやTPU、シリコーン成形品のような外観と挙動を示し、何度も繰り返し使用できる耐久性を備えた軟質材が使用できる点もSLA方式の強みです。

Hight Temp Resin 3D printed parts

高耐熱材料

FormlabsのHigh Tempレジンは、0.45MPaでの荷重下にて238℃の荷重たわみ温度を備える高耐熱材料で、デスクトップ3Dプリンタに対応する材料では最高の耐熱性を持っています。

Castable Wax Resin 3D printed ring

ロストワックス鋳造のマスター

Formlabsのジュエリー用レジンであるCastable Waxシリーズは、ワックス充填率20%と40%の2種があり、微細なフィリグリーが表現できるもの、滑らかな質感を表現できるものと多彩なニーズに対応します。

Dental Resin part

デンタル

生体適合性を持つサージカルガイドやスプリント、成形型、モデル、クリアアライナーモデル、総義歯などの歯科用途に特化した材料が使用できるのもSLA方式の特徴です。

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用途に最適な材料を選定:
Material Selector

3Dプリントの材料選定にサポートが必要ですか?FormlabsのMaterial Selectorがお客様の3Dプリントの用途や必要な特性に応じて最適な材料をご提案します。幅広いFormlabsの材料ライブラリから目的に合う材料をご選定ください。

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ワークフローと作業の労力

FDM方式でもSLA方式でも、3Dプリントのワークフロー(作業手順)は、「設計/デザイン」「プリント」「後処理」の3つのステップとなります。

まず、3D CADソフトウェアや3Dスキャナでのスキャンデータからモデルを設計し、3Dプリントに対応するファイル形式(STLまたはOBJ形式)で保存します。3Dプリンタには、造形設定を行い、デジタルモデルをプリント用のレイヤーにスライスするスライサーソフトとも呼ばれる造形準備ソフトウェアが必要です。

数万円という家庭でも購入できるような安価な3Dプリンタでは、このソフトウェアにも差があり、厳密な精度を出すにはユーザー自身が3Dファイルに細かな調整を加え、試行錯誤を繰り返す必要があります。何時間もかけて何度も調整を行い、実際にプリントして検証することを繰り返す必要があります。それでも新たなデザインや材料を試すごとに結果が変わる可能性があり、造形の成功率自体が高いとは言えません。単に造形が失敗するだけではなく、プロジェクトの遅延や現場の後片付けにも時間と労力を割く必要があります。

一方で、Form 3+のような業務用SLA 3Dプリンタやその他の業務用FDMプリンタには独自のソフトウェアと、造形の成功率を最大化するため徹底的にテストされ、各材料の特性に応じてチューニングが施された造形設定が付属しています。

FormlabsのPreFormのように、高度なアルゴリズムを実装したソフトウェアでは、誰でも簡単に高精度で高信頼性のプリントが実現できます。PreFormは液体のレジンが固体化する際の、材料ごとに異なる収縮率もすべてプログラムされており、極高精度のプリントを実現するキーファクターとなっています。PreFormはFormlabs製品ユーザーでなくても無料でダウンロードでき、その操作感をご体感いただけます。

3Dプリントが始まると、ほとんどの3Dプリンタは造形が完了するまで、夜間でも自動で稼働を続けます。Form 3+等の先進的なSLA 3Dプリンタでは、材料を自動的に補充するカートリッジシステムを採用しており、プリント開始後に人の手による作業は不要です。

プリントが完了したら、ワークフローの最後のステップ、後処理に入ります。SLAでのプリント品は、イソプロピルアルコール(IPA)または代替品となる溶剤で洗浄し、表面に付着した未硬化のレジンを除去する必要があります。一般的なワークフローでは、まず造形品をビルドプラットフォームから取り外し、手作業で溶剤を入れた容器に浸け、レジンを洗い流して除去します。

FormlabsのForm Washは、この洗浄作業を自動化する装置です。造形品はビルドプラットフォームごとForm Washに投入でき、洗浄が始まると装置内で溶剤が攪拌され、満遍なく造形品を洗浄します。洗浄作業が完了すると、過度な浸漬による劣化を防ぐため、自動で造形品を溶剤から引き上げてくれます。

洗浄した造形品は自然乾燥させるか、急ぐ場合はドライヤー等で少し距離を取って優しく乾燥させます。乾燥後は、一部の材料を除いて紫外線と熱で二次硬化を行い、カタログ通りの材料特性を引き出します。FormlabsのForm Cureは、この二次硬化も自動化し、いつ誰が作業しても同じ品質で二次硬化が行えるようになっています。

FDM方式ではプリント後に洗浄を行う必要がなく、プリント完了後はクールダウンが終わるとサポート材を切って除去すれば完成です。FDM方式とSLA方式は共に、より複雑な形状を造形するためにサポート材を使用し、その除去が後処理の最後のステップとなっています。

FDM方式のサポート材は、手作業で取り除くか、水溶性のフィラメントで作ったサポート材は、水に溶かして取り除きます。

サポート材が付いたFDMプリント品は、仕上がりの品質を向上するためには更に後処理を行う必要がある。(出典:3D Hubs)

サポート材が付いたFDMプリント品は、仕上がりの品質を向上するためには更に後処理を行う必要がある。(出典:3D Hubs)

一般的なSLAプリント品のサポート材除去には、サポートを切り離し、サポート痕を消すためにサンドがけを行う必要があります。FormlabsのLFS(Low Force Stereolithography)™テクノロジーは、サポート材と造形品の接点を極小化するライトタッチサポートを実現しており、ひと捻りするだけでサポート材が除去でき、表面に残るサポート痕も最小限となります。このライトタッチサポートによって後処理に費やす時間はかなり短縮することが可能となっています。

用途により特定の仕上げや機械加工、下塗り、塗装、アセンブリが必要な場合、FDMとSLAはどちらもそうした加工や表面処理に対応しています。しかしFDMでのプリント品は、SLAほどの表面品質がなく、造形方式に由来する表面の凹凸もあるため、下塗りや塗装の前にさらにサンディングを行う必要があり、機械加工や穴あけを行うにはかなり密度を上げて造形する必要があります。

 

3Dプリントのコストと投資対効果(ROI)

FDM方式のメリットとして最も大きい点は、プリンタ自体の価格が安いことです。エントリーレベルのFDMプリンタは数万円で購入できるため、ホビーユーザーも企業もFDMから3Dプリントを試し、その有用性を確認することができます。何から始めるべきかわからないという人にとって、エントリーレベルのFDM機の安価な導入コストは試験的な導入を十分に正当化する理由になることも多いでしょう。しかし忘れてはいけないのは、これら低価格のFDMプリンタは性能や信頼性も価格相応で、長期的に安定稼働させるにはユーザー側に専門的な知識やノウハウが求められるでしょう。

デスクトップFDMプリンタでも業務用のものは、より使いやすく、プロユース向けに作られており、価格は30万~100万円程度で購入できます。これら業務用のFDMプリンタは、信頼性や造形品質、そして最大造形サイズもより大きく、優れているのが通常です。FDM方式でも業務用のものは機能部品の製作に対応できますが、この価格での購入が可能な予算があれば、より高い精度と幅広い用途、そして高い表面品質が得られるSLA方式も購入できます。

業務用のSLA 3Dプリンタは約45万円程度から購入でき、Formlabsは100万円未満で自動後処理機を含めたデスクトップ3Dプリントのパッケージを購入することも可能で、ベンチトップサイズの大容量工業用タイプでも300万円程度から購入いただけます。

材料に関しても、FDM方式のフィラメントは一般的な汎用材料については他の造形方式の材料に比べて安価です。ABS、PLA、およびそれらのブレンド材などは、一般に1kgあたり1万円程度ですが、工業用途の高機能材料のフィラメントは、1kgあたり2万円を超えることも珍しくありません。押出しノズルを複数実装したFDMプリンタは、複数の材料の使い分けも可能で、代表的な例はサポート材を水溶性のフィラメントで作ってしまうような使い方です。しかし一般に水溶性のフィラメントは高価で、1kgあたり4~5万円を超えるものもある上に、水溶性であるからこそ湿度に敏感で、その保管には湿度管理が必要です。これに対してSLA用のスタンダードレジンとエンジニアリング用レジンのほとんどは、1リットル当たり2万円から4万円程度です。   

コストの最後に加えるべきは、見落とされがちな人件費です。サポート材が要らないシンプルな形状の場合に限れば、FDMには後処理がほぼありません。しかし、サポート材を用いて少し複雑な形状を造形する場合や高品質な仕上げが必要な場合は、手作業による後処理が必要で、時間と労力を割く必要があります。

SLA方式では、洗浄や二次硬化(一部材料は二次硬化は不要)などの後処理が必要ですが、いずれも自動後処理機があれば省人化・省力化が簡単にできるため、工数を抑えることができます。また、Formlabsはライトタッチサポートを採用しているため、サポート材の除去が瞬時に行えるだけでなく、サポート痕を除去するサンディングも最低限で完了でき、短時間で簡単に高品質な仕上がりが得られます。

3d printing cost
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造形のスピード

Draftレジンは、FDM方式の3Dプリンタと比べて5~10倍のスピードでプリントが行える高速造形用SLA材料です。Draftレジンは工業製品の試作に求められる十分な精度も発揮でき、試作から検証、設計調整からの再試作というイテレーションをより高速化し、製品開発のアジャイル化に寄与します。SLAプリンタの最大造形サイズに近い150mm立方程度の造形品であっても200ミクロンの積層ピッチでプリントした場合、FDMでは80~90時間必要でしたが、Draftレジンでは9時間程度でプリントが完了します。これはラピッドプロトタイピングと呼ばれる高速での試作品製作に最適で、イテレーションの高速化だけでなく、次工程への移行もよりスムースで迅速に行え、開発期間を短縮することができます。

FDM vs SLA speed comparison

一般的なお話ではありますが、FDM方式とSLA方式のプリントスピードは同じ積層ピッチでプリントする場合はほぼ同等と言えるでしょう。しかし100ミクロンの積層ピッチでのFDM造形品と、100ミクロンの積層ピッチでのSLA造形品では、造形方式の違い(積層方法の違い)に由来する大きな外観の違いが生まれる点を予め知っておきましょう。FDMで同等の外観を得るには、積層ピッチを更に細かくして2~4倍の造形時間をかけてプリントを行うか、表面処理などの後加工に時間をかける必要があります。

最大造形サイズ

以前からFDMプリンタが多く採用されてきた分野のひとつが、大型品の造形です。その造形方式から、FDMプリンタを大型化することは技術的にそう難しいことではありません。より大きな造形品を3Dプリントで製作するソリューションは多くありますが、その殆どがFDM方式です。

デスクトップサイズなどの小型光造形方式(Formlabsが世界で初めて小型化するまで、旧来の光造形機は工作機械サイズでした)で採用される吊り下げ式SLAは、より小さなスペースでより低コストで使用できますが、下部に設置したレジンタンクに液体レジンを溜めて造形する方式により、材料と最大造形サイズに一定の制限が生じます。また、大型品を正常にプリントするには、強固なサポート構造が必要になってしまい、後処理の利便性を損なってしまいます。

Form 3+とForm 3Lに搭載されたLFS(Low Force Stereolithography)テクノロジーにより、Formlabsはレジンを使用する3Dプリントのアプローチをゼロから再構築し、プリント中の造形品に伝わる不要な応力を劇的に低減させました。可動式のレーザーユニット(LPU)とフレキシブルタンクによって、このLFSテクノロジーはデスクトップ機と同じプリントエンジンを使いながら、体積比で5倍の最大造形サイズを実現しました。

世界で初めて、低コストで導入可能な大型品対応のSLA光造形プリンタとして登場したForm 3Lは、最適化されたプリントパスに沿って同時に動作する2基のスタッガードレーザーユニット(LPU)で、大型品を高速でプリントします。従来のForm 3+の5倍の造形サイズを実現したForm 3Lは、大型品の造形だけでなく多くの小型品を一度にプリントできるという利点も併せ持っており、最大造形サイズが大きくなれば、その活用幅も大きく広がることを体現しています。

Form 3LはForm 3+と比較して5倍の造形サイズを持ちながら、競争力のある価格帯を維持している。

Form 3LはForm 3+と比較して5倍の造形サイズを持ちながら、競争力のある価格帯を維持している。

FDM方式 vs SLA方式:比較表

3Dプリントの各造形方式には、それぞれメリット・デメリットがあり、それによって適した用途や業界も異なります。以下の比較表では、主な特徴と考慮すべき点をまとめていきます。

FDM(熱溶解積層)方式SLA(レーザー光造形)方式
解像度★★☆☆☆★★★★★
造形精度★★★★☆★★★★★
表面品質★★☆☆☆★★★★★
造形の効率★★★★☆★★★★☆
複雑な形状への対応★★★☆☆★★★★☆
使いやすさ★★★★★★★★★★
メリット導入コストが安価
熱可塑性樹脂を使用するため馴染みのある材料が使用できる
極めて高い精度
高強度・高硬度軟質材など材料が幅広い
成形品のような美しい表面
精度の高さと材料の幅広さに由来する活用幅の広さ
デメリット精度の低さ
複雑な形状の造形に限界
高機能材料になると材料費がかなり高額
UV光に反応するため長期間の使用が難しい
適した用途コンセプトモデルやPoCなど初期段階での試作品初期段階から機能検証まであらゆる段階の試作
金型やダイ、生産・組立・試験治具
歯科用途
ジュエリーの試作や鋳造
ヘルスケア、医療用途
造形サイズデスクトップ機にて最大200 x 200 x 300mm程度デスクトップおよびベンチトップ機にて最大300 x 335 x 200mm程度
材料PLAやABSなどの汎用熱可塑性樹脂
特殊材料は高価なものが多い
汎用、工業用(ABSライク、PPライク、高耐熱など)、ロストワックス鋳造用、歯科用、医療用の生体適合性材料など幅広い光硬化性樹脂のレジン
トレーニング造形設定や機器の操作、後処理に少しのトレーニング要
メンテナンスにもトレーニング要
電源を入れるだけですぐにプリント可
造形設定やメンテナンス、機器操作と後処理に若干のトレーニング要
設置場所の要件空調環境での使用またはデスクトップ機には専用の換気設備の設置が理想オフィス環境でも使用可能
後処理は換気の良い場所で実施
アクセサリ水溶性サポートに対応する機種の場合、水溶性サポート除去システム(オプションで自動化)、仕上げツールなど自動洗浄装置(オプションで自動化)、自動二次硬化装置、仕上げ用ツールセットなど

 

FDM方式とSLA方式を併用すると

FDMとSLAの2方式を比較してきましたが、この2方式には似た特徴もありながら相互補完的な特徴があると考えることもできます。この2方式の3Dプリンタは常に競合するというものではなく、多くの企業がFDMとSLAを用途に合わせて並用しています。例えば、低コストでのラピッドプロトタイピングと、より幅広い用途に対応する高品質な機能部品という、両者の利点を生かした使い方ということです。

以下にいくつかの例を挙げましょう。

  • 製品開発では、FDM方式や、Draftレジンを使用したSLA方式が、初期のコンセプトモデルやイテレーションの高速化には理想的です。プロジェクトが進むにつれ、詳細なコンセプトモデルや機能検証用試作を行う必要があり、その場合はSLA方式のより高い品質と多彩な特性を持つ幅広い材料が必要とされる場合があります。
  • FDMとSLAはどちらも、製造業において生産・組立・試験用など様々な治具や工具の製作に採用されています。FDMは大型で単純な形状の部品に適しており、SLAは複雑な形状で高い精度や強度、あるいは耐熱性・耐薬品性が求められる治具や工具、金型に採用されます。
  • 教育分野では、FDMとSLAの両方式を導入することでの素晴らしい事例が多くあります。教育機関の多くがFDM方式を導入していますが、これはコストが安価であることが、少しでも多くのデザインやプリントの実践経験を必要とする学生にとって理想的だからです。SLA方式は、より高い品質と幅広い用途に対応できることから、多くの専門学校、大学、研究機関、歯科やジュエリーの教育機関で好んで使用されています。
シェフィールド大学の先進製造研究センター(AMRC)では、ほとんどの工業・製造用途に12台のSLA 3Dプリンタを活用し、大型部品には5台の産業用FDMプリンタを導入している。

シェフィールド大学の先進製造研究センター(AMRC)では、ほとんどの工業・製造用途に12台のSLA 3Dプリンタを活用し、大型部品には5台の産業用FDMプリンタを導入している。

SLA光造形3Dプリントを詳しく知る

 

レーザー光造形、SLA方式の詳細と実際の3Dプリント作業のワークフローを、こちらのホワイトペーパーをダウンロードいただき是非ご覧ください。

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